2000 年 51 巻 2 号 p. 204-218
本稿はコンピュータネットワーク上のグリーフ・サポート・ネットにおける感情経験の反省的構成の分析をつうじて, 感情規則概念を再検討する. メディア研究は相互作用におけるコミュニケーション技術の介在が感情経験や感情表現の様態を変化させることに注目してきた. ホクシールドの感情規則研究は, 感情経験が相互作用のセッティングに応じた感情規則によって規制されていることを示しており, 感情経験の構成にかかわるコミュニケーション技術の役割を考えるうえで適切な出発点となる. しかし, 他の感情の社会学の論考と同様, ホクシールドの理論は媒介されたコミュニケーションに注意を払わず, 対面的コミュニケーションを相互作用一般の原形として扱っている.したがって, それはコミュニケーション技術の利用の増加が感情経験の構成にもたらす影響を十分に吟味することができない.本稿はホクシールドの理論を補完する社会的境界概念を導入し, 媒介されたコミュニケーションの組織化における技術の役割を同定する.