社会学評論
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「翻案」される政策理念
児童政策をめぐる政治過程の社会学的考察
冨江 直子
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2001 年 52 巻 2 号 p. 250-265

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抄録

本稿は, メゾレベルの意思決定に関与するアクターが, 抽象的な政策理念を具体的な政策へと変換していく過程を明らかにするために, 同じ政策理念を共有しているように見える2つの政策の形成過程を分析する.1つは第二次世界大戦中に戦時厚生事業の一環として打ち出された児童政策, もう1つは戦後改革期に制定された児童福祉法である.本稿は, この2つの政策の関係-戦前・戦後の「児童福祉」の連続・不連続問題-を解明する.メゾレベルの意思決定に関与するアクターは, マクロな社会経済的・政治的要因の影響のもとで, 政策を実現するための政治的エネルギーを動員するために, 政策理念を「翻案」し, 政策の内容を変化させていく.政策理念の「翻案」とは, 同じ言葉で表現される政策理念を異なる文脈のなかで繰り返し用いることによって, 言語的資源としての政策理念を共有しながら異なる内容を持つ複数の政策を作っていくことである.「翻案」というアクターの行為をとらえることで, 政治過程を, そこに関与するアクターの動機に内在的な視点から理解することが可能になる.分析の結果, 2つの「児童福祉」の政策理念は, 社会事業の草創期である大正デモクラシー期に芽生えた児童保護政策の理念が, それぞれの時代背景に適合するように, 異なる状況のなかで, 異なる意思決定機構のもとで, 異なる動機から「翻案」されたものであったという結論を得た.

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