社会学評論
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「死のタブー化」再考
澤井 敦
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2002 年 53 巻 1 号 p. 118-134

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抄録

現代社会は死をタブー視する社会であると度々指摘される.しかしメディアにおいて死が頻繁に話題になるようになり, 死はタブーから解放されたとする見方もなされている.本稿の目的は, 「死のタブーからの解放」とは何を意味しているのか, また, 依然として死がタブー視されているとすれば, それはどのような意味においてなのか, という点を検討し, それを通じて「死のタブー化」の概念の実質を明確にすることにある.
本稿ではまず, P.アリエスやG.ゴーラーによる古典的定式化の再検討, および, 死の「公的な不在, 私的な現存」というテーゼの批判的検討を行い, 死のタブー化という概念の実質的な意味が, 死にゆく者や死別した者との「関係」の忌避という点にあることを明らかにする.そして次に, メディアにおいて流通する, 死をめぐる多様な情報の質的差異について考察し, それらの情報が, ゴーラーのいう「死のポルノグラフィ」としての性質を有すると同時に, 死や死別の受容の仕方を教示する「死のガイドライン」としての性質を有することを確認する.そして最後に, 死のタブーからの解放という見方は, この「死のガイドライン」としての情報がメディアを通じて流通するという現象を指し示すものであるということ, しかしながら, そうした「解放」にもかかわらず, 死を身に帯びた者との関係の忌避という意味での死のタブー化は, 依然として存続していくことを指摘する.

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