社会学評論
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定年後の職業観
定年文化の変容とアクティブ・エイジング
前田 信彦
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2005 年 56 巻 1 号 p. 55-73

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抄録
人口の高齢化の進展は日本の雇用システムにも大きな影響を与えつつある.とりわけ団塊の世代が高齢期に入る今後は, 高齢人口の増大とともに, これまでの職業経験あるいは生活経験を生かした多様なキャリア形成の制度の構築が必要である.そこでは高齢者を単なる「社会的弱者」として捉えるのではなく, 社会を支える「アクティブ・エイジング (active aging) 」の世代と位置づける発想が重要となるであろう.本稿では, 定年を契機とした中年期から高齢期にかけてのライフステージを, 人生後半のキャリアを積極的に形成していく第2のキャリア形成期として位置づけ, 高齢期の多様な生活・職業キャリア形成に関する意識を中心に考察した.その結果, 以下の点が明らかとなった. (1) 1990年代の経済的不況期にかかわらず定年退職には前向きであり, 確実に新たな定年カルチャーを形成している. (2) 定年退職後は同一企業グループで雇用延長や出向を志向する者は全体の23%程度であり, 定年を契機とする職業キャリアの展開はボランティア活動や独立開業志向など多様性を持っている. (3) 雇用継続以外のボランティア活動志向や独立開業志向の者は, 在職中から会社以外との関与を求めている.つまり, 会社人間からの離脱現象が一部の層で確認できる.定年後は雇用労働のみならず, ボランティア活動などを含めた多様なキャリア形成を支援することが社会的にも要請されるであろう.
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