社会学評論
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多文化国家における移民政策のジレンマ
新自由主義・民主主義・多文化主義
関根 政美
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2005 年 56 巻 2 号 p. 329-346

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抄録

現在, 経済グローバリゼーションを促進する「新自由主義経済イデオロギー」が国境の開放・自由化を求めている.他方で, 国民国家政府は, 人の自由な移動を厳しく制限・管理しようとしている.本稿ではこれを「移民 (入国管理) 政策のジレンマ」として考察する.そのためまず, 近代の人口移動のグローバリゼーションの歴史を探り, 次に, 入国管理規制の変遷について概観し, 最後に, 近年先進諸国では新自由主義経済イデオロギーのもとで移民制度の整備と入国管理規制強化が進められ, 管理能力を一段と高めていることを明らかにする.
その影響としてまず第1に, 下積み職種労働者・家族呼寄せ移民の入国が困難になり, 逆説的な結果として, 難民申請者や非合法入国者が増大していることを明らかにする.また第2に, 非合法滞在者・外国人犯罪増加による社会的不安が先進諸国に醸成されるとともに, 戦後の大量移民が先進諸国の多文化社会化を促進した結果生まれた「文化戦争」状況を, 極右政党の台頭を例にみる.最後に, こうした社会・文化変動のなかで「多文化主義」の変容が進み, 新自由主義経済イデオロギーにより合致した移民政策と多文化主義が登場し, 社会的弱者の多い移民・難民は, 一度は人道主義観点から入国を許可され社会に包摂されるが, 結果的には, 社会的に排除・周辺化される傾向にあることを指摘する.

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