抄録
陽電子・電子の束縛状態であるポジトロニウム(Ps)の消滅寿命と1 nm以上のナノ空孔の大きさとの新しい相関式を提案した。真空中においてPsは電子の2倍の質量をもつ古典力学的粒子とみなせるが,1 nm以下のサブナノ空孔に閉じこめられると量子力学的波動性に支配される。そこでナノ空孔内におけるPsが両方の性質を併せ持つことを仮定して,陽電子と電子のスピンが平行なオルト-ポジトロニウム(o-Ps)の消滅寿命モデルを構築し,様々な多孔性物質を用いることにより,その妥当性を明らかにした。さらに,本モデルを空孔導入型低誘電率膜など先端材料のナノ空孔構造分析に応用した。