抄録
放射線による細胞がん化は多段階の独立したDNA突然変異が関係するとするモデルが一般に支持されているが,がん化頻度は突然変異のそれより500〜1000倍高い。筆者等は放射線照射によって細胞中に生じる長寿命ラジカルが照射後のビタミンC添加で抑制されると同時に細胞がん化も抑制されることを見出している。また,放射線誘導がん細胞では染色体が異数化し,大幅な遺伝子発現攪乱が起きていることを見出した。このことは日本人集団の加齢に伴う異数化出現頻度ががん罹患率の年齢依存性とよく一致していることと矛盾しない。従って,染色体異数化が発がんの主たる起源であり,細胞内の酸化度上昇とそれに伴う長寿命ラジカルの発現が染色体異数化を促進させる原因である。