2023 年 40 巻 1 号 p. 85-88
神経筋疾患患者における慢性呼吸不全の治療は、第一選択に非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)があり、マウスピースを使用するmouthpiece ventilation(MPV)は認知度が低い。今回、呼吸困難を機に救急搬送された86歳女性でⅡ型呼吸不全の治療後、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral selerosis:ALS)と診断された。本症例は治療後、自宅への退院を希望していたが、猿手のため、自身でマスク装着は不可能だった。介助者不在時に呼吸困難を生じる懸念に対し、上肢の屈曲は可能であったので、覚醒時は在宅酸素とマウスピース専用モードを搭載した人工呼吸器クリーンエアASTRAL 150(レスメド、オーストラリア)のMPVモードを選択し、家人在宅の夜間はフルフェイスマスク装着によるNPPVを選択した。近年の人工呼吸器は、アラーム制御が可能で、それを使用することで、神経筋疾患における覚醒時のインターフェイスとしてマウスピースが選択しやすくなった。