人工呼吸
Online ISSN : 2436-3103
Print ISSN : 0910-9927
40 巻, 1 号
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原著
  • 衣笠 泰葉, 西野 泰子, Mara Anais Llamas-Covarrubias, 尾崎 勝彦, 藤村 義明, 大橋 壯樹, 福田 貢 ...
    2023 年 40 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化すると人工呼吸や体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)が必要になる。本研究では、まず起源株流行時にICUに入室したCOVID-19患者1,794例の複数時点(計9,072時点)の診療情報をもとに、ICU入院から24時間以内の診療情報から退院時の生死を予測するAI(artificial intelligence)モデル、ならびにICU入院中のある時点から数日後に人工呼吸、ECMOが必要になるほどに悪化、または人工呼吸、ECMOから離脱できるほどに回復することを予測するAIモデルを作成した。次いで、これらのモデルの予測の再現性を変異株(デルタ株など)流行時のデータ(103例、計980時点)で確認した。これらのモデルは、重症化の予防や治療に有用であるとともに、人工呼吸器やECMOの必要台数が予測できるので、重症感染症病床の確保などの重症者向け医療提供体制を整備するうえでも有用な情報の1つとなりうると思われる。

症例報告
  • 吉岡 晃佑, 神山 治郎, 古谷 慎太郎, 鈴木 源, 早川 桂, 田口 茂正, 清田 和也
    2023 年 40 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
    ジャーナル フリー

    症例:42歳の妊婦。妊娠24週で新型コロナウイルスPCR(polymerase chain reaction)検査陽性となり、前医に入院。第19病日に呼吸状態が増悪し、気管挿管および気管切開術が施行された。第20病日に総合周産期母子医療センターの当院に転院搬送。人工呼吸管理では呼吸状態を維持できず、抗凝固薬を使用せずに静脈-静脈体外式膜型人工肺(veno-venous extracorporeal membrane oxygenation:V-V ECMO)を導入した後に、母体救命目的の帝王切開術が施行された。術直後から深鎮静管理、腹臥位療法、メチルプレドニゾロン(methylprednisolone:mPSL)125mg/日の投与が行われた。第21病日から未分画ヘパリンを開始し、第25病日に創部からの出血があり、開創止血術を施行。その後、呼吸状態の改善に伴い、第29病日にECMOを離脱。第35病日に気管切開チューブを抜去し、第45病日に独歩退院となった。

    結語:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、妊婦の症例が増加した。妊婦は重症化のリスクがあり、人工呼吸管理が奏効しない場合はECMO導入が治療の選択肢になり得る。ECMOの導入は出血性合併症などのリスクが伴うが、集学的治療によって救命し得る。

  • 崔 英姫, 齋木 巌, 関根 秀介, 小林 賢礼, 中澤 弘一, 内野 博之
    2023 年 40 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
    ジャーナル フリー

     悪性黒色腫の胸膜・肺転移に対するB-Raf癌原遺伝子セリン/スレオニンキナーゼ(B-Raf proto-oncogene, serine/threonine kinase:BRAF)阻害薬/マイトジェン活性化細胞外シグナル関連キナーゼ(Mitogen-activated extracellular signal-regulated kinase:MEK)阻害薬治療で、腫瘍崩壊に伴う気道閉塞をきたしたが、気道管理を駆使しながら治療を継続し寛解を得た症例を経験した。

     症例は57歳女性。悪性黒色腫の胸膜・肺転移に対してBRAF/MEK阻害薬を開始後、呼吸困難出現し、気管挿管下でICU入室となった。気管吸引ではピンクの泡沫状痰を認めたが、呼吸状態が速やかに安定し、入室翌日に抜管となった。入室3日目にICU退室したが、退室翌日に再び酸素化が低下し、ICU入室となった。気管支鏡で左気管支からは黒色泥状物の混じった漿液性分泌物が認められ、腫瘍崩壊物による気道閉塞をきたしたと考えられた。翌日に経皮的気管切開を施行し、左気管支に気管支ブロッカーを挿入しブロッカーを通じた間欠的吸引を行った。分泌物は徐々に減少し、翌日にはブロッカーは抜去できた。再入室8日目にICU退室となり、退室から2日後に人工呼吸器離脱、15日後に気管切開孔閉鎖し、32日後に自宅退院となった。

  • 青木 志門, 本田 博之, 玉川 大朗, 番場 祐基, 土田 雅史, 晝間 優隆, 松井 亨, 西山 慶
    2023 年 40 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
    ジャーナル フリー

     症例は30歳代男性。身長170cm、体重203kg、体格指数(body mass index:BMI)70.2kg/m2の病的肥満体型であった。新型コロナウイルス(coronavirus disease 2019:COVID-19)肺炎の診断で前医に入院して人工呼吸管理を開始したが、酸素化を維持できないため当院へ転院搬送することになった。感染性と体格を考慮すると陸路搬送を選択せざるを得なかったが、早期接触と搬送支援を目的にドクターヘリで当院救急医を派遣した。当院転院後に、血管撮影と清潔環境でのカットダウンが可能なハイブリッド手術室において心臓血管外科・麻酔科と協力して静脈-静脈体外式膜型人工肺(veno-venous extracorporeal membrane oxygenation:V-V ECMO)を導入した。病的肥満かつCOVID-19という特殊な状況であったが、各部門のマンパワーを考慮した多職種連携によって早期理学療法を含む治療を行い得た。徐々に酸素化は改善し、入院13日目にV-V ECMOを離脱することができた。その後、気管切開と人工呼吸器離脱を経て入院48日目に紹介元へ転院した。

  • 前田 智美, 村中 晋也, 髙田 陸子
    2023 年 40 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
    ジャーナル フリー

     神経筋疾患患者における慢性呼吸不全の治療は、第一選択に非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)があり、マウスピースを使用するmouthpiece ventilation(MPV)は認知度が低い。今回、呼吸困難を機に救急搬送された86歳女性でⅡ型呼吸不全の治療後、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral selerosis:ALS)と診断された。本症例は治療後、自宅への退院を希望していたが、猿手のため、自身でマスク装着は不可能だった。介助者不在時に呼吸困難を生じる懸念に対し、上肢の屈曲は可能であったので、覚醒時は在宅酸素とマウスピース専用モードを搭載した人工呼吸器クリーンエアASTRAL 150(レスメド、オーストラリア)のMPVモードを選択し、家人在宅の夜間はフルフェイスマスク装着によるNPPVを選択した。近年の人工呼吸器は、アラーム制御が可能で、それを使用することで、神経筋疾患における覚醒時のインターフェイスとしてマウスピースが選択しやすくなった。

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