日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
地域療育センターにおける摂食・嚥下外来の実態調査
―初診時の実態―
髙橋 摩理萩原 聡日原 信彦向井 美惠
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 12 巻 3 号 p. 247-252

詳細
抄録

2003年9月から2006年12月までの2年3ヵ月間の地域療育センター新患患児1258名のうち,摂食・嚥下外来を受診した小児72名の実態調査を行った.

初診時年齢は1歳代が26名と最も多く,ついで2歳代が19名と多かった.センター診療各科から摂食・嚥下外来への紹介患児の割合は5.7%であった.リハビリテーション科からの紹介は新患患児の44.9%を占め,リハビリテーション科における摂食機能療法の需要の高さが伺われた.

対象児の原疾患は脳性麻痺など脳原生運動疾患の小児が半数以上を占め,運動障害を伴わない精神発達遅滞は8名であった.粗大運動発達は未定頸が最も多く,摂食・嚥下機能評価結果は嚥下機能獲得不全・捕食機能獲得不全が多かった.

対象児の粗大運動発達と摂食・嚥下機能との関連では,粗大運動発達が未熟な小児は摂食・嚥下機能も未熟であった.このことより,小児の摂食・嚥下機能の向上には全身状態を把握し粗大運動の発達を促すとともに,安定した姿勢で摂食が行えるように椅子や介助法の工夫を行い,指導する必要性が示唆された.

対象児の摂食・嚥下機能と日常摂取している食物形態の関連では,獲得している摂食・嚥下機能では処理困難な食物形態を摂取している小児が多く,保護者に小児の口腔機能を認識してもらい,機能に適した食物形態の指導の必要性が提示された.

今回の結果から,小児の摂食・嚥下機能の発達を促すためには様々なアプローチの必要性が示唆された.地域療育センターは診療だけでなく,訓練,通園療育なども行っている.包括的な摂食機能療法を行うためには,多職種が専門性を生かして連携が可能な地域療育センターの機能が重要と思われる.

著者関連情報
© 2008 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
前の記事
feedback
Top