抄録
COPDをはじめとした慢性呼吸器疾患では,終末期には高度の呼吸困難をきたし,呼吸困難緩和の対策はきわめて重要である.このような呼吸困難に対する対策としては,気管支拡張薬を中心とした薬物療法と酸素療法,呼吸リハビリテーションなどの非薬物療法が実施されているが,これらの介入により十分コントロールされているとはいいがたい.欧米ではCOPDの終末期における呼吸困難に対するオピオイドの有効性のエビデンンスが蓄積され,緩和ケアのガイドラインではその有効性が確立しつつある.しかしながら,わが国においてはその使用に関する検討はなされておらず,また欧米で呼吸困難対策として用いられている塩酸モルヒネ,硫酸モルヒネ徐放剤は癌性疼痛にしか健康保険の適用がないのが実情である.今後はわが国においてもその使用に関する有効性の検証およびコンセンサス作りの必要がある.