抄録
特発性肺線維症(IPF)を中心とした間質性肺炎の終末期医療にかかわる種々のテーマについて取り上げる.IPFは診断からの平均生存期間が3~5年といわれており,予後が不良である.IPF患者において肺活量が予測値の55%を下回った状態となると,健康関連QOLは高度に障害されており,余命は中央値で9ヵ月であった.また,急性の呼吸困難を呈した間質性肺炎患者に対して,終末期ケアとして,オピオイドが用いられることがあるが,これについての有用性や安全性についてはほとんど検証されたことがない.さらに,IPF急性増悪はきわめて予後不良で,挿管・人工呼吸管理には否定的な見解もあるが,近年非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の有用性も報告されている.このように終末期のおのおのの場面における医療介入に関しては十分なエビデンスが見当たらないのが現状である.将来的には,終末期を迎える間質性肺炎患者に対して,より良質な医療が提供できるように新たなエビデンスの構築が望まれる.