日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
Print ISSN : 1881-7319
ISSN-L : 1881-7319
21 巻, 2 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
教育講演Ⅳ
  • ─COPDの呼吸困難─
    藤本 圭作
    原稿種別: 教育講演
    2011 年 21 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    呼吸困難感とは呼吸に伴う不快な感覚の総称であり,心因性をはじめ多くの原因がある.COPDでは,末梢気道病変および気腫病変による気流閉塞,肺過膨張,動的肺過膨張,ガス交換障害,肺循環障害などさまざまな要因によって労作性呼吸困難を呈するが,特にair trappingによる動的肺過膨張は運動耐容能の低下および呼吸困難に密接にかかわる.増悪においても末梢気道炎症の増強に起因する肺過膨張が呼吸困難の増強にかかわる.
シンポジウムⅡ
シンポジウム
  • 蝶名林 直彦, 宮本 顕二
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 21 巻 2 号 p. 90
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
  • ─終末期の定義と医療介入─
    林 章敏
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 21 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    終末期の定義にはさまざまなものがあるが,2008年に日本学術会議の臨床医学委員会終末期医療分科会は進行の速さにより,急性型,亜急性型,慢性型の3つの定義を提唱している.慢性呼吸器疾患は慢性型の終末期となる.「病状が不可逆的かつ進行性で,その時代に可能な最善の治療により病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり,近い将来の死が不可避となった状態」と定義され,予後の予測が困難であるため予後の期間は定義に含まれていない.
    このような状況で行われる医療介入は,医療チームと患者・家族が互いに情報を共有し,それぞれの判断や選好の理由を説明し,互いに合意にいたるプロセスが重要である.そのためには,リビングウィル(living will)の普及と良好なコミュニケーション能力の向上が望まれる.
  • ─NPPVまで?IPPVまで?─
    坪井 知正
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 21 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    終末期の呼吸管理は,(1)薬物療法に加えて長期酸素療法(long-term oxygen therapy, LTOT)や長期非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation, NPPV)が必要となってくる時期(いわゆる終末期),(2)LTOTや長期NPPVを用いても呼吸状態を維持できなくなる時期(最終末期)に分けて考える必要がある.
    長期NPPV症例のいわゆる終末期の呼吸管理には,急性増悪を生じた場合にNPPVまでにするのか挿管人工呼吸に踏み切るのか等の重大な選択肢がある.また,徐々に呼吸不全が進行し最終末期にいたった場合には,NPPVまでにするか気管切開下人工呼吸に踏み切るのかを選択する必要が生じる.最終末期においては患者・家族を中心に最終末期ケア・緩和ケアの内容を選択していく必要がある.その実現のためにも患者・家族と医療者間のコミュニケーションが重要である.今後,日本においても,呼吸管理に関する事前指示(advance directive)が,患者・家族によりなされるような環境をつくっていく必要がある.
  • ─呼吸困難対策としてのオピオイドの使用─
    桂 秀樹
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 21 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    COPDをはじめとした慢性呼吸器疾患では,終末期には高度の呼吸困難をきたし,呼吸困難緩和の対策はきわめて重要である.このような呼吸困難に対する対策としては,気管支拡張薬を中心とした薬物療法と酸素療法,呼吸リハビリテーションなどの非薬物療法が実施されているが,これらの介入により十分コントロールされているとはいいがたい.欧米ではCOPDの終末期における呼吸困難に対するオピオイドの有効性のエビデンンスが蓄積され,緩和ケアのガイドラインではその有効性が確立しつつある.しかしながら,わが国においてはその使用に関する検討はなされておらず,また欧米で呼吸困難対策として用いられている塩酸モルヒネ,硫酸モルヒネ徐放剤は癌性疼痛にしか健康保険の適用がないのが実情である.今後はわが国においてもその使用に関する有効性の検証およびコンセンサス作りの必要がある.
  • ─疾患による対応の違い─間質性肺炎を中心に─
    片岡 健介, 谷口 博之, 近藤 康博, 木村 智樹, 十九浦 宏明, 渡辺 尚宏
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 21 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    特発性肺線維症(IPF)を中心とした間質性肺炎の終末期医療にかかわる種々のテーマについて取り上げる.IPFは診断からの平均生存期間が3~5年といわれており,予後が不良である.IPF患者において肺活量が予測値の55%を下回った状態となると,健康関連QOLは高度に障害されており,余命は中央値で9ヵ月であった.また,急性の呼吸困難を呈した間質性肺炎患者に対して,終末期ケアとして,オピオイドが用いられることがあるが,これについての有用性や安全性についてはほとんど検証されたことがない.さらに,IPF急性増悪はきわめて予後不良で,挿管・人工呼吸管理には否定的な見解もあるが,近年非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の有用性も報告されている.このように終末期のおのおのの場面における医療介入に関しては十分なエビデンスが見当たらないのが現状である.将来的には,終末期を迎える間質性肺炎患者に対して,より良質な医療が提供できるように新たなエビデンスの構築が望まれる.
  • 有田 健一
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 21 巻 2 号 p. 110-117
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    終末期には個別の医療が行われるべきであり,そのためには患者の願いや希望を聴いて,個別の課題を話し合うことが必要となる.生死につながるような人生上の体験や在宅酸素療法の開始のような臨床上の転換期を契機として,医師はその患者の終末期を認識し,自らが主導した終末期に関する対話を始めるべきである.そこでは患者の人生観や価値観を把握する試みを通して事前ケア計画(advance care planning)を策定し,その延長線上で患者の考え方を医療に反映させる手段として事前指示(advance directive)を聴くことになる.こうした試みは終末期における患者や家族のQOLの改善につながるとともに,終末期医療の質の向上を帰結する可能性がある.医療者は正確で十分な情報を患者に与え続けるなかで,事前指示を共有していかに具体化するかを考えなければならない.
イブニングシンポジウム
  • 吉田 直之
    原稿種別: イブニングシンポジウム
    2011 年 21 巻 2 号 p. 118-122
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    複十字病院のある北多摩北部は在宅呼吸ケアに関しての受け皿が不足しているため,慢性呼吸不全患者のケアは,在宅を含め最期まで当院で対応することがほとんどである.当院の訪問看護師が,1999年から2009年までの10年間,114名の慢性呼吸不全患者に対して在宅酸素療法や急性憎悪への対応についての指導を中心とする在宅呼吸ケアを行ったが,訪問看護開始後急性憎悪による入院日数が有意に減少した.地域連携の充実がなかなか進まないわが国の現状を考慮に入れると,現時点では当院で行っている自己完結型の呼吸ケアも高齢の慢性呼吸不全患者に適合した形態と考える.
原著
  • 篠田 千恵, 長澤 千和
    原稿種別: 原著
    2011 年 21 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    われわれはニコチンパッチとバレニクリンの効果と副作用を比較し,各治療薬における禁煙成功の要因について検討した.バレニクリンはニコチンパッチと同等かそれ以上の禁煙達成への効果を示した.副作用が軽微で70%を超える患者が12週の服用を完了しており,高い成功率を示した.しかし治療薬にかかわらず,きちんと継続受診することが禁煙成功の要因と考えられ,禁煙治療を中断しないことが重要と思われた.
  • 辻村 康彦, 平松 哲夫
    原稿種別: 原著
    2011 年 21 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    COPD患者の日常生活時身体活動量(歩数)を,加速度センサー付歩数計を用いて調査した.また,それに影響を与えると考えられる肺機能(%FEV1.0),季節,外出目的の一つである外来呼吸リハビリテーション通院との関係につき検討した.国民健康・栄養調査(厚生労働省)による一般の平均歩数を上回ったのは全患者中27%で,身体活動量の低さが客観データにより明らかとなった.また,活動低下に大きく影響する肺機能との関係は今回認められず,季節や外来通院との関係を認めた.今後COPD 患者の在宅療養において,肺機能や息切れなどの身体因子のみではなく,生活・活動環境などの身体外因子にも積極的に目を向けていく必要があることがあらためて示唆された.
  • 山本 ともみ
    原稿種別: 原著
    2011 年 21 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病(PD)の死因の最多は肺炎で,肺炎の発症には誤嚥物を喀出する咳嗽能力や日常生活動作能力などの低下が関与する.神経筋疾患では,Cough Peak Flow(CPF)には肺活量や口腔内圧が関連し,胸郭の可動性の維持や,低下した呼吸筋力の補助が有効といわれているが,PDでは胸郭ストレッチや呼吸介助法を行ってもCPFが改善しない症例が多い.そこで,PDのCPFに,変換運動障害や動作緩慢の影響があることを明らかにする目的で,CPFとUnified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)や動作速度などとの関係を検討した.
    重回帰分析ではUPDRS,なかでも変換運動が検出され,CPFの大きさでは,PDの重症度や,起き上がり動作と歩行の速度で有意差を示した.
    PDの咳嗽能力の向上には,運動のタイミングと速度に着目したリハビリテーションを検討する必要があると考える.
  • ─frontal assessment batteryを用いて─
    岡島 聡, 東本 有司, 本田 憲胤, 前田 和成, 白石 匡, 山縣 俊之, 東田 有智, 福田 寛二
    原稿種別: 原著
    2011 年 21 巻 2 号 p. 138-141
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】近年,慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者に高次脳機能障害を合併することが報告されている.したがって,COPD患者の日常生活動作指導の効果を上げるためには高次脳機能の評価が必要と考えられる.今回COPD患者の高次脳機能のなかでも前頭葉機能に着目して検討した.【対象と方法】当院で呼吸リハビリテーション実施したCOPD群15名,コントロール群9名を対象とした.前頭葉機能はFrontal Assessment Battery(以下FAB)を用いて検討した.【結果】FAB合計点数はコントロール群と比較して,COPD群で有意に低値であった.また,FAB項目のなかで類似性,語の流暢性,抑制がCOPD群で有意に低値であった.【結語】COPD患者の前頭葉機能は低下しており,特に類似性,語の流暢性,抑制が低下していることが示唆された.
  • 本田 憲胤, 東本 有司, 前田 和成, 岡島 聡, 白石 匡, 杉谷 竜司, 山縣 俊之, 東田 有智, 大城 昌平, 福田 寛二
    原稿種別: 原著
    2011 年 21 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    目的:労作時呼吸困難は,呼吸器疾患患者の活動を制限する主な要因となっている.これまで安静時の呼吸困難と脳活動の関係が報告されているが,労作時呼吸困難と脳活動の関係は検討されていない.そこで,労作時呼吸困難と脳活動の関係を明らかにすることを目的とした.方法:対象は健常ボランティア成人16名.自転車エルゴメータにて最大仕事量の40%定常負荷と2段階(各2分)の呼気抵抗を加え,労作時呼吸困難を誘導した.呼吸困難をボルグスケールで,大脳皮質血流量を近赤外分光法で測定した.酸素化ヘモグロビン(以下;oxy-Hb)濃度の増加を脳賦活とした.結果:運動負荷のみでは,呼吸困難は軽度で脳賦活は認められなかったが,呼気抵抗を負荷することで労作時呼吸困難と前頭前野領域の脳賦活がみられた.しかし,左右感覚運動野領域の脳賦活は認められなかった.労作時呼吸困難は,若年群に比べ高齢群で有意に高値を示した.一方で,呼吸困難ピーク時の前頭前野領域の脳賦活は,高齢群に対して若年群で高値を示した.結論:労作時呼吸困難は,前頭前野領域の脳賦活と関連していた.労作時における前頭前野領域の脳賦活は,高齢群で低下している可能性が示唆された.
  • 安武 友美子, 大室 美穂子, 大池 貴行, 森下 志子, 川俣 幹雄, 河崎 靖範, 槌田 義美, 新堀 俊文
    原稿種別: 原著
    2011 年 21 巻 2 号 p. 148-152
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    誤嚥性肺炎初発患者を対象に,発症にかかわる身体機能面,栄養状態,認知面の要因について後方視的に調査し検討した.その結果,歩行能力やADLが低下している患者,また認知能力の低下がある患者は嚥下能力が低く,誤嚥性肺炎発症のリスクがより高いことが示唆された.背景因子としての年齢,BMI,血清アルブミン値とは有意な相関が認められなかった.また基礎疾患として,脳血管疾患,呼吸器疾患との間で嚥下能力に差異は認められなかった.以上のことより,誤嚥性肺炎の発症リスクを低下させるためには,実用的な歩行獲得やADL向上を図るリハビリテーション,認知症進行の予防が重要であると考えられた.
  • ─Lung Information Needs Questionnaire(LINQ)を用いた実態調査─
    上木 礼子, 長谷川 晴美, 長谷川 智子, 上原 佳子, 佐々木 百恵, 吉田 華奈恵, 良 貴子, 門脇 麻衣子, 上野 栄一, 中村 ...
    原稿種別: 原著
    2011 年 21 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    COPD患者の,療養状況による自己管理情報ニーズの違いを明らかにすることを目的に調査を行った.LINQを用いた情報ニーズ調査の結果,全体に自己管理,栄養,運動に関する情報ニーズが高く,76歳以上の患者は75歳以下に比べ自己管理,栄養,運動に関する情報の必要度が有意に高かった(p<0.05).特に高齢者へは栄養や運動などの生活に即したセルフマネジメントができるための支援が必要である.
総説
  • ─薬剤師の立場から─
    榊原 隆志, 後藤 幸, 田中 理恵, 加藤 聡之
    原稿種別: 総説
    2011 年 21 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    吸入薬は内服薬とは違い,手技によって効果が大きく異なってくるため,適切な吸入ができるようにする吸入指導の重要性は高い.その際,手技のみならず,病態,処方理由,継続の必要性等もしっかり説明することが必要である.また,患者だけではなく,実際に指導を行う医療従事者にもその重要性の理解を広めていく必要があり,われわれは「西三河吸入指導研究会」を開催し,地域全体で吸入指導技術の向上を目指している.
  • 宍戸 克子, 石原 英樹, 板東 千昌, 田村 和世, 宍戸 直彦, 松岡 洋人, 森下 裕
    原稿種別: 総説
    2011 年 21 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2016/07/05
    ジャーナル フリー
    間質性肺炎は予後不良であることが多く,急性増悪という特異な病態があるため,突然終末期に陥る可能性がある.しかし非癌疾患であるため患者側には予後不良の認識は薄い.終末期に無用の混乱をきたさないように病初期から医療者側と患者側が共通の認識をもつことが大切であり,終末期の呼吸管理や鎮静の方針については事前に十分話し合い,共通の認識をもてるようにすることが重要である.
feedback
Top