抄録
筆者は特発性肺線維症(IPF)が慢性呼吸不全を呈する疾患で,徐々に日常生活労作が低下し,呼吸困難感が増悪するといった経過に着目してきた.そして肺機能や病理,画像だけでなく,呼吸困難感,QOL,運動耐容能などの多面的な評価を行ってきた.
IPF患者を対象に,modified MRCを用いて日常の呼吸困難感を評価し予後との関係を調査したところ,modified MRCと6分間歩行試験時の最低SpO2が有意な予後予測因子であることがわかり,modified MRCの有用性とともに日常の呼吸困難感を客観的に評価することの重要性が示された.
また,IPF患者では大腿四頭筋筋力が低下しており,運動耐容能低下の重要な説明因子であること,運動療法を中心とした呼吸リハビリテーションはIPF患者の6分間歩行距離,健康関連QOLを有意に改善することも示した.
今後のIPFにおける新たな治療探索や研究においても,こういった多面的な評価を取り入れ,より適切なアウトカムを選択し評価していくことが重要と考えられる.