抄録
呼吸困難は「呼吸時の不快な感覚」と定義される主観的な症状であり,呼吸不全(低酸素血症で定義される客観的病態)とは必ずしも一致しない.
呼吸不全の原因は,がんに関連したもの,がん治療に関連したもの,がんとは直接関連しないものに分類される.呼吸困難は,ホメオスタシスが破綻したときの危険信号としての役割をもつ.また,過去の経験,精神的要因,社会的・文化的背景などにより修飾されるため,個別性が高く多面的で複雑なものになる.
呼吸困難は,①量(どのくらい息苦しいか),②質(どんな息苦しさか),③生活への影響(日常生活活動にどのような影響や支障があるか)を評価する.本人による評価がゴールドスタンダードではあるが,自己評価が困難な場合は,呼吸パターン・表情などの代理指標を用いて総合的に評価する.
呼吸困難は多面的な症状であるため,多職種による適切な評価とゴール設定が非常に重要である.