抄録
気管支喘息やCOPDの治療の基本である吸入療法は,副作用が少ない効率的な局所療法であるが,正しい吸入手技を習得させ,安定した吸入を継続しアドヒアランスを向上させるためには,医師と薬剤師が連携し指導を行う必要がある.特に高齢者喘息やCOPD患者においては,吸入手技の習得のための指導と,吸入薬の使用状況の把握を反復的に行い,吸入薬の使用に注意を払う必要がある.近年,多様な吸入ディバイスが利用されるようになっており,複数の吸入器を使用しなければならないケースも多く,今後もまた新しい吸入ディバイスが登場する可能性があるなかで,吸入指導の充実のための医薬連携の必要性がより高まるものと予想される.しかしながら,現実には医師も薬剤師も多忙な日常業務のなかで吸入指導に十分な時間が取れず,吸入指導のための医薬連携が図られていないことが多い.
iPadなどのタブレット端末を利用し,動画やソフトウェアを活用することで吸入手技の習得,吸入療法に対する情報提供を行うことは,病院やクリニック,調剤薬局における吸入指導にかかる負担を軽減し,より質の高い吸入指導を患者に提供できる可能性がある.また,情報提供の内容に工夫を加えて行くことで,これまでにない吸入指導の連携を実現できる可能性を秘めている.最近,われわれが取り組んでいるタブレット端末を利用した吸入指導の取り組みについて紹介する.