日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
Print ISSN : 1881-7319
ISSN-L : 1881-7319
24 巻, 1 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
受賞報告
  • ──低強度運動療法と栄養補給療法を中心に──
    高橋 仁美, 菅原 慶勇, 笠井 千景, 清川 憲孝, 渡邊 暢, 佐藤 清佳, 大島 雅宏, 川越 厚良, 齋藤 恵美, 石川 由美子, ...
    原稿種別: 受賞報告
    2014 年24 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    当院では,1998年からチーム医療による包括的呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)を実施してきた.在宅でのプログラムを開発し,継続させることに力を入れ,「座ってできるCOPD体操」を主体とした低強度運動療法や栄養補助食品を用いた栄養療法に関して,これまで多くの臨床研究を行い,その効果について国内外に発信してきている.
    これまでの取り組みで,低強度運動療法を主体とした呼吸リハは,在宅での継続実施に有効であり,呼吸困難,運動耐容能,健康関連QOLにおいて効果が認められ,安定期COPD患者の有用な治療戦略になりうると報告してきた.また,低強度運動療法と栄養補給療法の組み合わせは,全身性炎症を抑制し,運動耐容能,健康関連QOLを改善させる可能性も示唆されることを発表した.
    近年,呼吸リハは市民権が得られてきているが,その普及はまだまだ不十分である.今後もさらに呼吸リハを充実させ,普及させていきたいと考えている.
  • 寺本 信嗣
    原稿種別: 受賞報告
    2014 年24 巻1 号 p. 7-12
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    超高齢社会を迎えた日本では,呼吸器疾患患者の多くが高齢者であり,疾患の治癒と同時にケアの重要性が増している.そのなかで,肺炎は,20年間死亡者が増え続けているが,その多くは誤嚥性肺炎であり,その疾患概念の確立と診断,治療法の開発が必要である.われわれは,誤嚥性肺炎の病因として,夜間睡眠中の微量誤嚥が重要性を示し,その嚥下障害の診断法の一つとして仰臥位で行う,嚥下誘発試験,2段階簡易嚥下誘発試験を開発した.治療として,狭域のペニシリン系抗菌薬の有効性と嚥下反射を改善する薬剤の臨床効果を明らかにした.また,口腔ケア,嚥下リハビリテーションの重要性を示し,呼吸ケアとリハビリテーションの融合が不可欠であることを提唱した.これらは日本呼吸器学会の肺炎診療ガイドラインに反映された.基礎研究としては,レポーター遺伝子の発現による誤嚥と気道内へのウイルス侵入を視覚化する新しい誤嚥性肺炎のモデルマウスを開発した.
  • 佐竹 將宏, 塩谷 隆信, 高橋 仁美, 菅原 慶勇, 笠井 千景, 清川 憲孝, 渡邊 暢, 佐藤 清佳, 川越 厚良
    原稿種別: 受賞報告
    2014 年24 巻1 号 p. 13-19
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    われわれは,安定期COPD患者の6分間歩行試験(6MWT)における呼吸循環反応と呼吸困難について検討した.6MWT中のは,開始後2分まで急増しその後横ばいを示した.の換気効率の変化から,6MWTは乳酸緩衝能の強度で歩行を続けていたことが示唆された.6MWT中はICが有意に減少したことから動的肺過膨張が発生しており,呼吸困難増加の一因であることが示唆された.IRVは2分目で屈曲点を示し吸気量の減少がみられたにもかかわらず呼吸困難は直線的に増加を続けていたことから,呼吸困難の発生メカニズムについて6MWT開始早期は呼吸努力感によるもの,その後は中枢-末梢のミスマッチによるものと考えられた.6MWTの実施前にSABAを吸入することで,歩行距離,最高,ICの増加と呼吸困難の減少が認められ,ICと呼吸困難は,6MWT中も効果が継続していたことが示唆された.これらの研究により,COPD患者の6MWTにおける呼吸循環反応と呼吸困難の特徴の一端を明らかにすることができた.
  • 杉野 亮人
    原稿種別: 受賞報告
    2014 年24 巻1 号 p. 20-25
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Desease: COPD)における日常身体活動性は,死亡の最も高い危険因子であり重要な治療ターゲットである.しかし,現時点では確立した標準評価法が存在しないが,COPDに対する報告が多く信頼性が比較的高いとされているDynaPort Activity Monitor®(DAM)も,機器自体の大きさ,操作の煩雑さ,連続測定時間の短さの問題が存在する.そこで,DAMの問題を克服しているActimarker®に対して臨床応用のための検証を行った.その結果,COPD患者の身体活動性評価法としての再現性が確認され,雨天でない平日3日間のデータを用いることで反復性が確認され,身体活動性測定法の標準化がなされた.この方法により,今後COPD患者の身体活動性の詳細分析や,身体活動性維持・向上のための介入法開発などが可能になると考えられた.
特別講演
  • 永井 厚志
    原稿種別: 特別講演
    2014 年24 巻1 号 p. 26-31
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    本邦では2013年に日本呼吸器学会と日本呼吸ケア・リハビリテーション学会から相次いでCOPD診療のガイドラインが上梓された.COPDの治療・管理にあたっては,多面的な病態像を示すCOPDを捕捉する視点によって提言する診療手順や内容が異なる.国際ガイドラインGOLDは,症状の程度と疾患進展のリスクを指標とし薬剤選択のあり方を示した.一方,スペインのガイドラインではCOPD病型を肺気腫型,慢性気管支炎型,喘息合併型とし,それらの病型を基本にして増悪頻度の多寡で治療方針を示した.また,英国では気管支拡張症に対応するガイドラインのなかでCOPDを取り扱い,カナダでは持続する呼吸困難を軽減する手順書のなかでCOPDを扱っている.一方,わが国のガイドラインは気腫型と非気腫型COPDに病型分類し,治療は呼吸機能や病状を複合的に把握したうえで重症度を決定し,それに応じたステップアップ治療を推奨している.
シンポジウムV
  • 石川 朗, 関 雅文
    原稿種別: シンポジウム
    2014 年24 巻1 号 p. 32
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
  • ──医師の立場から──
    関 雅文
    原稿種別: シンポジウム
    2014 年24 巻1 号 p. 33-36
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    医療・介護関連肺炎(NHCAP)は日本独自の肺炎の概念である.2011年に発刊されたガイドラインでは,耐性菌に配慮しつつも,誤嚥性肺炎を中心とした高齢者肺炎に特に焦点を当て,治療における倫理的配慮も盛り込まれている.高用量ペニシリン系薬を中心とした抗菌薬治療の一方,今後の肺炎診療において,ワクチンに代表される予防や感染制御の考え方が特に重要であり,医師以外のメデイカルスタッフとの連携がポイントとなる.
  • ──看護師の立場から──
    金子 弘美, 山中 悠紀, 大平 峰子, 沖 侑大郎, 石橋 由里子, 石川 朗
    原稿種別: シンポジウム
    2014 年24 巻1 号 p. 37-40
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    医療・介護関連肺炎患者の多くは,在宅介護を受けていたり多様な基礎疾患や合併症を抱えて外来で医療ケアを受けている高齢者であり,その大半に誤嚥性肺炎が疑われる.したがって,その予防や治療では患者の意志や家族の希望,社会的条件などを考慮しながら,摂食・嚥下訓練,口腔ケア,適切な栄養管理や食事指導,リハビリテーションなどを行い患者の体力向上を図るといった包括的な対応が欠かせない.そのなかで診察や治療に関連する業務から患者の療養生活の支援にいたるまで幅広い業務を担いうる看護師にはチーム医療のキーパーソンとして役割が期待される.医者や歯科医師を中心にスタッフ間で連携した対応を行うには,栄養状態や嚥下機能,口腔内環境などの誤嚥性肺炎のリスクを評価し予防や早期発見に努めるだけでなく,スタッフへの助言やスタッフ間連携のための情報共有などに主導的な働きを果たす必要がある.
  • ──理学療法士の立場から──
    三谷 有司, 松村 拓郎, 石川 朗
    原稿種別: シンポジウム
    2014 年24 巻1 号 p. 41-45
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    平成23年度の人口動態統計の死因順位別死亡数において「肺炎」が脳血管疾患を抜き,第3位となった.2011年に日本呼吸器学会より医療・介護関連肺炎(以下,NHCAP)診療ガイドラインが提唱された.しかし,カイドラインの内容では,リハビリテーション(以下,リハ)や呼吸ケアなど肺炎予防や介入に関しては十分ではない.2011年に調査した多施設共同調査では,ステージの進行に伴い肺炎発症率が増加し,「嚥下障害」「日常生活活動」が発症因子として認められた.当然ながらこれらはリハが関与する部分である.ところが,老人保健施設の職員を対象とした呼吸ケア介入の必要性に関する調査では,実際に呼吸ケアを十分に実施できているという回答は10%に満たない結果であった.今後は,NHCAPを発症する因子の検討とリハによる予防的介入方法の確立が必須になると思われる.
  • ──歯科医の立場から──
    若杉 葉子, 戸原 玄, 野原 幹司, 石川 朗
    原稿種別: シンポジウム
    2014 年24 巻1 号 p. 46-50
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    高齢者の肺炎の多くを占めるNHCAPは難治性であり繰り返すことから,治療と併せて予防が重要である.歯科は,入院前や退院後の患者を長期的にフォローできることから,NHCAPの予防に大きく寄与できる医療資源であると考える.嚥下障害患者のなかには,多少誤嚥をしながらも肺炎を発症せずに経過している患者が存在し,そこに感染が生じてはじめて細菌性肺炎にいたる.それゆえ肺炎発症後の患者の診察では,その病態が食物誤嚥や胃食道逆流による化学性肺炎だったのか,細菌性肺炎だったのかを考え,原因に応じた対応をすることが再発予防のために重要と考える.嚥下リハや嚥下機能評価を行うことで,化学性肺炎(細菌性も混在)を予防したり,口腔ケアを行うことで唾液誤嚥による細菌性肺炎のリスク軽減に努める.歯科医として口腔機能や嚥下機能,栄養状態や全身状態の変化を評価しながら高齢者の食を支えることがNHCAPの予防につながると考える.
  • 越久 仁敬
    原稿種別: シンポジウム
    2014 年24 巻1 号 p. 51-55
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    医療・介護関連肺炎(NHCAP)の多くは反復する難治性誤嚥性肺炎であり,NHCAP患者の嚥下機能評価は重要である.嚥下機能スクリーニングテストは坐位で行う意識的な嚥下の能力を調べる検査であり,不顕性誤嚥のリスク評価にはなりえない.嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査は,咽頭残留の有無や誤嚥の検出には非常に有用であるが,定量評価が難しい.簡易二段階嚥下誘発テストは臥位で行う無意識的な嚥下の閾値を調べる検査であり,その異常値と誤嚥性肺炎との関連性が明らかにされている.若年健常者では,呼吸と嚥下の関係は呼息-嚥下-呼息パターンが多いが,高齢者やCOPD患者,パーキンソン病患者では吸息-嚥下,嚥下-吸息パターンの頻度が高くなっており,これらの疾患の増悪因子となっている.今後,不顕性誤嚥や呼吸と嚥下の整合性を検出できる医療検査機器の開発が必要であろう.
ワークショップI
  • 駒瀬 裕子, 権 寧博
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 56
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
  • 川山 智隆, 田尻 守拡, 木下 隆
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 57-61
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    吸入療法は気道に直接薬物を作用させ,少量で最大限に薬効を発揮でき,全身性副作用を抑制できる.気管支喘息(喘息)は吸入ステロイド薬(ICS)による抗炎症療法を行い,コントロール不良例には長時間作用型β2刺激薬(LABA)や抗コリン薬(LAMA)を併用する.一方,慢性閉塞性肺疾患(COPD)はLABAやLAMAによる気管支拡張薬を用い,増悪反復例や重症例にはICSを併用する.喘息とCOPDとのoverlap症候群はICS/LABA/LAMAのトリプル療法を選択することになる.いずれにしても現時点での症状改善のみならず将来リスクの低減を考慮し,それぞれの疾患管理目標を達成するように薬剤を選択する.喘息ではSMART療法や1日1回型のICS/LABA配合薬がアドヒアランス向上に貢献し,COPDではLABAとLAMAの相乗効果に期待がもたれる.
  • 権 寧博, 伊藤 玲子, 古川 典子, 丸岡 秀一郎, 橋本 修
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 62-64
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    気管支喘息やCOPDの治療の基本である吸入療法は,副作用が少ない効率的な局所療法であるが,正しい吸入手技を習得させ,安定した吸入を継続しアドヒアランスを向上させるためには,医師と薬剤師が連携し指導を行う必要がある.特に高齢者喘息やCOPD患者においては,吸入手技の習得のための指導と,吸入薬の使用状況の把握を反復的に行い,吸入薬の使用に注意を払う必要がある.近年,多様な吸入ディバイスが利用されるようになっており,複数の吸入器を使用しなければならないケースも多く,今後もまた新しい吸入ディバイスが登場する可能性があるなかで,吸入指導の充実のための医薬連携の必要性がより高まるものと予想される.しかしながら,現実には医師も薬剤師も多忙な日常業務のなかで吸入指導に十分な時間が取れず,吸入指導のための医薬連携が図られていないことが多い.
    iPadなどのタブレット端末を利用し,動画やソフトウェアを活用することで吸入手技の習得,吸入療法に対する情報提供を行うことは,病院やクリニック,調剤薬局における吸入指導にかかる負担を軽減し,より質の高い吸入指導を患者に提供できる可能性がある.また,情報提供の内容に工夫を加えて行くことで,これまでにない吸入指導の連携を実現できる可能性を秘めている.最近,われわれが取り組んでいるタブレット端末を利用した吸入指導の取り組みについて紹介する.
  • 山口 裕礼
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 65-69
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    吸入指導の問題点とし,薬局で吸入指導を行えていない事実や標準化された方法がなく,どのような指導が効率的であるか検証されていないことである.そのため当院では定期的に薬剤師に吸入指導の講習会を行い,吸入指導用紙を用いて病薬連携を行っている.しかしながら患者に対する吸入指導の方法が口頭指導のみの薬局もあることがわかった.一方,講習会を受けていない薬局でも実技指導はそれなりに行われていた.忙しい薬局での吸入指導は長い時間をかけて吸入器具の扱い方を教える必要はなく,短時間でポイントを指導し繰り返すことによって効率よく行うことが可能である.今回初めてCOPD患者の吸入指導の際に実技指導群と口頭指導群に割り付けた場合の治療効果について後ろ向きに検討したところ,初回指導時と確認時において短時間作用型β2刺激薬吸入後の%一秒量に両群において差は認めなかったが,吸入指導と治療効果の検討においてさまざまな問題点を残した.
  • ──医師の立場から──
    堀江 健夫
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 70-74
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    第5次医療法改正において保険薬局が医療提供施設として位置づけられ,薬物治療が多様化・複雑化するなかでその適正使用を担う薬剤師の活躍が期待されている.
    吸入療法は日々進化し,数多くの製剤が開発されている.その一方で適切な使用方法を身につけることの難しさやアドヒアランスが低いといった問題が指摘されており,医療者による支援の重要性が認識されている.患者が効率良く医療者の支援を受けるためには医師・薬剤師双方が必要な情報をやりとりするためのシステムが必要である.
    当地では医師,薬剤師が群馬吸入療法研究会を立ち上げ,治療効果ならびにQOL向上を目的に吸入指導の標準化・均てん化,そして医薬連携システム構築の2つの目標を掲げ地域活動を続けてきた.
    吸入指導は多職種で実践していくべきもので,医薬連携はそのコアとなる管理技術である.社会の変化に適応しアドヒアランスを高めるためのさらなる全国レベルでの方略が求められる.
ワークショップII
  • 田村 富美子, 桂 秀樹
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 75
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
  • 一和多 俊男
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 76-82
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    3学会合同呼吸療法認定士制度は,日本胸部外科学会・日本呼吸器学会・日本麻酔科学会の3学会により設立され,1996年に第1回認定試験が実施された.本制度が発足して18年経過したが,呼吸療法に関連する医療従事者の育成に果たしてきた功績は非常に大きい.3学会合同呼吸療法認定士の業務は個々の国家資格により規定されているため,呼吸療法チームによる医療が必要であり,強いリーダーシップを発揮して,しっかりとしたマネージメントができる呼吸器専門医師が育成されれば,より有益な医療を患者に提供することが可能である.
  • 田中 孝美, 源川 奈央子, 守田 美奈子
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 83-88
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸器疾患看護認定看護分野は,2010年2月に認可され,2012年7月より個人認定が始められ,資格取得者は2014年1月末現在115名となった.本稿では,慢性呼吸器疾患看護CNの就業および活動状況に関する,郵送法による無記名の自記式質問紙調査の結果から,現場における看護ケアの広がりと質の向上に慢性呼吸器疾患看護認定看護師がどのように貢献しているかを報告し,今後の課題と展望について考察し,呼吸ケアに携わるスタッフ教育をめぐる議論の一助としたいと考えた.質問紙調査の内容は,自身や所属施設の状況,CNとしての活動内容,CN 活動の支援に関する41項目である.調査対象者は日本赤十字看護大学看護実践・教育・研究フロンティアセンター1期生の資格所得者29名であり,調査は資格取得後約1年経過した2013年8月から9月にかけて実施し,回収数19(回収率65.5%)であった.
  • 石崎 武志, 淺川 久美子, 桒原 勇治, 長谷川 智子
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 89-90
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    高齢化社会を迎えて,COPD,気管支喘息,間質性肺炎,睡眠呼吸障害,肺がん,老人性肺炎,慢性呼吸不全が増えている.地域の呼吸器専門医,内科総合医や家庭医の負担も重く,病院当たりの呼吸器専門医数が少ないほど,COPDと気管支喘息の死亡率がともに有意に高いと最近報告されてもいる.今や,看護師,理学療法士,薬剤師,管理栄養士,臨床工学技士,医師等による効率的な呼吸ケアチーム医療の展開をせざるを得ない状況である.チーム医療が有効に働くには,構成メンバーが疾病に関する最新知識を基に,認識を共有する必要がある.チーム医療のファシリテーター役はどの職種であっても良いが,本学会認定の呼吸ケア指導士もまさに最適であろう.本学会会員が多職種で構成されているので会員の卒後教育法として,この呼吸ケア指導士養成に力点をおくことは,本学会の地域・社会貢献とも期待される.
  • 桂 秀樹
    原稿種別: ワークショップ
    2014 年24 巻1 号 p. 91-94
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    呼吸ケアにおいては,多職種によるチーム医療で患者およびその家族をサポートしていくことが重要である.そのためには,呼吸ケアに携わるスタッフの育成,継続した教育が不可欠である.わが国において呼吸ケアに携わるスタッフ教育がどのように実施されているかについて検討するため「呼吸ケアのスタッフ教育に関するアンケート」を実施した.その結果,今後,呼吸ケアにかかわるスタッフ教育を効率良く実施するためには,1)呼吸ケアや資格取得に対するインセンティブの付加,2)教育のできる指導者の育成,3)学会による質の高い教育の場の提供が重要と考えられた.
教育講演I
  • ──人工呼吸患者を中心に──
    吉川 雅則, 木村 弘
    原稿種別: 教育講演
    2014 年24 巻1 号 p. 95-99
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や慢性呼吸器疾患の増悪では,しばしば重症呼吸不全に陥り人工呼吸管理を要する.このような病態においては栄養管理の優劣が予後に重大な影響を及ぼす.最近,急性呼吸不全を呈する重症病態の栄養管理に関するエビデンスが集積されつつある.2009年に成人重症患者の栄養療法ガイドラインが米国集中治療学会と米国静脈経腸栄養学会との共同により作成された.その後,日本呼吸療法医学会から発表された『急性呼吸不全による人工呼吸患者の栄養管理ガイドライン』もこれを踏襲している.これらのガイドラインにおける共通の認識として,発症後24~48時間以内の早期経腸栄養の開始,胃管栄養が困難な場合の小腸栄養の選択,overfeedingに対する警鐘とunderfeedingの推奨,蛋白質の十分な補給,ARDSに対する魚油を含む栄養剤の有用性および高脂質栄養剤や免疫調整栄養剤投与に際する留意事項などが記載されている.
教育講演VII
  • 坪井 知正
    原稿種別: 教育講演
    2014 年24 巻1 号 p. 100-104
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    慢性換気不全では,長期酸素療法下に高CO2血症が進行していく.その機序の一つに生理学的適応ともいえる呼吸中枢の高CO2血症を許容していく過程(chronic permissive hypercapnia)が考えられる.高CO2血症がさらに進行すると,この生理学的適応は破綻し,非侵襲的換気療法(non-invasive positive pressure ventilation: NPPV)等の換気補助が必要となる.生命予後にとって,長期NPPV 導入数ヵ月後のPaCO2が60 mmHg 以下になることと導入後のPaCO2の経年的変化率が抑制されることの重要性が明らかになりつつある.一方,拘束性胸郭疾患では血液ガス以外に換気モードとしてT モードの使用が予後改善に寄与することが示されている.
教育講演X
  • 本間 栄
    原稿種別: 教育講演
    2014 年24 巻1 号 p. 105-111
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    特発性肺線維症は治癒が期待できない慢性進行性疾患であるため,改善にいたらないまでも悪化を阻止することが到達可能な治療目標である.治療を開始すべき正確な時期はいまだ不明であるが,回復不能の線維症へと進展する前の初期段階で治療を開始したほうが治療効果は高いと考えられている.慢性増悪期の経時的予後不良因子として6~12ヵ月間で呼吸困難増悪,肺活量(FVC:10%<),拡散能(%DlCO:15%<)の低下,蜂巣肺の進展などがあげられ,これらの因子が複合的に観察された場合には抗線維化薬としてN-アセチルシステインあるいはピルフエニドンを開始する.IPF の急性増悪は安定期においても,感染などを誘因に生じうるが,発症時にはただちに治療を開始する.ステロイドパルス療法に加え免疫抑制剤,PMX-DHP 療法,好中球エラスターゼ阻害薬,低分子ヘパリン,トロンボモジュリンなどの併用療法が施行される.
原著
  • 駒瀬 裕子, 山口 裕礼, 小野 綾美, 石田 明, 木村 優子, 飛鳥井 洋子, 井守 輝一, 岡田 孝弘, 橋場 友則, 平野 雄介, ...
    原稿種別: 原著
    2014 年24 巻1 号 p. 112-118
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    横浜市西部地域では,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患の治療を専門医,非専門医が協力して行っている.地域連携パスを用い,十分に自己管理を行える患者を,専門医から実地医家(呼吸器標榜医および非標榜医)に依頼した.2010年4月から2012年3月の間に連携パスを用いた患者は,気管支喘息のべ235名,COPDのべ95名で,依頼施設総数は107施設であった.喘息患者の1年再受診率は呼吸器標榜医で1年目69.2%,2年目72.9%,呼吸器非標榜医で1年目51.5%,2年目63.1%であり,COPD患者の再受診率は呼吸器標榜医で1年目92.3%,2年目94.1%,呼吸器非標榜医で1年目47.8%,2年目66.7%と2年目で増加した.呼吸機能を測定した喘息患者137名では,標榜医,非標榜医ともに1年後の%FEV1が有意に改善し,COPD患者58名では標榜医,非標榜医ともに%FEV1の低下はなかった.
  • 山中 悠紀, 石川 朗, 金子 弘美, 鏑木 武, 大平 峰子
    原稿種別: 原著
    2014 年24 巻1 号 p. 119-123
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    2週間の短期入院呼吸リハビリテーションに退院後の訪問看護ステーションを中心とした継続支援を組み合わせた包括的呼吸リハビリテーションプログラムを実施した肺結核後遺症患者18名(年齢75.5±6.9歳,男性8名,女性10名)のプログラム開始後2年間の呼吸機能,運動能力,ADL,健康関連QOLの変化を後方視的に分析した.その結果,プログラム開始時と比較して1年後のADL,健康関連QOL の一部に有意な改善が示され,有意差はないものの運動能力に改善傾向を認めた.また,2年後では呼吸機能の一部に有意な低下を認めたもののADLは有意な改善を示したままであった.そのため,2週間の包括的呼吸リハビリテーションによる重点的な教育や指導と訪問看護ステーションを中心とした在宅でのプログラム継続支援および呼吸ケアの提供が肺結核後遺症患者のADL改善を中心とした効果の長期維持に有用な可能性が示唆されたと考える.
  • 荻野 智之, 玉木 彰, 解良 武士, 金子 教宏, 和田 智弘, 内山 侑紀, 山本 憲康, 福田 能啓, 道免 和久
    原稿種別: 原著
    2014 年24 巻1 号 p. 124-130
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    【目的】健常成人を対象に,体幹前傾角度や上肢支持姿勢の違いが肺気量位,胸腹部呼吸運動,呼吸運動出力に及ぼす影響を調査した.
    【方法】測定肢位は,安静立位,体幹前傾30°位,60°位,各体幹前傾姿勢での上肢支持(on handとon elbow)の7姿勢とした.肺気量位の測定は呼気ガス分析器を用い,胸腹部呼吸運動はRespiratory Inductive Plethysmograph(RIP)を用いて測定した.さらに呼吸運動出力として各姿勢時のairway occlusion pressure 0.1 s after the start of inspiratory flow(P0.1)を測定した.
    【結果】上肢支持位で肺気量位は有意に増加し,胸郭も拡張位となった.しかし,同じ体幹前傾角度での上肢支持による有意な変化や上肢支持姿勢の違いによる有意な変化はみられなかった.P0.1も姿勢による有意な変化はみられなかった.
    【結語】健常成人男性においては,上肢支持位で肺気量位は増加し,胸郭も拡張位となるが,上肢支持と体幹前傾姿勢による加算的効果や交互作用は認められないものと考えられた.
  • 高田 学, 竹内 伸太郎, 石川 悠加
    原稿種別: 原著
    2014 年24 巻1 号 p. 131-136
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    神経筋疾患の非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation; NPPV)の覚醒時インターフェイスとして,マウスピースを活用した.マウスピース使用経験のある17名を対象に,導入と中止など使用状況を調査し,マウスピースの利点と問題点について検討した.導入は,覚醒時NPPVが必要になった時期であった.中止は,疾患進行によってマウスピースを使いこなすための体幹や頸部の運動機能や口唇の力が低下してきた時期で鼻プラグなどに変更した.マウスピースの利点は,視野が広く皮膚への侵襲がなく,自身でマウスピースをくわえたり離したりすることで,NPPVの開始と中断を自由にコントロールできることである.このため,NPPVの合間に飲食や会話がしやすい.しかし,マウスピースを口元から離しているときに低圧アラームを制御する工夫を要する.マウスピースによるNPPVは,適応や導入時期,使用方法により有効活用が可能である.
症例報告
  • 大久保 圭子, 川手 信行, 大島 穣, 氷室 直哉, 富田 由里, 片岡 大輔, 野中 誠, 門倉 光隆
    原稿種別: 症例報告
    2014 年24 巻1 号 p. 137-140
    発行日: 2014/04/30
    公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は30歳代の男性.午前8時に突然の胸痛があり,近医で左自然気胸と診断された.自宅安静にて様子をみていたが同日夕方より左胸部痛が増強し,当院へ救急受診して胸腔ドレナージを施行された.胸部CTでは両側肺尖部にブラを認め,また気漏の改善がなく,発症12日後に胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した.閉創時より筋硬直・頻脈・発熱を認め,悪性高熱症と診断してダントロレンナトリウム投与とクーリングを開始し,抜管せずに鎮静下に集中治療室に帰室となった.第22病日に呼吸器離脱,27病日より呼吸理学療法を開始し,30病日には呼吸状態の改善により一般病棟へ転棟.第42病日に退院となった.積極的な呼吸理学療法の関与によって退院まで順調に回復した.
feedback
Top