日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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25 巻, 1 号
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受賞報告
  • 坪井 知正, 陳 和夫, 富井 啓介, 大井 元晴
    原稿種別: 受賞報告
    2015 年 25 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    マスク等のインターフェイスを用いた非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation: NPPV),持続陽圧(continuos positive airway pressure: CPAP)などの非侵襲的換気療法は,呼吸管理を劇的に変貌させた.●1980年代後半より京都大学胸部疾患研究所を中心に,大井を指導者として,呼吸生理学,特に睡眠呼吸障害や慢性呼吸不全に対する,基礎研究,臨床研究を開始した.「京都大学及び関連病院非侵襲的呼吸管理グループ」は,本療法を本邦で先駆的に取り入れ,呼吸不全患者の呼吸管理に積極的に用い生命予後やQOLに関する臨床成績を実証し,その成果を世界的に発信し続けている.●大井の指導のもと,坪井が主として成人のⅡ型慢性呼吸不全に対するNPPVを,陳が睡眠呼吸障害の基礎・臨床研究や睡眠時無呼吸症候群に対するCPAPおよび小児症例を含む生体肝移植患者の周術期を中心とした様々な急性期NPPVを,富井が主としてICU領域を含む急性期NPPVを担当した.●今後も,NPPVガイドラインの改定等を通じて呼吸管理技術を次世代に継承していきたいと考えている.●
  • ――3軸加速度計による解析と歩数計による介入効果――
    川越 厚良
    原稿種別: 受賞報告
    2015 年 25 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease; COPD)患者における生存率と関連する身体活動量(Physical Activity; PA)は,3軸加速度計により詳細な調査が可能である.本邦で開発されたActivity monitoring and evaluation system(A-MESTM)により,安定期COPD患者のPAを横断的に調査した結果,1日の歩行時間や姿勢変換回数は健常者と比較して有意に減少していた.我々は,低強度運動療法を主体とした在宅中心の呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)によるPAに対する単独効果,さらに歩数計を用いたフィードバックによるアプローチを併用した上乗せ効果を検討した.結果,呼吸リハ単独により歩行時間の増加が確認され,歩数計によるフィードバックを併用することで,歩行時間に更なる増加がみられた.以上より,PAに対する呼吸リハの効果と直接的に改善させる介入方法としての新たな可能性が示唆された.
  • 福家 聡
    原稿種別: 受賞報告
    2015 年 25 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    酸素療法は広く医療現場において行われているが,適切な使用方法やモニタリング方法を理解しておくことが重要である.我々はこれまで酸素吸入における加湿効果の評価,新規酸素吸入デバイスであるHigh FO®ネブライザーやnasal high flowの精度や臨床的意義について報告してきた.また酸素療法におけるモニタリングについては,パルスオキシメーターの使用上の注意点や6分間歩行試験におけるSpO2 の評価方法に関する研究を行った.一方近年臨床現場に普及している経皮的CO2 モニタリング装置については,非侵襲的かつリアルタイムに換気状態を評価することが可能であり呼吸管理に欠かせないデバイスとして注目されている.この装置についても基礎的検討と臨床応用例の集積を行ってきた.
    臨床現場における適切な呼吸管理や酸素療法の参考ために,一連の研究の一部を紹介したい.
ワークショップI
  • 吉川 雅則, 田中 弥生
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 25 巻 1 号 p. 17
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
  • 小賀 徹, 陳 和夫
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 25 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    肥満と閉塞型睡眠時無呼吸 (obstructive sleep apnea: OSA) の関係は,従来肥満からOSAへの一方向と考えられたが,近年は双方向であることが示唆されている.ともに死亡,心血管障害,癌などの予後と関連し,最近は肥満低換気症候群に関する日本の頻度も発表され,注目されている.両者の病態では慢性全身性炎症が重要で,OSAでは気道炎症の存在も指摘される.OSAと肥満は,メタボリックシンドロームと関係し,睡眠時間はその重要な交絡因子である.OSAの主要治療はCPAPであるが,肥満のある場合,減量は,CPAPで乏しい全身性炎症低下効果がみられたり,CPAPとの併用で代謝指標に相加的な効果を認めたり,減量の重要性が示されている.減量には,食事,運動,カウンセリングを中心とした行動療法,薬物療法,外科療法があげられるが,現実には行動療法主体で,今後薬物療法や外科療法の展開が期待される.
  • 浅井 一久, 栩野 吉弘, 鴨井 博, 平田 一人
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 25 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    生物は外界から食物として栄養を摂取し,生体の構築や生命活動のエネルギー源と成している.慢性の呼吸器疾患の代表である慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease; COPD)患者では,閉塞性換気障害やそれに基づく肺過膨張などにより呼吸負荷の増大があり,エネルギー消費が亢進している.他方,COPD患者では,呼吸困難などから食思低下を来たし,エネルギー摂取低下に陥ることがあり,負の栄養バランスを来して,「やせ」を認める事がある.やせはCOPD患者の予後と相関があり,呼吸リハビリテーション,運動療法,および栄養管理が望まれる.
  • 前田 玲, 河島 常裕, 大平 日実子, 谷口 雅之, 菅原 好孝, 松村 拓郎, 石川 朗
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 25 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)における栄養障害は,「エネルギー消費量の増大」「摂取エネルギー量の減少によるエネルギー不足」と,それに伴う筋タンパクの異化亢進であり,体重減少リスクも高いことが特徴である.COPDの栄養状態は呼吸リハビリテーションの効果にも影響を与えることから,管理栄養士は呼吸リハビリテーションスタッフの重要な一員として関連職種と密接な連携をとることが望ましい.しかし,COPD患者の栄養管理は疾患が重症化し栄養障害が進行してから介入が始まることが多いこと,ライフスタイルに合わせた継続的なセルフマネジメントによる栄養管理が必要なことなどの問題がある.より効率的な呼吸リハビリテーションを行うためには,多職種がチームとして連携し,さらに患者自身が栄養療法の必要性を理解し,自己管理能力を高めることが大切であると思われる.
  • ――理学療法士の立場から――
    菅原 慶勇, 山田 公子, 高橋 仁美, 柏倉 剛, 本間 光信, 塩谷 隆信
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 25 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    COPDの有無に関わらず,身体活動量の低度への推移は死亡リスクの増加を招く.COPDの栄養状態は,症状,障害,予後の重要な決定因子である.以上から,COPDの経過中の体重減少を防ぎ,身体活動量を上げることが重要となる.日常的に低強度運動を行っている39例を介入前の%IBWが90%以上群と未満群の2群に分け,介入前の栄養状態が栄養補給の上乗せ効果に及ぼす影響をみたところ,両群とも介入3カ月後に,体重,BMI,エネルギー摂取量が有意に増加し,%IBW90%未満群では,GNRI,脂肪量指数,プレアルブミン,PImax,大腿四頭筋筋力が,%IBW90%以上群では,%IBW,握力,6MWDが有意に増加した.しかし,%IBW90%未満群の栄養補給療法介入後の%IBW,GNRIおよびFFMIの値は,おおよそ積極的な栄養補給の適応範囲に留まっていた.運動療法と栄養補給療法は併用することが重要で,標準体重下での経過中の体重減少に対する予防としての栄養補給療法の介入が検討されなければならないと考える.
教育講演V
  • 茂木 孝
    原稿種別: 教育講演
    2015 年 25 巻 1 号 p. 38-40
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    防災の基本理念に沿えば患者自身が自己管理能力を発揮することが「自助」を高め,診療所・病院・医師会,業者,自治体が連携することが「共助・公助」となる.自己管理能力の向上は患者教育を含む包括的呼吸リハビリによる.酸素が使えない時に,ボンベに切り替える,安静にして口すぼめ呼吸でしのぐなど,全ての患者が知っておくべき対処法を学ぶ機会を増やし,これをアクションプランとして文書化しておくべきである.医療者は普段から各患者の酸素必要性の緊急度を意識しておき,いざという時には酸素投与のトリアージを指示する必要がある.共助・公助の提供においては,酸素が必要な患者の実態,さらに酸素業者の役割について社会的認知が遅れており,これが支援・連携体制にも影響している.我が国の支援体制は様々な課題を抱えており,それは震災前から懸念されていたことでもあった.酸素療法に関わる全医療者・業者・行政が改めて考え直す必要がある.
教育講演III
  • 寺田 二郎
    原稿種別: 教育講演
    2015 年 25 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    肺動脈性肺高血圧症,慢性血栓塞栓性肺高血圧症をはじめとする肺高血圧症(PH)は,肺動脈圧,肺血管抵抗が上昇し,右心不全に至る慢性進行性の難治性疾患である.これまでPH患者に対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は,失神,心不全の増悪,突然死などが危惧され,積極的には推奨されてこなかった.しかし近年になり欧州を中心に本症に対する運動療法の効果が報告されており,肺血管拡張薬による薬物療法の上乗せ効果として運動耐容能,筋力,健康関連QOLの改善などが期待されている.一方,本邦におけるPH患者に対する呼吸リハの報告はほとんどなく,慎重な症例選択,患者教育,医療者間の密な連携など,リスク管理に十分配慮した上での症例蓄積が必要である.PHと運動に焦点を当てて,これまでの海外での報告の概略と当施設での呼吸リハの取り組みを中心に報告する.
教育講演IV
  • 玉置 淳
    原稿種別: 教育講演
    2015 年 25 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    吸入療法では薬剤が局所に高濃度かつ急速に到達するため,経口投与に比較してより高い薬理作用と迅速な効果発現が期待できるのみならず,全身的な副作用が少ないというアドバンテージがある.吸入された粒子の肺への沈着は,粒子径,比重,親水性,荷電などの他,吸入操作や呼吸機能によって規定される.喘息やCOPDの長期管理における吸入療法では,MDI, DPI, SMIなどのデバイスを用いてβ2 刺激薬や吸入ステロイド, 抗コリン薬,それらの配合剤などが投与される.しかし,これら慢性気道疾患のコントロールは必ずしも良好とはいえず,その要因の1つに患者の服薬アドヒアランスが低いことが挙げられる.したがって,疾患コントロールの向上を目的とした対策として,患者教育とならんで,病診連携や病薬連携による丁寧な吸入指導が必須である.
教育講演V
  • 富井 啓介
    原稿種別: 教育講演
    2015 年 25 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    ネーザルハイフロー(NHF)は患者の一回換気量や呼吸数の影響を受けずFiO2をある程度一定に保ちながら,上下気道の死腔に溜まった呼気ガスを鼻腔内への高流量ガスで洗い出し,死腔換気量を減少させることで,呼吸仕事量を減らすことができる.また口を閉じれば気道をある程度陽圧に保つこともできる.さらに加温加湿器と熱線入り回路で37℃相対湿度100%の混合ガスを供給でき,快適性と気道の粘液線毛クリアランスを維持し排痰を促すことができる.
    このような利点から高い陽圧を必要としない酸素投与全般,すなわち高圧PEEPを必要としないⅠ型呼吸不全や積極的な換気補助を必要としない軽症のⅡ型呼吸不全などが適応となる.多くの場合NPPVの前段階もしくは離脱期に使用され,会話,飲食,排痰,リハビリなどが可能で一般病棟でも実施できるが,終末期を除いて改善が得られない時はNPPVのすぐ開始できる環境での実施が望ましい.
教育講演VI-I
  • 小林 千穂
    原稿種別: 教育講演
    2015 年 25 巻 1 号 p. 58-60
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸器疾患看護は,2010年に日本看護協会が定める特定分野として認定され,慢性呼吸器疾患看護認定看護師として全国で活動している.慢性呼吸器疾患患者が在宅での生活を行うためには治療や療養に対するアドヒアランスやセルフマネジメント能力の維持・向上が大切である.慢性呼吸器疾患看護認定看護師はその専門性を発揮し,その人らしい生きていくことを支えなければならない.チーム医療のなかでは慢性呼吸器疾患看護認定看護師はコーディネーターとしての役割を担い,チーム医療の推進に努めている.呼吸ケアにおいては多職種による医療チームでの介入が必要不可欠であり,慢性呼吸器疾患看護認定看護師としてスタッフへのエンパワーメントを行うことは,チーム医療の推進に繋がり,さらには呼吸ケアの広がりと質の向上に寄与すると考える.
教育講演VI-II
教育講演X
  • ――機能的予後の改善を目指して――
    田坂 定智
    原稿種別: 教育講演
    2015 年 25 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    急性呼吸不全の原因疾患は肺炎,肺血栓塞栓症,喘息発作など多様であるが,中でも急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome; ARDS)は重篤で難治性の病態として知られている.ARDSについては,2012年にベルリン定義が提唱され,①急性発症,②胸部画像上の両側性陰影,③左心不全のみで病態を説明できないこと,④低酸素血症の4項目で診断される.また陽圧換気下での低酸素血症の程度により軽症,中等症,重症に分類されるが,この重症度と予後との関連については明らかになっていない.ARDSでは,一回換気量を低く設定し,呼気終末陽圧により肺胞の虚脱・再開放を防ぐ肺保護戦略が提唱されている.また腹臥位換気や軽症例では非侵襲的陽圧換気(NPPV)の有効性が示されている.近年ARDS患者の生命予後が改善するに伴い,機能的予後が問題となっている.ARDSからの回復後も健康関連QOLは低く,運動機能や認知機能の低下もみられるため,理学療法の介入効果などについて検討が必要である.
ランチョンセミナーV
  • 石川 悠加
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2015 年 25 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    機械による咳介助(mechanical insufflation-exsufflation: MI-E)は,咳機能低下に対する唯一の補助として,最近の国内外のガイドラインに推奨される.下気道の痰の移動だけでなく,上気道のクリアランスを維持するクリティカルな手段とされる.
    MI-Eを使用することにより,コントロール群に比べて,抜管後の再挿管率やICU滞在日数を減らす効果がある.また,自然の咳より腹圧を上げずに排痰できるため,腹部術後の肺合併症予防にも使用できる.
    一方,MI-Eの高い陽圧陰圧による声帯や咽頭喉頭の閉鎖も観察されることがわかった.そこで,MI-Eに際して,呼気時に高い流量を得るための至適圧の検討や患者及び医療スタッフの習熟が重要となる.最近,咳の最大流量(cough peak flow=CPF)表示,吸気呼気の高頻度振動,咳トリガ,吸気流量調節ができる新たな機種が市販された.これまでのMI-E機器で効果が不十分であった患者群に対しても,CPFを高める新たな機器条件の検討やチーム医療による工夫を含めた臨床研究が求められる.
ランチョンセミナーVIII
  • 南方 良章
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2015 年 25 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の危険因子は身体活動性であり,管理中の身体活動性低下症例では生存率が有意に低下する.したがって,身体活動性の維持・改善は,COPD管理において極めて重要である.COPD患者に対する身体活動性の標準的測定法は確立していないが,3軸加速度計を用いた評価が奨められる.また,再現性あるデータの抽出には,雨天,休日,平均気温が2.5℃未満あるいは27℃を超す日を除外し,3日間のデータを抽出することが推奨される.健常者に比べCOPD患者では活動時間が有意に短縮し,≥3.0 METsでは健常者の約5割,≥3.5 METsでは約7割も短縮している.気管支拡張薬や呼吸リハビリテーションの身体活動性に対する効果についてはまだ結論が得られていないが,改善を示す報告も多い.身体活動性維持・向上のためには,低強度でも,継続性のある運動療法について検討していくことも重要と思われる.
ランチョンセミナーIX
  • 弦間 昭彦
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2015 年 25 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    肺非小細胞癌においては,分子標的治療研究が進み,多くの薬剤の開発がなされている.その中で,多くの問題点も浮かび上がっている.耐性機序,薬剤の使い分け,併用の在り方,個別化の方策など,枚挙に暇が無い.特に,治癒への治療戦略が視野に入ってきており,癌の多様性に基づく耐性獲得を想定した際,併用療法が一つの候補と言える.また,異なる視点での治療標的の併用が考えられる.間質との関係,免疫修飾,代謝の制御,ゲノム不安定性の制御,幹細胞へのアプローチなどが,現時点で候補となる標的といえる.
原著
  • 三塚 由佳, 高橋 識至, 飯田 聡美, 山崎 敦子, 佐藤 美穂, 安達 哲也
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 1 号 p. 88-94
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    COPD増悪時におけるアクションプランの問題点と,その対策として実施した電話指導の効果を検討した.電話指導は増悪時アクションプラン開始時から増悪の軽快が確認されるまで連続して実施した.アクションプラン実施の際に認められた最も多い不適切な対応は「対応の遅れ」であった.電話指導を併用できたアクションプランは,できなかった場合より有意に適切に実施され,行動も速やかであった.不適切な行動であっても電話で直接指導できた症例は,次の増悪時には全例適切な行動となっていた.電話指導群に適切な行動をとっている例が多いこと,電話指導で適切な行動がとれるようになった症例を認めたことより,アクションプランに電話指導を取り入れることの有用性が示された.
  • 田中 貴子, 神津 玲, 北川 知佳, 朝井 政治, 千住 秀明
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    施術者のための呼吸介助習熟度評価表を作成し,評定者間の一致度及び一回換気量の増加に影響する要素を検討した.理学・作業療法士53名を対象に,呼吸介助の指導に従事している理学療法士3名が評価表を用い,手技の習熟度を判定し,同時に一回換気量を測定した.結果,ほとんどの項目においてかなりの一致度を示し,用手接触部位,方向性,タイミングの項目ではκ係数が0.81以上と高い一致度であった.加えて,一回換気量の増加量と用手接触部位,タイミングの項目に関係があり,総合点数と相関を認めた.以上より,本評価表は手技を指導する際の他覚的な習熟度評価表として用いることが可能であり,用手接触部位とタイミングの項目が重要な要素であることが示唆された.また,手掌全面接触,圧迫の強さ,痛み・不快感,次回も行って欲しいかの項目については,手技を受ける者に直接尋ねながら施行する必要性がある.
  • ――図を視覚的に提示する介入の有用性――
    松嶋 真哉, 武市 梨絵, 横山 仁志, 渡邉 陽介, 堅田 紘頌, 星野 姿子
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    体位呼吸療法は,酸素化の低下した患者に対する重要な治療介入である.我々は,人工呼吸器装着患者に不慣れな病棟の看護ケアに体位呼吸療法を定着させることを目的に,病棟スタッフへ体位呼吸療法の図を提示し推奨する方略を行い,その有用性を検討した.対象は酸素化障害を呈する人工呼吸器装着患者7例を介入群とし,体位呼吸療法の実施状況を調査した.その結果,体位呼吸療法の平均実施時間は258.8±162.6分/日と一定時間の体位呼吸療法が定着した.また,通常の体位管理を実施していた13例を対照群とし,有害事象の有無,酸素化の変化,呼吸器離脱時期について比較検討を行った.その結果,有害事象の有無は2群間に関連を認めず,対照群と比較し介入群では酸素化の改善が大きく,自発呼吸トライアルまでの期間が短縮した.以上より,体位呼吸療法の図を視覚的に提示し推奨する方略は,簡便かつ効果的に体位呼吸療法を定着させる方法であることが示された.
症例報告
  • 大和田 広樹, 長谷川 侑香, 平 芳, 岡野 昌彦, 家永 浩樹, 菅野 康二
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 1 号 p. 105-107
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    2型呼吸不全患者に対する夜間の非侵襲的陽圧換気(Non-invasive Positive Pressure Ventilation; NPPV)と訪問リハビリテーションが有効であった症例を経験した.本症例は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)の急性増悪による入院治療時に,NPPVを用いて呼吸管理を行った.退院後もNPPVは夜間のみ継続していたが,訪問リハビリテーションが早期から関わったこともあり,日常生活動作(activities of daily living; ADL)はベッド臥床状態から歩行による屋内生活の自立へと改善した.また,PaCO2の上昇も改善したことから,NPPVを離脱することが可能となった.在宅での夜間NPPVと呼吸リハビリテーションの併用による介入は,急性増悪を防ぎ,ADLの向上に有効であると考えられた.
  • 岩﨑 円, 鵜澤 吉宏, 金子 教宏
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 25 巻 1 号 p. 108-110
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    高齢化社会では高齢慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者が多く,遠方から通院する場合には通院手段や家族の援助などの問題があり,従来報告されている週2回の通院リハビリテーションが困難な症例がいるのが現状である.今回,遠方のため週2回の通院理学療法が困難であった高齢COPD患者に対して入院中に非監視型運動を指導し,退院後は月1回の医師外来受診後に理学療法評価指導を行った.非監視型運動の内容は上肢の筋力練習,全身運動として20分の歩行練習とした.退院後12ヶ月再入院せず,退院月よりも12ヶ月後の1日平均歩数・平均身体活動指数・6分間歩行距離・大腿四頭筋筋力・握力が向上した.通院手段などの制限により週2回の通院が困難なCOPD患者においても,非監視型運動療法の継続と定期的な評価指導が身体機能の向上に有用である可能性が示唆された.
  • 原田 さをり, 原田 典子, 古谷 正登, 大池 貴行
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 25 巻 1 号 p. 111-113
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    高頻度胸壁振動による排痰補助装置であるスマートベストの導入により,主として家族が必要に応じて定期的に排痰を行うことができるようになった.導入期は,膿性痰が減るなど痰の性状に良好な変化がみられ,CRPは6.6±5.6mg/dlから0.3±0.1mg/dlへ低下した.また訪問看護の回数・日数が減少し,入院回数は0回となった.その結果,医療費2,178,230円(29.8%)の減額に繋がった.
    スマートベスト導入は,気管切開下人工呼吸換気(TPPV)施行中の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者における,適切かつ定期的な排痰を可能にした.スマートベストは呼吸器感染症の予防や全身状態管理に効果的な排痰補助装置である可能性が示唆された.
研究報告
  • 末久 弘, 中田 英二, 杉原 進介, 岩田 織江, 崎田 秀範, 冨永 律子, 重見 篤史, 河本 宏昭, 上野 剛, 澤田 茂樹, 山下 ...
    原稿種別: 研究報告
    2015 年 25 巻 1 号 p. 114-117
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    当院では2012年7月から,理学療法士による呼吸器外科手術症例に対する呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を術前後に行っている.肺炎や無気肺の術後呼吸器合併症が軽減できたかどうかを検討した.2010年9月~2011年6月の介入なし群と2012年7月~2013年4月の介入あり群を比較した.2011年7月~2012年6月の術後のみ介入の時期は除いた.介入なし群202例,介入あり群205例.男女比,年齢,喫煙歴や呼吸器疾患に偏りはなかった.原疾患や術式も偏りはなかった.術後合併症は,介入なし群29例(14.4%),介入あり群31例(15.1%)でほぼ同等であった.そのうち肺炎や無気肺は介入なし群7例,介入あり群6例で両群に有意な差は認められなかった.開胸術症例に絞って検討すると,肺炎・無気肺患者の割合は増加していたが,両群間に有意差は認めなかった.理学療法士による呼吸リハの介入では,肺炎や無気肺の術後呼吸器合併症は軽減できていなかった.今後,開胸術等のハイリスク患者に対してより積極的な介入を導入する方針である.
  • 星 孝
    原稿種別: 研究報告
    2015 年 25 巻 1 号 p. 118-124
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,PT・OT・ST養成校の吸引行為の卒前教育の実態を明らかにし,吸引に関する卒前教育の「必要な教育」について検討することである.調査は国内477校に対しアンケート調査を実施し,217校から回答を得た.結果より,吸引教育を導入していない養成校が少なからず存在しており,全ての養成校における吸引教育の導入について検討する必要性が示唆された.卒前吸引教育の標準的な指向性については,“基礎的知識の獲得と学内における吸引実技実習の経験レベル”と考えられた.吸引教育の基礎項目と到達レベルは,吸引を実施する際のアセスメントに対応した基礎知識,呼吸状態の観察と吸引に伴う合併症や感染予防の知識,および緊急時の対処法を基礎項目と考え,それらの項目について“理解する”レベルまでを到達することが望ましいと考えられた.
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