抄録
呼吸器領域の患者教育は,包括的呼吸リハビリテーション内のコンポーネントとして位置づけられており,他の運動療法,栄養指導などと共に提供されるが,本稿では呼吸器に留まらず医療一般に必要な患者教育総論として概説する.近年の患者教育は,患者自身の自己管理をいかに向上させるかという点に重点が置かれている.その目標にあるのは患者の自己管理による適切な行動選択と実行である.そして患者の望ましい行動変容を教育・支援するのがわれわれ医療者の役割である.そのためには,単なる知識の伝達ではなく,患者の元々の健康に関する素養(ヘルス・リテラシーなど)とアドヒアランスにも考慮した教育・支援が必要となる.医療者自身が正確な情報を保持し,患者のニーズに合わせて適切に提供してこそ意味がある.患者の認知・教育状態を把握しながら,疾患や社会の将来までを見通した医療情報を提供するよう心がける必要がある.