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――患者による複数機器試用評価――
遠藤 玄, 入部 正継, 田窪 敏夫, 家村 侑, 池田 遼太, 大西 幸平, 前田 直人, 齋藤 勇真, 福島E.文彦 , 鏑木 武, 小 ...
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
367-371
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
在宅酸素療法患者の外出を支援するため,電動モータを用いて酸素機器を運搬するロボットの試作を行った.患者とロボットがどのような位置関係で,どのような入力装置であれば操作性が高く,患者に好まれるのかを調査した.患者が5種類(6台)の試作機を用い,酸素ボンベを搬送しつつ一定経路を移動した後,聞き取りによるアンケート調査を行った.参加者18名の内,試作機毎の延べ22の有効回答を得た結果,使用したいタイプは,患者の後方に位置し,紐の長さと向きで操作するタイプのニーズが高かった.
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長谷川 聡, 大島 洋平, 玉木 彰, 佐藤 晋, 陳 豊史, 青山 晃博, 佐藤 雅昭, 山田 徹, 伊達 洋至
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
372-377
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
本邦における肺移植手術後の肺・身体機能の回復過程に関する報告は少なく,リハビリテーション(RH)の進め方に関するclinical standardも存在しない.本研究では,術後1年までの回復過程を分析することにより,RHの介入方法を検討することを目的とした.肺移植術後1年以上が経過した52例を対象とし,術前,術後3ヶ月・6ケ月・1年における肺機能,BMI,下肢筋力,下肢筋厚,6分間歩行距離(6MWD),ADL,QOLの経過を分析した.1秒量は術後早期に改善するが,肺活量の回復は遷延した.下肢筋力は術後3ヶ月以降に増大し,1年後には術前,術後3ヶ月と比較して有意に増大した.6MWDやADLは術後早期に改善するが,QOLの回復は遷延した.本研究の結果から,術後早期における呼吸筋トレーニングや胸郭へのアプローチの必要性が,さらにBMIや下肢筋厚の経過から,栄養,筋肥大に対するアプローチの必要性が示唆された.
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有薗 信一, 平澤 純, 長谷川隆一 , 小川 智也, 渡邉 文子, 古川 拓朗, 田平 一行
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
378-383
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
挿管人工呼吸患者の離床に関する安全性が確立していないため,挿管人工呼吸患者の離床が呼吸循環動態に与える影響について検討した.対象は当院のリスクマネージメント基準に沿って離床を実施した挿管人工呼吸管理患者37例.離床開始前,実施中,終了時に,血圧と心拍数,不整脈の有無,呼吸不全の悪化などを評価し,離床による呼吸循環動態への影響を評価した.離床は立位までが21例,端坐位までが16例であった.人工呼吸患者の収縮期血圧は開始前平均 116.4 mmHg,実施中は 119.8 mmHg,終了時は 119.0 mmHgと有意な変化を認めなかった.心拍数も開始前 92.5 bpm,実施中 95.7 bpm,終了時 94.1 bpmと変化を認めなかった.最低SpO
2は96.6%で90%未満になる患者はいなかった.実施後に血圧が不安定となり強心薬を増量した患者や呼吸状態が悪化した患者はいなかった.
リスクマネージメント基準に基づいて開始した挿管人工呼吸患者に対する端坐位と立位までの離床は,呼吸循環動態を悪化させずに実施することができた.
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白石 匡, 東本 有司, 本田 憲胤, 前田 和成, 岡島 聡, 杉谷 竜司, 西山 理, 山縣 俊之, 寺田 勝彦, 東田 有智, 福田 ...
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
384-388
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
背景:慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の特徴として,労作時の呼吸困難のために日常生活が制限され,身体非活動性となりやすい.うつ・不安症状はCOPD患者に高頻度にみられ,身体活動量との関係が報告されている.本研究の目的は,COPD患者における,身体活動量とうつ・不安との関連について検討することである.対象と方法:COPD患者17名(男性15名/女性2名)を対象として,呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)介入前後に諸指標の評価をした.身体活動量の評価は3軸加速度計を用いて計測し,うつ・不安の評価にはThe Hospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS)を用いた.運動耐容能の評価は6分間歩行距離(6-min walk distance: 以下 6 MWD)を,健康関連QOLの評価にはSt. Georges Respiratory Questionnaire (以下SGRQ)を用いた.結果:呼吸リハによる身体活動量変化は,呼吸リハ前のHADS(うつスコア)と正の相関がみられた.結論:うつ傾向のある人ほど,呼吸リハにより身体活動量は改善しており,積極的に呼吸リハを導入すべきことが示唆された.
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立川 良, 室 繁郎, 谷澤 公伸, 小賀 徹, 三嶋 理晃, 陳 和夫, 非侵襲的換気療法研究会
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
389-394
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
海外では高い吸気圧を用いた長期NPPV(非侵襲的陽圧換気)療法が重症COPD患者の予後を改善することが示されたが,本邦COPD患者の病態は,欧米とは異なると推定されるため,本邦独自のエビデンスが必要である.われわれは,本邦の安定期COPDに対する長期NPPV療法の実態把握のためアンケート調査を行い,全国の30施設から回答を得た.97%の施設が現在の長期NPPV導入基準を妥当と回答し,PaCO
2が 55-60 mmHgで導入を考慮し,PaCO
2の10%程度の低下あるいは絶対値で55 mmHg前後を目指す施設が多かった.各施設のIPAPの標準的設定の中央値は 12 cmH
2O,EPAPは 5 cmH
2Oであり,バックアップ呼吸回数は夜間の自発呼吸回数と同等以上が大半であった.本邦においては比較的低い吸気圧で,目標とするPaCO
2の低下が達成できている可能性があるが,その設定の基準や妥当性については今後の検討が必要である.
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佐藤 善信, 中島 光裕, 星井 輝之, 布原 史翔, 桑田 麻衣子, 今泉 正樹, 福田 清貴, 岩﨑 洋一
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
395-400
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
神経筋疾患患者に対する呼吸ケアの一つとして,通常の救急蘇生バックを用いたlung volume recruitment(LVR)があるが,air stackingが困難な患者では効果的に実施できない場合がある.われわれは,患者をair stacking可能群と不可能群に分け,2種類の救急蘇生バックを用いて吸気量と咳のピークフロー(CPF)値を測定し,効率的なLVRを実施するために,どちらの救急蘇生バックを選択すべきかを検討した.その結果,air stacking可能群では通常の救急蘇生バック,air stacking不可能群ではPEEP弁付き救急蘇生バックが有用であると考えられた.また,MIC>1,170 mlとなるように肺吸気量を維持することは,救急蘇生バックを用いた吸気介助と,呼気時胸部介助を併用した咳嗽介助を実施するにあたり,重要であることが示唆された.
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平澤 純, 有薗 信一, 小川 智也, 渡邉 文子, 古川 拓朗, 三嶋 卓也, 長谷川隆一
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
401-404
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
【目的】心臓血管手術後患者において,背臥位から端座位・立位へのモビライゼーションにより,気管挿管・人工呼吸からの離脱(抜管)直後の咳嗽力が改善するという仮説を検証する.
【対象と方法】心臓血管手術後に,集中治療室で12時間以上の挿管・人工呼吸を施行された患者を前向きに調査した.咳嗽力の指標には,咳嗽時最大呼気流速(peak cough flow: PCF)および咳嗽時呼気量(cough expiratory volume: CEV)を用いた.PCFとCEVは抜管後3時間以内に測定した.測定肢位は,背臥位,45度受動坐位,端坐位直後,離床後端坐位の4つとした.
【結果】症例数33例.PCFは背臥位134.9 L/分,45度受動坐位162.7 L/分,端座位187.7 L/分の順に有意に増加し,離床後端坐位が206.2 L/分と4肢位の中で最も高値を示した.CEVも同様に背臥位,45度受動坐位,端坐位と有意に増加し,離床後端坐位が最も高値を示した.
【結論】心臓血管手術後患者では,抜管直後の咳嗽力はモビライゼーションを進めるにつれ改善する.
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永井 徹, 斎藤トシ子 , 澤田 周矢, 齋藤 泰晴
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
405-409
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
安定期慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者の栄養治療に役立つ情報を得るため,COPD患者と健常者の口腔内乾燥症状,味覚感度を横断的に検討した.口腔内乾燥症状の比較では,「食物が飲み込みにくい」(p<0.001),「口の中がネバネバする,話しにくい」(P=0.016)の2項目において,COPD患者と健常者の間に有意差が認められた.COPD患者では味覚感度が鈍化している傾向がみられ,高度の味覚感度低下のある患者が20%にみられた.COPD患者の中には,口腔内乾燥と高度な味覚異常のみられる者が存在する可能性があり,これは正常な食事摂取を困難にし,栄養障害を惹起すると推測される.COPD患者に対する栄養治療では,薬剤を確認するとともに,口腔内乾燥及び味覚感度を評価する必要性が示唆された.
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矢口 成美, 伊橋 光二
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
410-414
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
目的:体幹屈伸運動の有無が呼吸機能測定に与える影響,および体幹可動域,胸郭拡張差と呼吸機能の関係を明らかにすることである.方法:健常成人20名を対象に,体幹直立位で固定した方法(固定位測定),体幹直立位から体幹の屈伸運動を許可した方法(可動許可測定)の2つの方法にて,肺活量(VC),努力性肺活量(FVC),最大吸気筋力(PImax),最大呼気筋力(PEmax)を測定し各方法間での比較を行った.さらに胸郭拡張差,体幹可動域も測定した.結果:%FVC,%PEmaxは可動許可測定の方が有意に大きかったが,%VC,%PImaxは各方法間に有意差がなかった.考察と結論:呼吸機能測定は体幹の屈伸運動を許可した方法(可動許可測定)で行うことで,より最大の機能を発揮できることが示唆された.臨床での呼吸機能測定においては,可動許可測定を前提とすることが望ましいと考えられた.
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石川りみ子 , 荒木美名子 , 宮城 裕子, 本村 悠子, 宮国 弘子, 砂川 礼子, 前川 一美, 島尻 郁子, 盛島 幸子, 玉城久美子 ...
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
415-422
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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離島に居住し在宅酸素療法(以下HOTとする)を受けている患者が,自己管理能力を高めて,療養を円滑にするための支援モデルを構築することを目的とした.M島の基幹病院に看護職等からなるHOT患者在宅療養支援検討会を立ち上げ,内科外来にHOT患者への療養支援体制を策定した.一方,HOT患者サロンおよびHOT患者への研修会等を実施した.また,支援ボランティア組織づくりの検討を行った.支援検討会での活動の結果,外来では,HOT患者への関心が高まり,【外来に携わる看護職の変化】がみられ,【HOT患者を取り巻く多職種協働の変化】をもたらし,多職種を巻き込んだ支援体制に繋がった.HOT患者サロンは,研修会,季節行事,患者交流によって,知識の増加や療養生活への変化,意欲の向上に繋がり,療養支援に有用であることが示された.島嶼の特徴から,福祉職との連携による支援体制の可能性が示唆され,島嶼における支援体制モデルが示された.
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後藤 葉子, 佐藤 義文, 川邊 利子, 柏木知以子 , 上月 正博
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
423-428
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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【背景・目的】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者は,労作時の息切れにより日常生活活動(以下ADL)が制限される.呼吸器疾患患者の息切れは特定の動作姿勢や動作速度により生じることが多く,一般的ADL尺度では息切れによるADL障害を捉え難いため,呼吸器疾患特異的なADL尺度が必要となる.
【対象・方法】在宅COPD患者29名に対し,ADL尺度「Pulmonary ADL(Ver. 2)」(以下P-ADL(Ver. 2))を用いてADL評価を行い,他因子との関連性および一般的なADL尺度であるfunctional independence measure(FIM)との優位性を検討した.
【結果】P-ADL(Ver. 2)は妥当性・信頼性が高く,肺機能,6分間歩行距離(以下6MWD)等の他因子との間に強い相関関係を認めた.また,FIMとの間にも強い相関を認めたが,FIMでは6MWDにおいて天井効果を示した.
【結論】P-ADL(Ver. 2)は,呼吸器疾患特有のADL障害を評価しうる指標であることが示唆された.P-ADL(Ver. 2)を用いてADL障害の原因を分析することにより,患者に対してより具体的なADL指導が可能になると考える.
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山﨑 岳志, 萩尾 敦史, 井上 実緒, 伊左治良太 , 中西 陽祐, 南 卓馬, 坂口 才, 土谷美知子 , 長坂 行雄
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
429-434
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
われわれは,COPDにおける6分間歩行試験(6MWT)中の脈拍数に及ぼす心負荷の影響を検討した.心負荷の判定は,非侵襲的検査である胸部X線,胸部CT,心電図,心エコーを総合的に判定して,潜在的に右心あるいは左心の異常を認めたものとした.顕在性の心不全症状を認めた例は除外した.対象はCOPD患者87例で,完歩群69例と,非完歩群18例であり,右心負荷群・左心負荷群・両心負荷群・心負荷なし群の4群に分類した.6MWT中のSpO
2,脈拍数,修正Borg Scaleを用いた呼吸困難と下肢疲労感の変化を,完歩群と非完歩群の2群間及び各心負荷群の4群間で比較した.脈拍数は,両心負荷群では左心負荷群と比較して4分後から6分後まで有意に高値を示し,右心負荷群は左心負荷群より,開始時から6分後まで有意に高値であった.完歩群の70%,非完歩群の94%で何らかの右心負荷を認めた.顕在性心不全のないCOPD症例の中で,右心負荷を示す例では,6MWT中の脈拍数が高値であり,一回心拍出量が制限されている可能性が示唆された.
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高橋 宏子, 藤本 圭作
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
435-440
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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厚生労働科学研究「災害時及び災害に備えた慢性閉塞性肺疾患等の生活習慣病患者の災害脆弱性に関する研究」班は,主として在宅酸素療法を実施している慢性呼吸器疾患を有する患者における,緊急時・災害時の問題点を解明することを目的として調査研究を進めてきた.本研究は,自治体の対策が進められている松本市における調査から,現状と課題について検討した.199名(回答率44.9%)の分析では,酸素が急に使えなくなり困った経験が13%,緊急時の対応に関する説明は酸素業者から受けたが最も多く(51.3%),担当する医療者から説明を受けたは約2割に過ぎなかった.酸素の効果を実感している患者群では,酸素が急に使用不能となった場合に体調がすぐに悪化することを懸念する傾向が見られた.以上より,患者の置かれた環境,患者自身の緊急時・災害時に対する意識等を把握した上で,災害時や停電時の対応を繰り返し説明したり,シミュレーションを体験させるなど自助能力を高める患者教育が必要であることが示唆された.
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岩井 宏冶, 小熊 哲也, 林 秀樹
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
441-445
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
左室駆出分画(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF)は左室拡張障害を有することが多いが,臨床的安定期COPD患者において左室拡張障害を呈する患者群の臨床的特徴は必ずしも明らかでない.本研究ではCOPDにおいて左室拡張障害に関連する臨床的因子を検討することを目的とした.対象は男性COPD患者50例とし,心臓超音波検査のE/E’の値にて,拡張障害なし群(E/E’<15),拡張障害あり群(E/E’>15)の2群に分割した.その他心機能や呼吸機能,血液検査,画像所見,運動耐容能を評価し,2群間で比較検討を行った.その結果,拡張障害あり群はなし群に比較し,有意に脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP)が高値であり,左房径(LAD),心胸郭比(CTR)も有意差を認めた.また相関分析においても,これらの要因はE/E’と有意な関連を認めた.COPD患者における左室拡張障害は運動耐容能との直接の関係は否定的であるが,潜在的に心拡大/心負荷を呈していることが示され,HFpEF発症の危険因子になりうるため,慎重な経過観察が必要と考えられた.
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田中 弥生, 本川 佳子, 中澤 優, 田中 友規, 横山 典子, 渡部 厚一, 宮川 哲夫, 久野 譜也
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
446-452
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
【背景】在宅酸素療養患者において,タブレット端末を用いたセルフマネジメントの有用性に関しては未だ明らかではない.
【目的・方法】本研究では在宅酸素療養を行っている69人の慢性呼吸器疾患患者を対象とし,タブレット端末を用いたHOT遠隔支援システムのセルフマネジメントの有用性について,90日間の入力記録を用いて,その使用実態の検証を行った.
【結果】1日1回入力した人数の推移は1週目69人から13週目で31人と減少した.90日間の入力日数の分布は1~15日間入力した対象患者は27人,85日間以上実施したものは16人であった.使用患者の90日間の導入前後の変化は,歩行数は増加傾向が認められた.90日後のアンケート調査では,タブレット端末の利便性の満足度は25人中21人が満足していた.
【結論】タブレット端末の利便性に満足はしているものの,タブレット端末の入力を継続した患者は45%に減少し,医療従事者が介入しないセルフマネジメントを継続することは難しい可能性が示唆された.
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河辺千鶴子 , 角野 直, 城石 涼太, 小柳 春美, 山下はるか , 北川 知佳, 出川 聡, 力富 直人
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
453-456
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
COPD患者では栄養障害を伴っていることが多く,入院中または在宅において早期からの長期的栄養管理が重要である.しかし実際の臨床現場では,継続的栄養管理は困難であることが多い.今回,当院入院中に呼吸リハビリテーションと栄養管理を行ったCOPD患者に対して,退院後在宅での呼吸リハビリテーションと共に継続的栄養管理が可能であった群(継続群)とそれらが継続できなかった群(非継続群)の食事摂取状況を調査し,入院中の食事摂取量と比較した.両群とも入院中よりも食事摂取量は有意に減少していたが,継続群では非継続群よりエネルギーと各栄養素の摂取量が有意に多かった.食事摂取量が減少していた患者は,1人暮らしまたは家族からの支援が受けられないことも大きな要因となっていた.今後の課題として,個々の患者に対しエネルギー量を考慮した食事を提供し,在宅患者の栄養管理を充実させるような栄養指導,他職種や患者家族と連携を強めた包括的な呼吸リハビリテーションが必要と考えられた.
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杉谷 竜司, 大城 昌平, 東本 有司, 前田 和成, 白石 匡, 岡島 聡, 山縣 俊之, 寺田 勝彦, 東田 有智, 福田 寛二
原稿種別: 原著
2015 年 25 巻 3 号 p.
457-461
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
【目的】COPD患者における低酸素血症が,高次脳機能と脳血流反応に及ぼす影響を検討した.
【方法】COPD患者10名を対象とした.日常生活での低酸素血症の指標は,連続パルスオキシメトリによる24時間のSpO
290%未満低下時間(以下T90),高次脳機能はN-Back Task(以下NBT)の正答率で評価した.近赤外線分光法にてNBT時における脳皮質の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)変化量を測定した.Oxy-Hbの増加を脳の賦活とした.
【結果】NBTの正答率は安静時PaO
2と有意な相関がみられなかったが,T90と負の相関を認めた(r=-0.74,p<0.05).T90とOxy-Hb変化量には正の相関を認めた(r=0.63,p<0.05).
【結語】COPD患者では,日常生活の中で低酸素状態に晒される時間が長い程,NBTで評価した高次脳機能が低く,NBT実施中の脳賦活量が大きい.
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木村 泰, 高橋 勇貴, 新井 康弘, 橋元 崇, 小坂鎮太郎 , 杉崎陽一郎
原稿種別: 症例報告
2015 年 25 巻 3 号 p.
462-465
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
先天的な高度脊柱側弯症と胸郭変形による拘束性換気障害を基礎病態とする57歳の女性が,急性呼吸促迫症候群にて入院,長期人工呼吸管理を施行した.初回の退院時には,酸素投与および補助換気療法は導入しなかった.しかし在宅復帰後,呼吸器疾患に伴う肺高血圧症,右心不全を発症し再入院となり,人工呼吸管理となった.2回目の退院時には,在宅酸素療法および人工呼吸療法に加え,週2回,3か月間の外来リハビリテーションを導入した.労作時呼吸困難が軽減し,身体活動量も増加した.呼吸機能,筋力および6分間歩行距離が改善し,肺高血圧症および右心不全の増悪がなく,長期の在宅管理に成功した1例を経験した.
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岡村 正嗣, 藤田 康孝, 志水 泰夫, 内田 真樹, 高宮 充孝, 中村 陵子, 松永 晋作, 岡田 隆
原稿種別: 症例報告
2015 年 25 巻 3 号 p.
466-468
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
抗不整脈薬のアミオダロンによる薬剤性肺障害を呈した症例に対して,前傾側臥位等のポジショニングを中心とした呼吸理学療法を実施した.症例は急性心筋梗塞の診断で入院し,心室頻拍に対してアミオダロンの投与が開始された.第20病日,胸部CT所見上,両側背側肺野を中心とした浸潤影・スリガラス影を認めた.アミオダロンを被疑薬とした薬剤性肺障害と診断し,本剤の投与を中止してステロイド治療を開始した.理学療法では酸素化の改善を目的に前傾側臥位等のポジショニングを実施した.ポジショニング実施前後でSpO
2・聴診所見・呼吸困難の程度に改善を認めた.前傾側臥位等のポジショニングを継続して実施し,徐々に酸素化は改善した.ADLは自立し,自宅退院に至った.両側背側肺野を中心とした薬剤性肺障害を呈した本症例では,前傾側臥位等のポジショニングを中心とした呼吸理学療法が酸素化の改善に効果的であった.
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森田三佳子 , 岡本こずえ , 伊藤 郁乃, 設楽久美子 , 塚本 陽子, 安藤 亮子, 池田 梓, 佐藤 広之, 新藤 直子, 松井 弘稔
原稿種別: 症例報告
2015 年 25 巻 3 号 p.
469-473
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
フリー
Nasal high flow(NHF)は,非侵襲的に鼻腔から高流量の酸素投与が可能であり,急性呼吸不全の管理においてその有効性が報告されている.また,会話,飲食,排痰などが可能で,リハビリを進めやすい可能性が期待されているが,NHF使用下でのリハビリの報告はほとんどみられない.今回われわれはNHF使用下で理学療法と作業療法を併用施行し,早期離床を試みた重症肺炎・急性呼吸窮迫症候群(ARDS: acute respiratory distress syndrome)の1症例を経験した.本症例では,日常生活動作訓練に加えて,酸素吸入下での家事動作や趣味活動の訓練も行い,退院後のQOL(Quality of life)向上を目標に支援をした.NHF使用中でも,早期の理学療法・作業療法介入が有用な症例もあることが示唆された.
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木村 陽香, 高橋 祐介, 小林 千穂, 瀬崎 学, 椿 淳裕, 小川 智
原稿種別: 症例報告
2015 年 25 巻 3 号 p.
474-477
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
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気腫合併肺線維症(CPFE)の特徴として,運動誘発性低酸素血症(EIH)を呈することが挙げられ,どの程度の身体活動が許容されるかには注意が必要となる.今回EIHを有したCPFE患者に対し,身体活動量計を使用し在宅での身体活動量(PA)を測定した.その結果からPAの強さおよびパターンを把握することができ,患者へEIHを生じさせないPAについて助言することができた.CPFE患者へ適切な運動指導を行うために,PAの測定とそれに基づく指導は,在宅での安全な活動量維持に効果的であると考えられた.
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多田 実加, 渡邉 陽介, 横山 仁志
原稿種別: 症例報告
2015 年 25 巻 3 号 p.
478-481
発行日: 2015/12/31
公開日: 2016/01/26
ジャーナル
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長期人工呼吸器管理とステロイドの大量投与により,下肢近位筋優位の著しい筋力低下およびADLの制限をきたしたステロイドミオパチーの1症例について,下肢筋力と歩行能力の回復過程を報告する.症例は難治性気管支喘息の20歳代前半の女性で,第21病日に抜管し離床,上下肢筋力トレーニング,ADLトレーニングを開始した.この時,膝伸展筋力と脚伸展筋力の体重比はそれぞれ 0.05 kgf/kg,0.16 kg/kgであり,重度の低下を認めた.また,立位保持が全介助で歩行不可能であり,Barthel Indexは35点であった.(PSL 60 mg/日).理学療法開始後3週目に歩行器歩行が可能となり(Barthel Index 60点),8週目には膝伸展筋力は 0.12 kgf/kgと著しい低下が残存したものの,脚伸展筋力は 0.91 kg/kgと明らかな改善を認め,9週目に自立歩行を獲得し自宅退院となった(Barthel Index 95点,PSL 4 mg/日).重度の筋力低下を呈したステロイドミオパチー症例の脚伸展筋力は膝伸展筋力に比べ歩行能力と強く関連し,下肢支持力の回復を反映する可能性が示唆された.
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