抄録
本邦における肺移植手術後の肺・身体機能の回復過程に関する報告は少なく,リハビリテーション(RH)の進め方に関するclinical standardも存在しない.本研究では,術後1年までの回復過程を分析することにより,RHの介入方法を検討することを目的とした.肺移植術後1年以上が経過した52例を対象とし,術前,術後3ヶ月・6ケ月・1年における肺機能,BMI,下肢筋力,下肢筋厚,6分間歩行距離(6MWD),ADL,QOLの経過を分析した.1秒量は術後早期に改善するが,肺活量の回復は遷延した.下肢筋力は術後3ヶ月以降に増大し,1年後には術前,術後3ヶ月と比較して有意に増大した.6MWDやADLは術後早期に改善するが,QOLの回復は遷延した.本研究の結果から,術後早期における呼吸筋トレーニングや胸郭へのアプローチの必要性が,さらにBMIや下肢筋厚の経過から,栄養,筋肥大に対するアプローチの必要性が示唆された.