抄録
肺癌に対する異なる術式(胸腔鏡下手術と開胸手術)におけるインセンティブスパイロメトリーを含む呼吸リハビリテーションの効果を,術後呼吸機能回復率を指標に検討した.入院診療録より患者背景・手術記録を調査し,呼吸機能評価として1秒量・肺活量を測定した.胸腔鏡下手術11名,開胸手術13名の患者を対象とした.平均年齢は胸腔鏡下手術群70.6歳,開胸手術群64.4歳と差があり,呼吸機能・手術関係要因などにも差を認めたことから,両群の単純比較はできなかった.術前呼吸機能実測値から切除部位損失率を引いたものを予測値(100%)とし,実測値/予測値を術後呼吸機能回復率とした.回復率は,両群ともに術後予測呼吸機能回復率の80%前後であり,先行研究と比較して,インセンティブスパイロメトリーを含む周術期理学療法が呼吸機能の回復を早めた可能性が考えられた.