抄録
【背景】全国と同様に,長野県でも,在宅気管切開下人工呼吸(以下TPPV)に加え,1998年から非侵襲的陽圧人工呼吸(以下NPPV)が普及したが,これら在宅人工呼吸療法(以下HMV)の実態は明らかにされていない.そこで,2015年度にHMVの実態調査を実施し,療養改善に繋がる課題を探索した.
【方法】県内HMVプロバイダーに,患者数・地域調査を,医療機関・訪問看護ステーション・介護施設にアンケート郵送法による調査を行った.
【結果】2015年2月の長野県内HMV数は,NPPVが310例,TPPVは151例であった.NPPVの対象疾患としては心不全が増加傾向であり,TPPVの対象疾患としては神経筋疾患,脳症を多く認めた.訪問看護ステーションでは,NPPVの対象疾患として,COPD,心不全,肺結核後遺症を多く認めた.患者・家族支援ネットワーク形成の進行は認めたが,HMV可能と回答が得られた介護施設は,43施設中3施設のみで,不可と回答した施設の理由として,「安全対策・電源対策への不安」が半数を占めていた.病院・訪問看護ステーションでは,「病診連携・医看連携・患者共有」不足が大きな問題であった.
【考察】介護・看護上の課題は多く,支援に結びつく登録・ケアシステムを検討し,HMVケアを十分に受けられる環境を整備する必要がある.