日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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26 巻, 1 号
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特別セミナー
  • 照沼 則子
    原稿種別: 特別セミナー
    2016 年 26 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    私たちが遭遇する倫理的問題は,①患者(生活者),②医療者との関係,③自分自身の実践での事柄,④所属設置主体や施設・設備,⑤臨床研究など,5つの領域に分類される.臨床においては,「患者」の問題が重要であり,患者の倫理的問題を考えるツールを用いて学習し,ツールを基に観察することからはじめる必要がある.倫理的感受性を高める方法としては,患者の考え方・言葉・態度から,患者への関心を持つきっかけを捉え,受け止め,疑問を持つことにより培われる.一方,2014年度の厚生労働省の基本方針として,「地域包括ケアシステム構築」が挙げられている.チーム医療では,地域でのすまい方を含めた多職種協働が求められている.その際「多職種の信念対立をなくし,患者の望む最良の方策を各専門家の視点で知恵を出しあい検討すること」が,チーム医療を円滑に運用するための心得である.
教育講演Ⅰ
  • 長谷川 隆一
    原稿種別: 教育講演
    2016 年 26 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    呼吸管理において安全を高めるには,質の高い診療を提供することであるが,そのためには「臨床指標」によるアウトカム評価を継続的に行うことが重要である.例えば人工呼吸器関連肺炎(VAP)の対策として『VAPバンドル』がどれくらい遵守されているか,VAPの発症率をサーベイランスで評価しているか,などが臨床指標の一つといえる.一方呼吸管理に対して医療スタッフが抱いている漠然とした不安を払拭し,積極的に呼吸管理に関わるような行動変容を誘導する方法としては『教育』が必須であり,そのためのシステムを構築する必要がある.多職種によって形成されるRSTをはじめとした医療チームが中心となって介入することで,密度の高い効果的な教育手法を提供することができるだろう.
ワークショップⅣ
  • ―理学療法士の立場から―
    山下 康次
    原稿種別: ワークショップ
    2016 年 26 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    従来,集中治療室における人工呼吸器管理は,鎮痛・鎮静に主眼が置かれていたが,近年,早期離床を行う環境へと変化しつつある.早期離床は,鎮静期間の短縮・人工呼吸器離脱期間の延長・ICU在室および在院日数の短縮・退院時身体機能の向上に寄与する,と報告1)されている.一方で,人工呼吸器装着が遷延する場合,その管理は一般病棟で管理することが少なくなく,呼吸サポートチーム(Respiratory Support Team: RST)が重要な役割を果たすことが求められている.RSTの役割は,対象患者の病棟ラウンド,機器の保守・点検,マニュアル作成・勉強会の企画や開催など,多岐に亘っている.しかし,理学療法士の役割はこれにとどまらず,入院中の患者に対する時間縦断的な関わりが必要であり,さらにRSTや主治医・病棟看護師・患者に関わるリハ専門職との横断的な関わりが必要なのではないのだろうか.本稿では,急性期呼吸リハビリテーションの質の向上とRSTの役割について,理学療法士の立場から述べる.
ワークショップⅤ
  • 葛西 隆敏
    原稿種別: ワークショップ
    2016 年 26 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing: SDB)の問題点のひとつとして,心不全の発症や悪化に関連することが知られている.心不全のSDBは,(1)上気道閉塞に起因する閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea: OSA)と,(2)心不全そのものが原因で呼吸調節システムが不安定となり生じる中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea: CSA)に大別される.心不全においてはSDBが予後悪化因子であり,SDBの治療によって心機能が改善することなどから,心不全自体の治療となる可能性があり注目されている.心不全でもOSAへはCPAPが検討され,CSAへはadaptive servo-ventilation(ASV)などが検討される.このように心不全におけるSDBの治療は多彩であり,SDBに対するCPAPおよびASV療法を述べるにあたっては,心不全のSDBの治療を述べるのが最も理解しやすいと考えられるため,それに関する現状と今後に関して述べる.
  • 富井 啓介
    原稿種別: ワークショップ
    2016 年 26 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    高流量鼻カニュラ(HFNC)は,さまざまな生理学的利点を備えた新たな非侵襲的呼吸管理法である.NPPVはマスク装着に伴う不快や拒否を伴いやすいが,HFNCは圧や換気量を測定できないものの,インターフェイス不快や患者拒否はきわめて少ない.したがって,非侵襲的呼吸管理としてより確実で高い効果を期待する場合はNPPV,軽症例や症状緩和を優先する場合はHFNCが適応と考えられる.しかし最近,心臓血管外科術後や市中肺炎などの1型呼吸不全において,挿管回避,死亡率などにおいて,HFNCがNPPVと同等もしくは優れるとするランダム化比較試験の報告も見られ,HFNCがどこまでNPPVに代わり得るのか更なる検討が待たれる.2型呼吸不全についても,HFNCは呼吸仕事量減少,死腔換気量減少による肺胞換気量増加が期待できるが,直接的な換気補助はできないので,急性期には不向きであるが,軽症慢性2型呼吸不全患者には有用かもしれない.
コーヒーブレイクセミナーⅤ
  • 塩谷 隆信, 佐竹 將宏, 上村 佐知子, 岩倉 正浩, 大倉 和貴, 川越 厚良, 菅原 慶勇, 高橋 仁美
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2016 年 26 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    呼吸筋トレーニング(IMT)は,呼吸リハビリテーションの運動療法において,基盤的な種目の一つである.従来,運動療法に関するIMTのメタアナリシスでは,IMTの併用効果についてある程度評価しているものの,運動耐容能の改善についてはポジティブな評価ではなかった.2011年,Gosselinkらは,2000-2009年に発表された32論文を解析した結果から,COPDにおけるIMTに関する新しいエビデンスを発表した.この報告によれば,IMTにより,最大吸気圧,呼吸筋耐久力,漸増負荷圧,運動耐容能,ボルグスケール,呼吸困難(TDI),健康関連QOL(CRQ)の全ての項目で有意な改善が得られている.
    従来のIMT機器は,内部のスプリングの長さを変えることにより抵抗を調節するthreshold型であった.最近,バルブ弁口面積をテーパリング方式により変化させるtapered型が開発され,臨床応用が始まっている.近年,IMTでは,持続時間よりも実施回数に重点をおいた方法が考案され,1回の実施を30回とする方式で最大吸気圧の増加が報告されている.今後,IMTに関しては,COPD以外の呼吸器疾患における有用性に関して,多施設多数例における臨床研究が待たれる.
コーヒーブレイクセミナーⅦ
  • 南方 良章
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2016 年 26 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(COPD)における身体活動性低下は,死亡の最大の危険因子であり,身体活動性の維持・向上は,疾患管理上極めて重要である.身体活動性の評価には再現性の確保が重要で,3軸加速度計を用い,天候,休日,季節の影響を考慮し,3日以上の測定が最も精度が高い.COPD患者では,あらゆる強度で身体活動性は低下しており,強度が中等度(3.0 METs)以上の活動時間では,健常者に比べ50%低下している.身体活動性改善に対する気管支拡張薬や呼吸リハビリテーション単独介入の有効性の結論は得られていないが,両者の併用が有効であるとの報告もなされている.また,活動のモチベーション向上による行動変容誘導の有効性の報告もなされている.現状では,COPDの身体活動性維持・向上には,まず再現性のある評価をおこない,薬剤,呼吸リハビリテーション,モチベーション向上などを併用した介入が重要と考えられる.
ランチョンセミナーⅩ
  • 門脇 徹
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2016 年 26 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    VAPS(Volume Assured Pressure Support)モードは従圧式と従量式の特長を活かしたhybridモードであり,現在NPPV専用機で4つのVAPSモードが使用可能である.S/Tモードなどの固定圧モードで治療効果が上がらない場合や,不快感が強い場合にその効果を発揮する.それにはターゲットとする1回換気量の定め方が極めて重要となる.また,ラージリークやライズタイム設定により本来の機能通りに作動しない可能性もある点について理解する必要がある.まだ明らかにされていない点が多いが,機能的に期待値の高いモードであり,これまでの固定圧モードに加えて使いこなしていきたいモードである.
原著
  • 栗本 俊明, 宇佐美 郁治, 大塚 義紀, 岸本 卓巳, 徳山 猛, 福家 聡, 宮本 顯二
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    日常臨床において,携帯型パルスオキシメータで6分間歩行試験(6-minute walk test; 6MWT)中の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定し,歩行中の低酸素血症を評価するようになったが,パルスオキシメータは体動の影響で「誤表示」する場合がある.そこで本研究では,高齢健常者19名と呼吸器疾患患者23名を対象にして,歩行中の体動がSpO2測定に及ぼす影響を検討した.6MWTは通常通り両上肢を振って歩く場合と,パルスオキシメータをつけた上肢を三角帯で動かさないように歩く場合の2通りで行い,歩行中のSpO2と脈拍数を連続測定した.解析は各歩行間の測定値差を歩行開始から1秒毎に求め,6分間の平均値を被験者毎に算出した.平均SpO2の差が±2%,平均脈拍数の差が±5 bpmを超えた場合を「誤表示」と判定した.SpO2値と脈拍数の「誤表示」は,それぞれ高齢健常者の21%と42%,呼吸器疾患患者の17%と57%に認めた.以上より,通常通り6MWTを行うと体動の影響でSpO2値が「誤表示」する場合があり,歩行中の値の解釈には注意が必要と考えられた.
  • 田中 孝美, 源川 奈央子, 守田 美奈子, 長谷川 智子, 淺川 久美子
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    【目的】慢性呼吸器疾患看護認定看護師の活動の現状,職務満足度,支援状況の関連を明らかにすること.
    【研究方法】2014年8月に日本看護協会HPで氏名公表していた慢性呼吸器疾患看護認定看護師152名に,2014年8月~9月,郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.
    【結果】回収率84.2%.専任が3.1%と少なく,活動時間が勤務時間の10%未満の者は約4割で,時間確保に苦慮していた.所属施設内および地域社会の活動状況への満足度は低く,満足群,非満足群で有意差が認められたのは[認定看護師としての活動時間][施設内ラウンド実施][薬剤師との連携][学会発表]の4項目であった.
  • ―多施設共同前向き研究―
    菅原 慶勇, 高橋 仁美, 笠井 千景, 柏倉 剛, 大山 久仁子, 山田 公子, 佐藤 綾己, 本間 光信, 津田 徹, 武田 博明, 河 ...
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    【目的】抗炎症作用を示すホエイペプチド配合流動食摂取の有用性を,低強度運動を行っている安定期COPD患者で検証した.
    【対象】2011年~2013年に,霧ヶ丘つだ病院,済生会山形済生病院,公立浜坂病院,市立秋田総合病院で,本試験の同意を得た36例を対象とした.
    【方法】医療機関毎に,封筒法による単純無作為化で,ホエイペプチド配合流動食を摂取する群と,一般組成流動食を摂取する群の2群に割付け,12週間摂取した後で,試験介入前後に施行した諸評価の変化率を比較検討した.
    【結果】両群間の変化率に有意差は認められず,栄養補給の介入効果を示すにとどまった.体重の変化率とhsCRPの変化率には有意な負の相関関係を認めた.
    【考察】食事指導のみでは,摂取エネルギー量を増やすことが難しい,低強度の運動が日常可能な安定期COPD患者に対して,市販流動食を通常食に追加することの有用性は高く,栄養補給療法は,現状の医療環境下では有効な治療選択の一つであると考える.
  • ―臥床期間を考慮した検討―
    都築 宏正, 増田 一基, 門田 詩織, 畑野 光, 木口 大輔, 田内 秀樹, 中西 徳彦
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    AECODP(COPD急性増悪)患者に対する呼吸理学療法の効果と臥床期間が与える影響について検討した.対象はAECOPD入院患者25例とした.調査項目はBMI,mMRC,呼吸機能検査,握力,下肢筋力,SWT(shuttle walking test),NRADL(Nagasaki University respiratory activities of daily living questionnaire)とし,初期評価時と退院時で比較した.また,入院から呼吸理学療法開始までの臥床期間を,中央値未満の「早期群」と中央値以上の「臥床群」に大別し,退院時の各調査項目と入院時の血液ガス分析の値,感染症の有無,人工呼吸器管理の有無,入院期間で比較した.初期評価時と退院時の比較ではmMRC,下肢筋力,SWT,NRADLで有意な改善を認めた.臥床期間の比較では,「早期群」は「臥床群」に対し退院時の握力と下肢筋力,SWTが有意に高値であり,BMIは標準値との差異が有意に低値であった.また,「臥床群」は,高い割合で感染症と人工呼吸器管理が認められ,入院期間は「臥床群」が有意に長期間であった.AECOPD後の呼吸理学療法は有効であり,人工呼吸器管理を施行された場合でも,呼吸理学療法の早期介入を考慮すべきと考えられた.
  • 瀬崎 学, 星 力央, 杉原 聖子, 小池 直人, 後藤 なおみ, 石川 大輔, 影向 晃, 平田 明, 牧野 真人, 木下 秀則
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    人工呼吸器管理下のARDS症例に対して,バンドルケア導入前後の成績を比較し,その効果を検討した.
    【対象と方法】研究期間は2010年5月から2015年5月,対象はこの間に当院ICUにて人工呼吸器管理となったARDS症例のうち,入院前独歩可能であった77症例とした.2013年7月より,ABCDEバンドルを元に,当院でも施行できるよう調整したバンドルケアを使用した.
    【結果】バンドルケア導入前例は28例,導入後例は49例であった.バンドルケア導入前後での両群間の,人工呼吸器開始時年齢・性別・PF ratio・FiO2・APACHE2スコア等において有意差はみられなかった.人工呼吸器離脱期間は,バンドルケア導入後群で有意に短縮され(前20.3日 vs 後11.5日,p<0.05),死亡率においても導入後群では有意な低下を認めた(前42.9% vs 後14.3%,p<0.01).
    【考察】バンドルケア導入後に,人工呼吸器離脱期間短縮や死亡率の低下傾向がみられ,ARDS症例に対しても一定の効果があると考えられた.
  • 宇津木 光克, 松崎 晋一, 蜂巣 克昌, 矢冨 正清, 久田 剛志, 山田 正信, 土橋 邦生, 丸田 栄
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    チオトロピウムとインダカテロールを併用している慢性閉塞性肺疾患症例を対象として,グルコピロニウム/インダカテロール合剤への変更による有用性を検討した.対象症例は16例,平均年齢は72.9歳,FEV1は1.31±0.43 L,%FEV1は49.2±12.9%であった.薬剤変更後4週,12週とも肺機能検査では変化を認めなかったが,薬剤変更後12週でのCATは有意に改善した.またデバイスの嗜好性においては,各手技,吸入手技の自信,吸入の継続性に対して,ハンディヘラー®と比較しブリーズヘラー®の嗜好性が高かった.以上のことからチオトロピウムとインダカテロール併用からグルコピロニウム/インダカテロール合剤への変更は,合剤のメリットであるアドヒアランスの向上だけでなく,QOLの改善効果,さらには吸入デバイスに対する嗜好性から吸入の快適さも向上させうることが示唆された.
  • 江田 清一郎, 藤本 圭作, 花岡 正幸, 久保 惠嗣
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    【背景】全国と同様に,長野県でも,在宅気管切開下人工呼吸(以下TPPV)に加え,1998年から非侵襲的陽圧人工呼吸(以下NPPV)が普及したが,これら在宅人工呼吸療法(以下HMV)の実態は明らかにされていない.そこで,2015年度にHMVの実態調査を実施し,療養改善に繋がる課題を探索した.
    【方法】県内HMVプロバイダーに,患者数・地域調査を,医療機関・訪問看護ステーション・介護施設にアンケート郵送法による調査を行った.
    【結果】2015年2月の長野県内HMV数は,NPPVが310例,TPPVは151例であった.NPPVの対象疾患としては心不全が増加傾向であり,TPPVの対象疾患としては神経筋疾患,脳症を多く認めた.訪問看護ステーションでは,NPPVの対象疾患として,COPD,心不全,肺結核後遺症を多く認めた.患者・家族支援ネットワーク形成の進行は認めたが,HMV可能と回答が得られた介護施設は,43施設中3施設のみで,不可と回答した施設の理由として,「安全対策・電源対策への不安」が半数を占めていた.病院・訪問看護ステーションでは,「病診連携・医看連携・患者共有」不足が大きな問題であった.
    【考察】介護・看護上の課題は多く,支援に結びつく登録・ケアシステムを検討し,HMVケアを十分に受けられる環境を整備する必要がある.
  • 山本 加奈子, 谷本 高男, 香川 智正, 岡村 綾, 松下 祥子, 大久保 寿々子, 川滝 美佳, 小玉 篤, 横澤 悠貴
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,口腔ケアマニュアル(以下マニュアル)の作成・導入・普及により,看護師の口腔ケア技術の向上と,その成果として入院患者の誤嚥性肺炎発生率の低下が見られるかどうかを評価した.3年間のRST活動により,看護師の口腔ケアに関する意識・知識・技術項目の自己評価は有意に向上し,口腔ケアに悩みを持つ看護師の減少が図れた.また,マニュアル導入前後の入院患者の誤嚥性肺炎発生率は,32.1%から10.2%へと減少した.マニュアルを活用したRST活動を継続したことは,院内の口腔ケアを標準化するだけでなく,定期的な患者評価を適時適切に実施する機会となり,統一した口腔ケア技術の向上に伴い,誤嚥性肺炎患者の減少につながったと考える.患者が繰り返し誤嚥性肺炎を発症しないために,今後は看護師のケア技術の向上だけでなく,患者の全身機能維持・増進を支援するための教育的介入も,チームで取り組むことが課題と考えられる.
  • 岩波 裕治, 五十嵐 愛, 内 昌之, 杉野 圭史, 本間 栄, 海老原 覚
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 90-95
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    慢性安定期の間質性肺炎患者に対する呼吸リハビリテーション介入研究(Toho Rehabilitation for Interstitial Pneumonia study: TRIP study)において,外来呼吸リハビリテーション(外来呼吸リハ)通院選択への阻害因子を検討した.
    【対象と方法】当院呼吸器内科外来通院患者の中で,外来呼吸リハ加療の対象と考えられた患者22例(男性:15例,女性:7例)とした.そのうち外来呼吸リハ(週1回×3ヶ月間)を希望された群(参加群:10例)と希望されなかった群(不参加群:12例)の2群に大別して,年齢,重症度(厚生労働省特定疾患認定基準),呼吸困難の程度(mMRC,修正Borg Scale),通院時の付き添いの有無,HOT導入の有無,通院時間,自宅-当院間の直線距離,スパイログラム,運動耐容能(6分間歩行試験),St. George’s Respiratory Questionnaire,不安感(State Trait Anxiety Inventory Form)を比較検討した.
    【結果】2群間で有意差を認めた項目は,通院時間,自宅-当院間の直線距離のみであった(p<0.05).その他の項目では有意差を認めなかった.
    【考察】間質性肺炎患者の外来リハへの参加を阻害する因子として,通院時間,通院距離といった環境要因が影響していることが示唆された.
  • 鈴木 努, 八塩 ゆり子, 小山 智生, 小澤 聡子
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    【目的】当院における市中肺炎(CAP)および医療介護関連肺炎(NHCAP)患者の総合的臨床兆候とリハビリテーション介入の効果について検討した.
    【対象】2014年4月から2015年3月にかけて,肺炎の診断で入院しリハビリテーションを実施した176例を対象とした.
    【方法】検討1はCAP群とNHCAP群の比較,検討2は過去2年間に誤嚥性肺炎の診断で再入院したCAP群とNHCAP群の比較,検討3はCAP群の中で再入院の有無で比較,検討4はNHCAP群の中で再入院の有無で比較とし,年齢,重症度判定,誤嚥性肺炎率,日常生活動作能力評価,退院先などを,診療録より後方視的に検討を行った.
    【結果】CAP群に比較しNHCAP群では,年齢が高く自立度が低く全般に介助が必要な患者が多く,両群ともに半数以上が誤嚥性肺炎であった.再入院患者群は,再入院していない患者群と比べると,CAP群・NHCAP群ともに日常生活動作自立度が低値であり,特にNHCAP再入院群では日常生活動作自立度が低い傾向にあった.
  • 中井 晶子, 青木 康弘, 松田 智恵, 鈴木 雅文, 原 史郎, 須賀 達夫, 前野 敏孝, 倉林 正彦
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 101-107
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    気管支喘息は,気道炎症,気道過敏性の亢進,可逆性の気道閉塞を特徴とする慢性疾患である.気管支喘息の治療では気道炎症をコントロールすることが最も重要であり,標準治療として吸入ステロイド薬が用いられる.しかし気管支喘息患者の中には,病態理解が不十分なために,吸入ステロイド薬に対する誤った認識を持ち,自己判断で吸入を中止してしまう患者が存在する.当院では看護師が吸入指導を行うことにより,患者の病態に対する理解度,標準治療と治療継続の必要性に対する理解度の改善を認めた.また初回指導後6ヶ月~12ヶ月を経過すると,吸入アドヒアランスには問題なくても,気管支喘息理解度の低下が見られることから,定期的な吸入指導の継続が必要と考えられた.
  • 中田 秀一, 渡邉 陽介, 横山 仁志, 武市 梨絵, 星野 姿子, 堅田 紘頌, 松嶋 真哉
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 108-113
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】周術期患者における手術侵襲が身体機能に与える影響は大きい.その中でも術後身体機能に関する報告は散見されるが,術前身体機能に着目した報告は少ない.そこで,術前身体機能と術後経過の関係について明らかにすることとした.
    【方法】対象は腹部外科手術患者56例とし,術後3日目の棟内歩行自立の可否で通常群,遅延群に分類し,術前身体機能(握力,等尺性膝伸展筋力,片脚立位時間,6分間歩行距離),術後1週時,退院時の術前移動能力への回復率と入院期間について比較した.
    【結果】術前身体機能は通常群,遅延群の順に等尺性膝伸展筋力(0.52,0.43 kgf/kg),片脚立位時間(37.1,3.8秒),6分間歩行距離(422.6,290.0 m)で有意差を認めた(p<0.05).また,遅延群は術後1週時の回復率が有意に低く,入院期間も長期化する結果を認めた.
    【結語】術前身体機能は術後移動能力の回復と関係し,術後経過に影響を及ぼす可能性が示された.
  • 近藤 友和, 水谷 元樹, 志津野 泰幸, 波戸岡 俊三, 重松 義紀
    原稿種別: 原著
    2016 年 26 巻 1 号 p. 114-118
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    肺切除術後患者において,歩行自立獲得が遅延した要因を検討した.当院で肺切除術を施行した114名を対象に,術後4日目までに歩行自立を獲得した患者98名を「順調群」,獲得できなかった患者16名を「遅延群」に分類した.後方視的に術前要因(年齢,BMI,%肺活量,1秒率,血清アルブミン値,肺疾患の有無,肺外疾患合併の有無,喫煙歴,屋外歩行の可否),手術要因(術式,手術時間,出血量),術後要因(胸腔ドレーン留置期間,硬膜外麻酔留置期間,合併症の有無,術後からの歩行開始日,6MD)に分類して比較検討した.「遅延群」では「順調群」と比較して,術前要因として有意に年齢が高く,屋外歩行を行っていなかった.術後要因では有意に合併症をきたし,歩行開始日が遅く,6MDが短かった.以上より,肺切除による手術要因自体の影響はみられず,高齢,術前からの屋外歩行非実施者,術後合併症による歩行開始の遅れにより,歩行自立が遅延したことが示唆された.
症例報告
  • 佐藤 憲明, 椛島 寛子, 星木 宏之, 有吉 雄司, 津崎 裕司, 高永 康弘, 林 秀俊
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 26 巻 1 号 p. 119-121
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は80歳代女性,入院前は杖歩行で自立.肺炎により入院した後,誤嚥により肺炎が増悪し,第9病日に急性呼吸窮迫症候群を発症.第17病日より呼吸リハビリテーションを開始したが,その後気胸併発,十二指腸狭窄のため胃空腸バイパス術が施行され,身体機能が著明に低下した.さらに意欲低下,易疲労感等のため十分な運動療法が実施できなくなり,歩行時のふらつきは著明であった.そこで自立歩行を目標に,第120病日よりベルト電極式骨格筋電気刺激法(B-SES)を開始.第130病日までに7回施行した結果,第87病日→第120病日→第133病日で比較検討すると,等尺性膝伸展筋力:0.23→0.25→0.31(kgf/kg),30秒椅子立ち上がりテスト:0→0→6(回),6分間歩行距離:278→307→357(m)と著明な改善を認めた.第134病日には杖歩行で自立して自宅退院となった.B-SESは,「フレイル」高齢者にとって,身体機能の改善が得られ,臨床的に有用な場合もあることが示唆された.
研究報告
  • 岩井 宏治, 平岩 康之, 小島 弓佳, 前川 昭次, 川崎 拓
    原稿種別: 研究報告
    2016 年 26 巻 1 号 p. 122-124
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    滋賀県にある通所介護・リハビリ施設を対象にアンケート調査を実施し,NHCAPに対する認知度を調査した.対象481施設のうち,199施設より回答を得た(回答率41.4%).結果,施設全体のNHCAP認知度は,「0~30%未満」が74%と最も多かった.一方でサービス提供中の急変や症状の増悪は77%の施設で経験していた.利用者の不調を疑う所見としては,「発熱」や「呼吸困難」が多く,肺炎の初期症状を想定しているものと考えられた.NHCAPの予防について必要な対応としては,「口腔ケア」が71.9%と最も多かった.NHCAP予防における定期的な呼吸ケアの実施は,「全く実施できていない」,「わからない」を合わせると約半数,「若干の実施ができている」を加えると約8割の施設で適切な呼吸ケア対策が不十分であった.医師のみならず,看護師や理学療法士は,ソフト面改善の一翼を担うべき職種であり,地域での更なる多職種連携の必要性が示唆された.
  • 宇賀 大祐, 加藤 大悟, 遠藤 康裕, 中澤 理恵, 坂本 雅昭, 土橋 邦生, 笛木 真, 牧野 荘平
    原稿種別: 研究報告
    2016 年 26 巻 1 号 p. 125-128
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    【目的】3ヶ月間の低頻度通院による呼吸リハビリテーション介入により,呼吸困難,下肢筋力,運動耐容能,ADL,QOLに対する効果があるのか否かを検証することを目的とした.
    【対象と方法】通院頻度週1回未満の慢性呼吸器疾患患者16名に対し,コンディショニング,運動療法,日常生活動作指導を実施した.3ヶ月間の介入前後でMedical Research Council息切れスケール,等尺性膝関節伸展筋力,6分間歩行距離,The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire(NRADL),St. George’s Respiratory Questionnaireを測定し比較した.
    【結果】全項目改善傾向であり,等尺性膝関節伸展筋力,NRADLには有意差が認められた(p<0.05).
    【結語】本研究は対照群を設定しておらず,少数例での研究報告であり,確定的な結論は得られていない.しかし,慢性呼吸器疾患患者に対する呼吸リハビリテーションは,週1回未満の低頻度でも,注意深く通院時に十分な指導を行うことで,短期的効果が得られる項目もある.
  • 原田 洋明, 中尾 淳一, 高濱 みほ, 松田 眞弥, 楠 雄斗, 小倉 千明, 槙田 香子, 高松 理央, 坪川 典史, 山下 芳典
    原稿種別: 研究報告
    2016 年 26 巻 1 号 p. 129-134
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】当院では肺切除予定患者に対して,術前待機期間に外来にて理学療法と強化栄養療法を併用する包括的呼吸リハビリテーションを,多職種相互関係チームアプローチにて実践してきた.今回,サルコペニアを背景とする患者に対する本法の有効性を評価した.
    【対象と方法】2006年~2014年において肺癌に対する肺葉切除施行例のうち,「70歳以上で体重が標準体重の90%未満」であった33例を対象とし,本法施行群(11例)と非施行群(22例)で,術後合併症発生について比較した.
    【結果】施行群の27.3%,非施行群の72.7%に術後合併症が認められた(p=0.024).多変量ロジスティック解析にて,本法は術後合併症発生率と有意に関連する独立した因子であった(p=0.049).
    【まとめ】サルコペニアを背景とする肺切除患者において,本法は術後合併症発生率を減少させる臨床的に有用な取り組みである事が示唆された.
  • 田中 貴子, 神津 玲, 北川 知佳, 朝井 政治, 髻谷 満, 千住 秀明
    原稿種別: 研究報告
    2016 年 26 巻 1 号 p. 135-139
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    われわれは2013年から,韓国の医師や理学療法士など多職種に呼吸リハビリテーション(呼吸リハビリ)の重要性を認識して頂くこと,さらに呼吸リハビリを実践できる理学療法士等の養成を主たる目的に学術交流を行ってきた.具体的な取り組みは,韓国内において呼吸リハビリの知識・技術を啓発・普及するためのセミナーを開催し,理学療法士のみならず,呼吸リハビリに関わる多職種の人材育成を行った.また,日本において,「国際呼吸リハビリテーションフォーラム」を主催し,日本と韓国の医療関係者の学術交流ならびに日本の呼吸リハビリ施設を見学する機会を設けた.その際,「呼吸リハビリを普及・定着するための方策」をテーマに討議の場を設け,韓国の医師,看護師,理学療法士など多職種間の連携構築を促した.これらによって,韓国での呼吸リハビリの課題や行動目標が明らかとなり,人材育成のための教育機関の必要性など具体的な取り組みが始まった.
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