日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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症例報告
6分間歩行試験時の近赤外分光法測定により閉塞性動脈硬化症が診断されたCOPD患者の1例
岩本 敏志池内 眞弓栗田 太作浅野 浩一郎沓澤 智子
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2018 年 27 巻 2 号 p. 188-192

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抄録

症例は73歳の男性COPD患者.肺機能は,%VC 92.6%,1秒率 59.8%,%FEV1 53.7%.歩行時に下肢筋の疲労感を訴えており,6分間歩行試験(6MWT)を施行した.6MWT中,右腓腹筋,右外側広筋の酸素化状態を近赤外分光法で測定した.歩行距離 356 m,SpO2は安静時98%で歩行中の低下はなし.外側広筋・腓腹筋とも,酸素化ヘモグロビン/ミオグロビン(Hb/Mb)の相対濃度が低下し続け,脱酸素化Hb/Mbの相対濃度は増加し続けた.外側広筋では総Hb/Mbの相対濃度が低下し続けた.軽度の運動強度で,低酸素血症もないことから,下肢筋の血流障害が疑われ,精査の結果,右総大腿動脈の狭窄と下腿動脈の閉塞と診断された.COPD患者では,骨格筋機能障害から下肢の疲労により運動を中止することがある.また,COPD患者では,血管系の疾患を合併することもあり,運動負荷中の筋酸素化状態の測定は,閉塞性動脈硬化症の合併の有無を推測できる可能性がある.

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© 2018 一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
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