症例は73歳の男性COPD患者.肺機能は,%VC 92.6%,1秒率 59.8%,%FEV1 53.7%.歩行時に下肢筋の疲労感を訴えており,6分間歩行試験(6MWT)を施行した.6MWT中,右腓腹筋,右外側広筋の酸素化状態を近赤外分光法で測定した.歩行距離 356 m,SpO2は安静時98%で歩行中の低下はなし.外側広筋・腓腹筋とも,酸素化ヘモグロビン/ミオグロビン(Hb/Mb)の相対濃度が低下し続け,脱酸素化Hb/Mbの相対濃度は増加し続けた.外側広筋では総Hb/Mbの相対濃度が低下し続けた.軽度の運動強度で,低酸素血症もないことから,下肢筋の血流障害が疑われ,精査の結果,右総大腿動脈の狭窄と下腿動脈の閉塞と診断された.COPD患者では,骨格筋機能障害から下肢の疲労により運動を中止することがある.また,COPD患者では,血管系の疾患を合併することもあり,運動負荷中の筋酸素化状態の測定は,閉塞性動脈硬化症の合併の有無を推測できる可能性がある.