日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
Print ISSN : 1881-7319
ISSN-L : 1881-7319
27 巻, 2 号
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ステートメント
  • 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会,日本呼吸理学療法学会,日本呼吸器学会
    植木 純, 神津 玲, 大平 徹郎, 桂 秀樹, 黒澤 一, 安藤 守秀, 佐野 裕子, 佐野 恵美香, 石川 朗, 高橋 仁美, 北川 知 ...
    原稿種別: ステートメント
    2018 年 27 巻 2 号 p. 95-114
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    呼吸リハビリテーションとは,呼吸器に関連した病気を持つ患者が,可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため,医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である.呼吸リハビリテーションは原則としてチーム医療であり,専門のヘルスケアプロフェッショナルすなわち,医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床工学技士,管理栄養士,歯科医師,歯科衛生士,医療ソーシャルワーカー,薬剤師,保健師,公認心理師,ケアマネージャー等の参加により,あるいは必要に応じて患者を支援する家族やボランティアも参加し行われるものである.また,呼吸リハビリテーションは病態に応じて維持期(生活期)から終末期まで,急性期,回復時,周術期や術後回復期も含むシームレスな介入である.介入に際しては,評価に基づきコンディショニングを併用した運動療法を中心として,ADLトレーニングを組み入れ,セルフマネジメント教育,栄養指導,心理社会的支援等を含む包括的な個別化プログラムを作成,実践する.達成目標や行動計画を医療者と協働しながら作成し,問題解決のスキルを高め,自信をつけることにより健康を増進・維持するための行動変容をもたらすよう支援する.継続への指導は再評価に基づき行い,身体活動の向上を重視する.呼吸リハビリテーションは息切れを軽減,健康関連QOLやADL,不安・抑うつを改善させ,入院回数・日数を減少させる等の有益な治療介入であり,適応のあるすべての呼吸器に関連した病気を持つ患者に実施される必要がある.

ワークショップ
  • ―人間らしい在宅生活をめざした慢性呼吸器疾患患者の教育・支援―
    桂 秀樹, 福井 基成
    原稿種別: ワークショップ
    2018 年 27 巻 2 号 p. 115
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
  • 茂木 孝
    原稿種別: ワークショップ
    2018 年 27 巻 2 号 p. 116-118
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    自己管理介入は「患者自身がより良い技術や健康行動に適応できるように,個別に動機づけし,携わり,支援する目的のもの」である.介入自体は個別の患者に対して始められるが,その最終ゴールは患者自身の健康,QOLの維持向上という患者一人のためにあるだけでなく,患者を取り巻く周囲の人,地域社会まで含めた連携を目標としている.患者のやる気,自信,能力を引き出し望ましい行動へと導くことが教育・支援における医療者の役割である.その達成には行動変容の介入技術を用いることが必要となる.課題としては患者の高齢化,介護者の不在,合併症の影響,医療者自身の教育技術の不足,社会システム構築の遅れなどがある.

  • 若林 律子
    原稿種別: ワークショップ
    2018 年 27 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    慢性呼吸器疾患では,増悪による入院が大きな問題となっている.増悪による入院は医療費の問題だけでなく,入院によって筋力が低下することや,増悪によって予後が悪くなることが報告されている.このような増悪入院患者へのケアでは,増悪に対する治療だけでなく,入院中より患者自身が在宅にて疾患をセルフマネジメントできるよう支援する必要がある.在院日数の短縮化が求められる中,短期間の入院では,計画的にセルフマネジメント教育を実施する必要がある.また,増悪を起こす患者は,増悪を繰り返す可能性が高いことが報告されており,増悪入院してきた場合には,次なる増悪を予防するためにも増悪時のアクションプランを作成することが必須である.

    患者がよりよい生活を退院後も維持できるよう入院中より,増悪治療だけなく,アクションプランを含んだセルフマネジメント教育を提供していく必要がある.

  • ―生活に視点をおいた患者教育―
    梨木 恵実子, 山路 聡子
    原稿種別: ワークショップ
    2018 年 27 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    慢性呼吸器疾患をもちながらも患者が在宅で生活を送れることを支えるために,訪問看護は患者に対してセルフマネジメント教育を行う必要がある.その教育は,常に患者や家族とコミュニケーションをとりながら生活に合った内容であること,また他職種とも連携しながら行っていくことが大切である.また,在宅での生活の危機にもなる増悪に対しては,療養日誌や各評価スケール,アクションプラン等を活用することで,患者や家族が増悪の変化に早期に気づき対応できる力を高めていくことが出来る.また,病の進行や老いに伴う呼吸困難の増強やADL低下等に応じて教育内容を変化させ,さらには避けられない終末期及び最期の時も見据えた意思決定支援へも繋げることが必要である.

  • 理学療法士の立場から
    中田 隆文
    原稿種別: ワークショップ
    2018 年 27 巻 2 号 p. 128-131
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    呼吸リハの患者教育は,在宅での継続プログラムを意識した内容が重要である.訪問リハでは身体活動や運動療法の指導を中心に実施されるが,個別の生活スタイルに適応した指導を行うことが重要である.当院の在宅COPD患者110例は高齢かつ重症で,セルフマネジメントが困難で,身体活動の低い事例であったが,身体活動を高める訪問呼吸リハと患者指導を実施することで入院を予防し,在宅期間が延長した.在宅患者の希望は療養生活の情報提供と指導だが,介護保険制度の特性上,ケアプランに呼吸器症状は反映されにくい傾向がある.在宅患者への呼吸リハも十分に普及しておらず,患者教育が必要な在宅の患者全てに,生活機能の維持向上と呼吸器症状のマネジメントを並行して実施するサービスの普及が必要である.在宅医療は重症例や終末期の事例を対象としており,地域で最期までその人らしく過ごせることをテーマとする呼吸リハが求められている.

  • 吉澤 明孝, 吉澤 孝之
    原稿種別: ワークショップ
    2018 年 27 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    がん,非がんの緩和ケアが注目される昨今,エンドオブライフに向けた自己決定支援が取り上げられている.

    特に慢性呼吸不全のエンドオブライフケアにおいては,患者,家族を含めた話し合いが必要不可欠であり,それがACP(アドバンス・ケア・プランニング)であり,初診時からACPは開始されるべきものである.繰り返す話し合いの中で患者の意向を共有し,どのタイミングでAD(事前指示書)を作成していくかを見極めるためにも何度でもACP(話し合い)を意識して診察していくことが必要である.またそれは,主治医が一人でするものではなく,また看護師,MSWなどに委ねるものでもなく,チームアプローチとして行って行くものである.医師はそのコーディネーターとして船頭を務める必要がある.

教育講演
  • 中野 恭幸
    原稿種別: 教育講演
    2018 年 27 巻 2 号 p. 137-138
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    日常診療に用いられる画像は多くある.これらの画像は,病気の診断や進展を調べるためにとても大切であるが,臨床研究に画像を用いる際には,画像を定量化することが非常に重要になってくる.呼吸機能検査や6分間歩行距離と同じように,画像の評価も数字で行えば,画像の変化を定量化でき,他の指標との関係性を統計学的に検討できる.胸部X線写真や胸部CT画像の要素も定量化する方法が開発され,広く使われている.画像の定量化を用いた「呼吸機能イメージング」という分野は,今後,更なる発展が期待される.

コーヒーブレイクセミナー
  • 奥田 みゆき, 田中 順哉, 福田 康二, 加藤 悠人, 木戸 悠人, 清水 学, 能勢 亜友子, 上田 耕平, 辻 是道, 野原 隆司, ...
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2018 年 27 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    高流量鼻カニューラ(High-flow nasal cannula; HFNC)は,集中治療領域や周術期から,間質性肺炎などのⅠ型呼吸不全,さらにCOPDに伴うⅡ型呼吸不全まで,様々な疾患への有用性が報告されている.

    HFNCは非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)と比較して,インターフェイスによる不快感が少なく,飲食・会話が可能であるなど患者のコンプライアンスが高く,安易に開始される場合もあるが,NPPVと同様にHFNC治療成功には,様々な職種と学際的チーム医療を構築することが大切であると考える.高流量を得るために様々なNPPV・CPAP機器,専用システムがセットになったSteadyair(Atom Medical社製)を使用することもあり,それぞれの機器の特性を理解することも必要となった.

    当院では,HFNCマニュアル作成や,HFNCの利点である早期の経口摂取・リハビリなどにつき,学際的多職種包括呼吸リハビリチームが介入し,患者ひとりひとりに適した機器を使用することで,院内から在宅まで長期にわたるHFNCを行っているため報告する.

  • 奥田 みゆき, 田中 順哉, 福田 康二, 木戸 悠人, 清水 学, 上田 耕平, 辻 是道, 加治木 幸, 有満 道子, 前田 里美, 伊 ...
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2018 年 27 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    高流量鼻カニューラ(ハイフローシステム)は,集中治療領域や周術期から,間質性肺炎などのⅠ型呼吸不全,さらにCOPDに伴うⅡ型呼吸不全まで,様々な疾患への有用性が報告されている.

    ハイフローシステムは非侵襲的陽圧換気療法(Non-invasive Positive Pressure Ventilation: NPPV)と比較して,インターフェイスによる不快感が少なく,飲食・会話が可能であるなど患者のコンプライアンスが高く,安易に開始される場合もあるが,NPPVと同様にハイフローシステム治療成功には,様々な職種と学際的チーム医療を構築することが大切であると考える.当院では,ハイフローシステムの特性,利点・欠点を多職種で共有し,安全なハイフローシステムが施行できるために,医師だけでなく臨床工学技士・看護師・理学療法士・栄養士・薬剤師が参加したハイフローマニュアルを作成したため報告する.

原著
  • 池内 智之, 金田 瑠美, 進藤 崇史, 大場 健一郎, 稲益 綾子, 末松 利加, 津田 徹
    原稿種別: 原著
    2018 年 27 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    【目的】呼吸器疾患患者の要介護度が適切に審査されているか検討すること.

    【方法】当施設を利用中の呼吸器疾患患者を対象に包括的ADL,疾患特異的ADL,呼吸困難,酸素流量を評価し,要介護度との相関関係を分析した.また,要介護1と判定された患者の中で,呼吸器疾患患者と他疾患患者の間で身体活動量に違いがあるか比較検討した.

    【結果】包括的ADLは要介護度との相関関係が認められたが,疾患特異的ADL,呼吸困難,酸素流量と要介護度に相関関係は認められなかった.また,同じ要介護1でも呼吸器疾患患者は他疾患患者に比べ歩数が有意に低下していた.

    【結語】呼吸器疾患患者は呼吸困難のためにADLやIADLが制限される.しかし,そういったADLの低下は要介護認定調査には反映されず,動作そのものは自立できることが多いため,要介護度が過小評価される.そこで,呼吸器疾患の特徴を理解し,適切な要介護認定につなげられるようなアプローチが必要である.

  • 住谷 充弘, 西村 美沙子, 角田 尚子, 杉谷 新, 中濱 賢治, 三木 雄三, 少路 誠一, 藤原 美紀
    原稿種別: 原著
    2018 年 27 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    COPDや肺線維症といった非がん慢性呼吸器疾患は肺癌と比べ予後不良な報告も認める.非がん慢性呼吸器疾患患者は欧米諸国では終末期に緩和ケア病棟に入院しているが,本邦では保険診療の関係で緩和ケア病棟へ入院できず,一般病棟で亡くなる.今回,非がん慢性呼吸器疾患患者における一般呼吸器内科病棟での死亡状況を検討した.2005年7月から約10年間に大阪市立総合医療センター呼吸器内科病棟で死亡した155人のうち,担がん患者,ICU死亡者,転科者を除く非がん慢性呼吸器疾患患者93人を評価対象とした.基礎疾患は間質性肺炎群が全体の67%を占め,入院前に59%が在宅酸素療法を導入していた.最終的に94%の患者本人あるいは家族からDo Not Attempt Resuscitationの意思提示があった.症状緩和に対して向精神薬・鎮静剤を72%に,塩酸モルヒネ皮下注射を65%に使用していた.

  • 今戸 美奈子, 北 英夫, 鳳山 絢乃, 祖開 暁彦, 後藤 健一, 深田 寛子, 田尻 智子, 中村 保清
    原稿種別: 原著
    2018 年 27 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    【背景】ハイフローセラピー(HFT)の快適性に関する報告は蓄積されてきているが,実際にはHFTに伴う苦痛の訴えやスキントラブルを経験することが少なくない.

    【目的】当院でHFTを実施した患者の装着感およびスキントラブルを診療録より後ろ向きに検討した.

    【方法】2013年5月から2016年1月にHFTを使用した70名の診療録より疾患やHFT使用日数,HFTに関して記載された患者の訴えや観察内容を抽出して分類した.

    【結果】HFT使用日数は平均8.8日,HFTの装着感は<以前のインターフェイスより快適><高流量による鼻腔内の違和感・疼痛><高流量による圧迫感>等,10のカテゴリに分類された.スキントラブルは14名(20%)に認めた.不快感やスキントラブルが原因でHFTを中断した例はなかった.

    【考察】HFTの中断には至らないものの苦痛を伴う患者も存在するため,安全で快適な治療継続には患者への説明やトラブルの予防的ケアが重要である.

  • 今戸 美奈子, 竹川 幸恵, 森本 美智子, 河田 照絵, 池田 由紀, 松本 麻里, 本城 綾子, 毛利 貴子
    原稿種別: 原著
    2018 年 27 巻 2 号 p. 168-173
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    【目的】慢性呼吸器疾患患者が行う息切れに対するマネジメント法の実態を明らかにした.

    【方法】全国26施設の呼吸器科外来通院中の慢性呼吸器疾患患者に自記式質問紙を配布し郵送により回収した.息切れの程度や息切れのマネジメントを行う動作,マネジメント法の実行状況等を尋ね,有効回答565名のデータを分析した.

    【結果】半数以上の者が「歩く」「階段昇降」で息切れのマネジメントを行い,最も多く行われていたマネジメント法は「自分のペースで動く」であった.1人平均12項目のマネジメント法を実行していたが,いずれの方法も息切れの緩和に役立っていると回答した者は,実行者のうち25%に満たなかった.息切れの緩和に役立つと回答した者には,呼吸リハビリテーション受講経験者が有意に多かった.

    【考察】息切れの緩和に役立つと認識あるいは実感できるようなマネジメントへの支援が課題である.

  • 久宗 真理, 下西 みずえ, 松井 美帆
    原稿種別: 原著
    2018 年 27 巻 2 号 p. 174-179
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究は終末期COPD患者への緩和ケアの実践状況を明らかにし,ターミナルケア態度,困難感との関連性を検証した.COPD患者を看護する看護師159名に無記名質問紙調査を実施した.アセスメントの実施率は呼吸困難,咳嗽,不安で高く,非薬物療法では体位・生活動作の工夫,日常生活の調整,呼吸リハビリテーション,環境整備などが実施されていた.緩和ケア院内研修の受講歴は,ターミナルケア態度,困難感尺度の患者・家族を含めたチームとしての協力・連携,治療・インフォームドコンセント,環境・システムで,看取り経験は困難感尺度の看護職の知識・技術,COPD患者看取り経験では患者・家族を含めたチームとしての協力・連携,治療・インフォームドコンセントで有意差を認めた.以上のことから,緩和ケアの研修を行い,スタッフの困難感を取り除き,ターミナルケア態度を高めることにより,COPDの緩和ケアを確立していく必要がある.

  • 大村 一之, 須賀 達夫, 吉野 宗明, 鈴木 結香理, 中村 美樹, 根松 香織, 長田 知美, 原 史郎, 青木 康弘
    原稿種別: 原著
    2018 年 27 巻 2 号 p. 180-184
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    【背景と目的】閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)における,自宅での簡易睡眠検査(OCST)が普及しているが,PSG結果(AHI)との解離が課題である.そこで当院の診断精度を検討し,臨床的に問題となる解離例の特徴を解析した.

    【対象と方法】当院でOCSTとPSGを行った195症例のOCST結果(REI)と,AHIを比較検討した.

    【結果】REIとAHIに相関を認めた(r=0.83, P<0.01)が,REIが低値の傾向を認めた.臨床的に問題となる5≦REI<20におけるAHI≧20の例が35%認められ,この群では年齢が高く,男性が多く,最低SpO2が低く,3%ODIが高かった.

    【結語】OCSTでは過小評価される傾向を認め,またREI<20でもAHI≧20となる例も存在することから,眠気の自覚症状のみならず,年齢・性別・SpO2等も考慮して総合的にPSGを判断されるべきであると考える.

症例報告
  • 村川 勇一, 南木 伸基, 寒川 美由紀, 徳田 道昭
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 27 巻 2 号 p. 185-187
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    抗好中球細胞質抗体関連血管炎によりびまん性肺胞出血・急性呼吸不全を呈した症例に対して挿管人工呼吸管理中から早期の呼吸リハビリテーションを施行して歩行可能となり,自宅復帰可能なレベルまで機能回復した症例を経験した.人工呼吸管理中においても多職種で協力し,早期からリスク管理下にて呼吸リハビリテーションを行っていくことで廃用症候群や呼吸器合併症の発生を最小限に抑えることや各種検査データや栄養状態などをもとに運動強度を調整し,身体機能向上を図ったことが本症例の機能回復に影響したと考える.

  • 岩本 敏志, 池内 眞弓, 栗田 太作, 浅野 浩一郎, 沓澤 智子
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 27 巻 2 号 p. 188-192
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    症例は73歳の男性COPD患者.肺機能は,%VC 92.6%,1秒率 59.8%,%FEV1 53.7%.歩行時に下肢筋の疲労感を訴えており,6分間歩行試験(6MWT)を施行した.6MWT中,右腓腹筋,右外側広筋の酸素化状態を近赤外分光法で測定した.歩行距離 356 m,SpO2は安静時98%で歩行中の低下はなし.外側広筋・腓腹筋とも,酸素化ヘモグロビン/ミオグロビン(Hb/Mb)の相対濃度が低下し続け,脱酸素化Hb/Mbの相対濃度は増加し続けた.外側広筋では総Hb/Mbの相対濃度が低下し続けた.軽度の運動強度で,低酸素血症もないことから,下肢筋の血流障害が疑われ,精査の結果,右総大腿動脈の狭窄と下腿動脈の閉塞と診断された.COPD患者では,骨格筋機能障害から下肢の疲労により運動を中止することがある.また,COPD患者では,血管系の疾患を合併することもあり,運動負荷中の筋酸素化状態の測定は,閉塞性動脈硬化症の合併の有無を推測できる可能性がある.

  • ―自動呼気気道陽圧変動の効果を検証しえた一例―
    中濱 賢治, 西村 美沙子, 杉谷 新, 三木 雄三, 住谷 充弘, 少路 誠一
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 27 巻 2 号 p. 193-195
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    安定期の重度慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する自動呼気気道陽圧変動を伴う平均換気量保証圧支持機能(average volume assured pressure support - Auto EPAP, AVAPS-AE)の有用性についての報告は乏しい.今回我々は気管切開を施行され,人工呼吸器依存状態となった安定期COPD患者に対して,AVAPS-AEを使用することで換気状態の改善が得られたため報告する.患者はCOPD急性増悪後に気管切開,人工呼吸器依存状態となった81歳男性で,AVAPSまたはAVAPS-AE (Trilogy, Philips社) を使用し,換気データを比較した.AVAPS-AEはAVAPSと比較して呼気気道陽圧が上昇するが吸気気道陽圧は低下し,同程度の換気量を保ちながら必要なpressure supportが大きく低下していた.我々の知る限り,気管切開を施行されたCOPD症例に対してこれら2つのモードを比較検討した報告はこれが初めてである.AVAPS-AEは安定期高度COPD患者に対して有益となる可能性がある.

  • 浦 慎太朗, 本田 憲胤
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 27 巻 2 号 p. 196-198
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    我々は,痰の貯留による気管支ステント閉塞と無気肺に対して,理学療法と肺内パーカッションベンチレータとの併用療法が有効であった再発性多発軟骨炎症例を経験した.気管支狭窄に対する治療法として,ステント留置の有効性が報告されているが,その合併症である喀の貯留に伴うステント閉塞の治療に難渋することがある.肺内パーカッションベンチレータは周術期合併症としての肺炎や無気肺の改善効果が報告されているが,ステント閉塞に対する使用報告はされていない.痰の貯留に伴うステント閉塞と無気肺に対して,理学療法と肺内パーカッションベンチレータとの併用療法は非侵襲的で有効な治療法になりうると考えられた.

  • 佐藤 善信, 河原 信彦, 井上 麻衣子, 星井 輝之, 岩﨑 洋一
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 27 巻 2 号 p. 199-201
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    重症心身障害児(者)(重症児者)を対象とした機械による咳介助(MI-E)及び徒手介助併用の機械による咳介助(MAC)の有効性は,報告数がきわめて少なく十分に検証されていない.今回,当院短期入所中に右上腕骨骨幹部骨折を受傷し右側臥位が制限された重症児に対して,MACおよび可能な範囲の体位ドレナージを肺炎治療に併用し,その経過を検討した.

    症例は,気管切開下陽圧換気管理の18歳の男性で,溺水後遺症による重症心身障害児.右上腕骨骨折後に肺炎及び無気肺を認めた.当患者に対して,MACおよび可能な範囲の体位ドレナージを肺炎治療に併用した.左肺を中心とした広範な無気肺は,最終的には合併症なく改善が認められた.

    骨折により体位が制限されることは,肺炎や無気肺に繋がる可能性がある.重症児者の呼吸ケアにおいてMACと体位ドレナージの併用は,肺炎治療の一助になることが示唆された.

  • 礒 千聡, 井原 晶子, 鈴木 亜美, 三藤 雄介, 中川 諒, 林 涼, 小池 康子, 新 智美, 新 謙一
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 27 巻 2 号 p. 202-205
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    77歳の重症慢性閉塞性肺疾患患者に対し,日常生活動作の呼吸困難軽減を目的に在宅にてHigh Flow Nasal Cannula(以下HFNC)を導入した.呼吸困難を伴う食事・入浴の際に使用し,SpO2の改善を認めた.継続使用における問題点として,機器運搬の煩雑さやカニューレのずれがあった.対策として小型の機種に変更し,延長回路を導入した.また,カニューレの固定性を高める為に,持続陽圧人工呼吸療法用ヘッドギアを併用した.HFNC導入4ヶ月後に悪性リンパ腫を併発し,その3ヵ月後に非侵襲的陽圧人工呼吸療法(以下NPPV)へ移行し,その後永眠した.HFNC期間中は体重を維持し,楽しみである入浴が可能な生活を継続できた.本症例より在宅でも安全なHFNC導入は可能であり,NPPV移行までの呼吸サポートとしての有用性が示唆された.

研究報告
  • 垣内 優芳
    原稿種別: 研究報告
    2018 年 27 巻 2 号 p. 206-209
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    【背景と目的】最長発声持続時間が嚥下障害者の自己排痰の可否とどのような関係にあるのかは不明である.本研究の目的は,自己排痰可能群と不可能群の最長発声持続時間を比較検討することである.

    【対象と方法】対象は入院中のFood Intake LEVEL Scaleが10未満の患者である.基本情報,自己排痰の可否を調査し,対象者を自己排痰可能群と不可能群に分類した.両群において,最長発声持続時間を測定した.

    【結果】対象者は自己排痰可能群10名,不可能群10名であった.不可能群の最長発声持続時間は3.3秒であり,可能群の8.8秒に比べ有意に低値であった.

    【考察】不可能群の最長発声持続時間低値は,嚥下機能の低下に関連し,同時に咳嗽メカニズムの第3相(圧縮)不足による咳嗽機能低下を併発していると考えられた.

    【結論】不可能群の最長発声持続時間は,可能群に比べ有意に低値であり,嚥下障害患者の自己排痰の可否を判断する見極めに最長発声持続時間が有用である可能性が示唆された.

  • ―高齢群と非高齢群の比較―
    松岡 森, 佐藤 慶彦, 本田 憲胤
    原稿種別: 研究報告
    2018 年 27 巻 2 号 p. 210-214
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    肺切除術後における6分間歩行距離回復率を高齢群(75歳以上)と非高齢群(75歳未満)に分け,違いがあるかを検討した.対象は肺切除術施行患者96名(高齢群22名:平均年齢79.3±3.2歳,非高齢群74名:平均年齢62.6±9.6歳)であった.入院診療録より患者背景(年齢・性別・PS・入院前ADLなど),手術記録より術式・手術時間・麻酔時間を調査した.呼吸機能は1秒量・肺活量・Incentive spirometoryによる術前最大吸気量を測定した.運動耐容能は術前後の6分間歩行距離を測定し,術後6分間歩行距離を術前6分間歩行距離で徐した値を6分間歩行距離回復率とした.術前呼吸機能・6分間歩行距離において高齢群で有意に低値を示したが,6分間歩行距離回復率においては有意差を認めなかった.術前呼吸機能や6分間歩行距離が有意に低値を示した高齢群においても,非高齢者と同様に,積極的なリハビリテーション介入により術後運動耐容能低下を予防できることが示唆された.

  • ―女性保健ボランティアの指導―
    寄本 恵輔, 原 歌芳里, 加藤 太郎, 佐藤 敦史, 山下 祥平, 上村 光弘, 福住 宗久, 毛利 篤人, 有本 斉仁, 林 茂樹
    原稿種別: 研究報告
    2018 年 27 巻 2 号 p. 215-221
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    「カトマンズ盆地における呼吸器疾患患者の早期社会復帰支援に向けての取り組み―呼吸リハビリテーションの普及―」は,本邦より医師・理学療法士を3年間で10回ネパールに派遣して実施するシャトル型プロジェクトである.本研究の目的は,呼吸リハビリテーションを地域住民に直接指導する女性保健ボランティアに対し,医療体制,インフラ,言語,文化等に適合させ作成した研修プログラムを検証することである.対象は,モデル地区の女性保健ボランティア42名.方法は,研修後に研修満足度,学習到達度,教育資料・研修の適切性についてアンケート調査を行った.結果,9割以上が研修内容を理解し,呼吸リハビリテーションを指導できると答えた.多様な課題を抱える開発途上国ネパールにおいて,本研修プログラムは,ネパールの関係機関と協働し,現地の実情を踏まえて指導者を育成していくことで,医療技術は持続発展的に普及していくと考えられる.

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