目的:線維化性非特異性間質性肺炎をもつ人のエンドオブライフの記述から,生きられた体験の意味を探究する.
方法:呼吸困難感の悪化に伴い,役割等を喪失しているA氏との非構造化面接を実施し,Colaizzi(1948)の現象学的記述方法を行い,体験の意味を分析した.
倫理的配慮:本人と家族の同意を得た.所属当時の研究医療機関の倫理委員会の承認を受けた.
結果:A氏は,【自立や役割を喪失していくことに対する「どうしてわたしが」という思いを募らせる】も,若き日に【子どもを亡くした悲しみがもたらした長く生きてはならないという誓い】があった.そして,【悲しみを共有した重要他者と紡いだ絆に気づき生きる意味を見出す】ことにより,苦しい日々を生き抜いた.
考察:生きることへの罪悪感と生きられた日々との間にある揺らぎが,病いを契機に情緒面に顕在化したと考えられた.人生の根底に流れている体験を傾聴する援助による実存的苦痛の緩和が示唆された.