日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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シンポジウム
中枢性睡眠時無呼吸症候群の現状
佐藤 彰洋松本 紘毅葛西 隆敏
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2021 年 30 巻 1 号 p. 39-44

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要旨

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)は,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea: OSA)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea: CSA)とに分けられる.一般的にSASといえばOSAであるが,循環器疾患,特に心不全(heart failure: HF)患者ではCSAを高率に合併し,予後悪化と関連することが知られている.CSAを抑制する治療により短期的な心機能の改善が得られることや,十分に抑制効果が得られた場合では長期予後の改善につながる可能性があることが示されてきた.一方,CSAの最も有効な治療として適応補助換気(Adaptive Servo Ventilation: ASV)が普及し,2015年にそれを用いた大規模臨床試験であるSERVE-HF試験の結果が発表されたが,ASVによる予後改善効果は認められず,副次評価項目である心血管死,総死亡がASVによって増加する可能性が示され,大きな問題になった.本稿ではCSAの疫学や病態,これまでのCSA治療についてまとめるとともに,現状の治療方針と今後の可能性について言及する.

一般人口と心不全患者における睡眠時無呼吸の有病率

心不全患者の睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)の有病率については多くの報告があり,母集団や診断基準の違いはあるが,心不全患者は一般人口と比べてSASの合併率が高いとされている.Youngらの報告1によると,一般人口の有病率は男性で24%,女性で9%であるのに対し,心不全患者のSASの有病率は,40-60%とされている2.SASは心不全だけでなく他の循環器疾患に合併することも知られており,冠動脈疾患と心房細動の約5割,さらに脳卒中患者の約8割でSASの合併が認められている.

SASには2種類あり,睡眠時の気道閉塞に起因する閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea: OSA)と中枢の換気ドライブの異常に起因する中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea: CSA)に分類される.一晩の睡眠時無呼吸には閉塞性と中枢性が混在していることが多く,呼吸イベントごとに閉塞性,中枢性かを判別し,閉塞性呼吸イベントが半分以上占める場合にOSA,中枢性呼吸イベントが半分以上を占める場合にCSAと診断するのが一般的である.一般人口におけるSASは主にOSAであり,肥満や上咽頭,舌,顎形態の問題から睡眠中に上気道の閉塞を生じることが主病態である.CSAは動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)に対する化学反応性の亢進に起因するという説もあり,延髄の化学受容体が血中のCO2の変化に過剰に反応することで,無呼吸と過換気が交互に生じる呼吸パターンを呈する(Central Sleep Apnea with Cheyne-Stokes Breathing: CSA-CSB)とされる.循環時間が延長し換気応答が亢進している心不全患者ではCSAを呈しやすく,心不全に合併しているSASの25-40%がCSAであり,OSAと同等以上の有病率と言われている2

中枢性睡眠時無呼吸(CSA)の病態

覚醒時の呼吸調節はCO2化学反射,高位中枢,中枢指令,運動筋の機械および代謝受容体,肺のJ受容体,および頸動脈洞受容体を介する多くの反射整調性が関与している.一方で睡眠中は高位中枢および末梢からの入力が消失するため,CO2化学反射を介する負帰還システムに呼吸調節が依存する.一般に負帰還システムは,センサーの感度が亢進するか信号の伝達に時間がかかる時に不安定になると言われているが,心不全患者では低酸素血症,交感神経緊張など様々な要因でCO2感受性が亢進しているだけでなく,循環時間の延長によりPaCO2の呼吸中枢への伝達が遅れている.これらの要因により,呼吸調節システムが不安定化し,Cheyne-Stokes呼吸に代表される周期性呼吸が誘発されやすくなる3

心不全患者では覚醒時に亢進した換気によりPaCO2が低下しているため,無呼吸閾値が上昇する睡眠時には,PaCO2が無呼吸閾値以下になり呼吸が停止しやすい.無呼吸の持続とともにPaO2が低下,PaCO2が増大し,化学受容体が血ガスの異常を感知すると換気が急激に増加し,覚醒反応を引き起こす結果,睡眠が分断される.覚醒後の過換気によりPaCO2が低下し,呼吸中枢がそれを感知すると換気が減少し患者は深い眠りに入り,無呼吸閾値の上昇から再び呼吸が停止する.CSAはこのようなサイクルで周期性呼吸を形成する.

CSA-CSBでは無呼吸を維持する多くの悪循環が形成されている.①無呼吸による睡眠の分断がCO2化学反射を亢進させ周期性呼吸を維持すること,②低酸素血症がCO2に対する化学反応性を亢進させ無呼吸を誘発すること,③CO2化学反射の亢進が逆に交感神経活動を過剰に刺激すること,などである3.低酸素血症,交感神経系活動の亢進,睡眠障害による副交感神経の減弱はいずれも心不全を増悪させる.

心不全患者は,静脈還流量の増大や肺間質の繊維化により,肺コンプライアンスが低下する.その結果,呼吸は浅くなり機能的残気量が減少し肺伸展反射による交感神経抑制効果が減弱すると言われている4.よって,CSA-CSBで呼吸が停止すると,低酸素血症に加えて肺伸展反射の消失も生じ交感神経活動は亢進する.無呼吸に続く過呼吸が途中覚醒を誘発するため,交感神経活動はさらに亢進する.このようにCSAは心不全の結果として起こるものと認識されているが,CSA自体が心不全の予後不良因子になりうる.実際に,Javaheriらは心不全に無呼吸低呼吸指数(Apnea-Hypopnea Index: AHI)≧5のCSAを合併すると予後不良であることを報告している5

HF-CSAに対する治療

心不全に合併するCSAの治療を考慮する場合,心不全治療薬(ACE阻害薬,β遮断薬,利尿薬,血管拡張薬),ペースメーカー(Overdrive pacing,心臓再同期療法),外科手術(冠動脈バイパス手術,弁膜症手術,補助人工心臓,心移植),心臓リハビリテーションなどの標準的な心不全療法を優先する.ACE阻害薬(カプトプリル)は慢性心不全患者のAHIを減少させることが報告されており6,さらにβ遮断薬(カルベジロール)はHF-CSA患者のAHIを有意に減少させ,その効果は容量依存性の可能性があることが報告されている7.機序は明らかになっていないが,中枢性化学受容体のCO2に対する感受性の抑制や,心不全の重症度の改善による二次的なものなどが推測されている.利尿薬は,肺うっ血の改善によりCSAを減少させうるが8,時に代謝性アルカローシスをもたらし,CO2換気応答を右にシフトさせ,CO2の無呼吸閾値の上昇をもたらし,CSAを悪化させることがあるので注意が必要である9.心臓再同期療法では,左室ポンプ機能改善や僧帽弁逆流の減少に伴う循環時間延長,肺うっ血,交感神経活性の改善などの関与によってCSAが改善されることが言われている.運動療法によって労作時の過換気が改善されることも報告されており,この点から心臓リハビリテーションもHF-CSAを改善させる可能性が考えられる.

これらの心不全に対する治療を行なった後に残存するCSAに対して,炭酸脱水素酵素阻害薬であるアセタゾラミドの投与や酸素療法などのほか,持続陽圧気道療法(Continuous Positive Airway Pressure: CPAP)や適応補助換気(Adaptive Servo Ventilation: ASV)といった陽圧呼吸療法が考慮される.

PaO2が低下するほど,中枢性化学受容体のPaCO2に対する感受性が亢進する.夜間酸素療法は,低酸素血症の改善を介して交感神経系を抑制し,CSAを改善することが期待できるとされている10.CSAを合併する心不全患者において酸素療法は,睡眠の質の改善11,交感神経活性の是正12,心筋障害の抑制13,左室駆出率や運動耐容能の改善は報告されているが,一方で,心血管イベントの減少効果は証明されなかった14

心不全と陽圧呼吸療法

心不全では肺動脈や肺毛細血管圧が上昇し,肺胞への水分漏出を来たす.また,肺間質の浮腫,肺コンプライアンスの低下,気道抵抗の増加を来たし,換気血流比が悪くなる.陽圧呼吸療法により呼気終末陽圧を加えることにより,肺毛細血管からの水分漏出軽減,無気肺・虚脱肺胞の再拡張,機能的残気量の増加,肺コンプライアンスや気道抵抗の改善させる.

一方で,胸腔内圧上昇に伴う静脈還流低下による前負荷軽減15や壁内外圧差低下に伴う相対的左室後負荷軽減16,1回拍出量の増加17も報告されており,CSA-CSBに対する血行動態の改善が期待できる.

CSA-CSB患者のCPAP療法に関して,小規模の無作為介入臨床試験が行われている.Sinらは,心不全患者に対してのCPAP療法の予後への効果を検討した無作為介入臨床試験(計66名)を実施した18.その結果,左室駆出率の改善,心イベント減少,さらに死亡率や心移植術回避生存率の改善が認められた.さらに,CSR-CSA患者に対するCPAP療法の多施設無作為介入試験であるCANPAP試験(計258名)では19,ACE阻害薬やβ遮断薬,ループ利尿薬などの至適薬物療法(Optimized Medical Therapy: OMT)を受けている症候性のHFrEF(Heart Failure with reduced Ejection Fraction,左室駆出率[LVEF]<40%)患者を対象に,CPAP介入群(CPAP+OMT)と観察群(OMTのみ)で比較が行われた.CPAP療法によって,AHIの減少,日中の血漿ノルエピネフリン濃度,夜間酸素飽和度の改善を認めたが,心移植術回避生存率の改善効果は認められず,むしろ最初の18ヶ月までは対照群の方が良好であり,ルーチンにCSR-CSAをCPAPで治療するのは推奨出来ない結果になった.一方で,そのサブ解析では,AHI<15に改善できた患者では,対照群と比較し,心移植術回避生存率の予後は良好であった20

CSAに対するCPAPに関しては,responderとnon-responderが存在することが知られており,CANPAP試験のサブ解析でもCPAP治療下にも関わらずAHI≧15となっていたnon-responderが,約40%存在していた.これらの心移植術回避生存率は対照群と同様,もしくは有意ではないものの,より不良であった.一方で,ASVはこのようなnon-responderのCSAに対する治療として用いることができる.ASVの陽圧は左室の前負荷,後負荷を軽減し,さらに交感神経活性の抑制をもたらすことが報告されている.そのため,日本ではCSAの有無,重症度に関わらず重症心不全の治療として使われてきた.CSAを合併する心不全患者において,ASVが心機能や運動耐用能,さらに心不全患者の予後改善効果を示す少数例の報告はあるものの,より多くの症例を対象とした無作為介入臨床試験は行われていなかった.そこで,CSA優位のSASを合併するHFrEF患者(LVEF<45%)に対するASVの無作為大規模臨床試験として,SERVE-HF試験(計1260名)が実施された21.一次エンドポイントは,総死亡,救命的心血管介入(心移植,補助人工心臓の植え込み,突然心停止後の蘇生または適切な救命的除細動),心不全増悪による予期しない入院であり,二次エンドポイントは,一次エンドポイントのそれぞれの要素に加えてすべての死亡までの時間に設定された.

その結果は,大方の予想に反して一次エンドポイントはASV群と対照群で差はなく,むしろASV群で増加傾向であった.さらに心血管死亡,総死亡はASV群で有意に高値であった.サブ解析においても,LVEF<30%の症例における総死亡,心血管死亡は介入群で不良であった.Eulenburgらは,SERVE-HF試験での死亡率増加に関して解析を行っており,心不全増悪入院に関しての有意差はないものの,心不全増悪入院や救命的心血管介入前の心血管死亡,さらに.救命的心血管介入後の心血管死亡もASV群で増悪していることが判明した22

SERVE-HF試験の結果に関して様々な考察がなされているが,その一つにアドヒアランスの問題点が挙げられた.ASV群で中止が28.8%に登り,継続している患者でも使用時間1時間未満の患者が約30%も占めていた.さらに,対照群の17%が陽圧呼吸療法を受けており,クロスオーバー症例の多さも問題になった.そのため,Intention-to-treat解析では限界があったため,WoehrleらはSERVE-HFのOn-treatment analysisを施行した23.As-treated解析(ASV群でASVを使用した期間はASV,使用していない期間は対照群,対照群でASV使用した期間はASV,使用していない期間は対照群として解析),As-treated-as-randomized解析(ASV群ではASVを使用していない時期を除き,対照群ではASVを使用した時期を除き解析)が施行されたが,いずれもASV群の方が心血管死亡は増加傾向であった.

他にも,共存するOSAも治療するために圧設定が相対的に高くなり,あるいは心不全が改善した患者でも陽圧治療が継続され,その結果,左室前負荷が必要以上に低減され低拍出量となり,交感神経活性が増強し予後不良になったとも考えられた.

CSAの過換気は胸腔内圧を変化させ,静脈還流を増加させるなど,心拍出量を保持するための代償機構であり,ASVはそれを消し去ってしまったために予後不良になったとも議論されている.CSAを合併する心不全患者ではCSRに2つの過呼吸のパターンがあると言われており,Pergerらは,PSGを用いて胸腹部呼吸運動の生体信号を記録してその合計を一回換気量の指標とし,呼気終末換気量が機能的残気量より多ければpositive pattern,少なければnegative patternと定義した.その結果,negative patternのCSRではLVEF,NYHA(New York Heart Association)機能分類,心室利尿ペプチド(B-type Natriuretic Peptide: BNP)がより悪く,negative patternのCSRではより大きい胸腔内圧の変化を生じさせてきることから,代償機構が強く作用していると考えられた24

一方で,睡眠時無呼吸の有無を問わず,慢性心不全患者全体に対するASV介入による心機能改善の効果を検証する多施設無作為化試験として日本ではSAVIOR-C試験が行われた25.症候性のHFrEF患者(LVEF<40%)を対象に,本邦の39施設で213人が登録され,6ヶ月間追跡が行われた.一次エンドポイントをLVEF,二次エンドポイントを心不全増悪,BNP,症状と心不全増悪を複合したclinical composite response(CCR)とした結果,LVEFとBNPに有意差は認められなかったが,CCRではASV群で有意に改善し,さらに観察期間における心イベント回避率もASV群で良い傾向がみられた.この結果から,ASVは心不全におけて有意な効果は得られないが,悪さはせず,自覚症状などの改善には期待できると考えられた.

SERVE-HF以外のASVの大規模臨床試験としてADVENT-HF試験26が進行中で,その結果が待たれる.HFrEF患者(LVEF<45%,AHA stage B-D,AHI≧15)を対象にして,860例を目標に現在も症例登録が進行している.一次エンドポイントは,全死因死亡,心血管疾患に起因する最初の入院,抗凝固薬を要するが入院を必要としない心房細動・心房粗動の新規発現,ICDからの適切なショックで入院に至らない事例という転帰を合わせた累積発生率とされているが,SERVE-HF試験ではアドヒアランス不良によるASV介入群と観察群のクロスオーバーが多かったことを考慮し,アドヒアランス不良例にはASVを中止し,フォローのみが継続されている.また,SERVE-HF試験では圧設定が高い症例(呼気気道陽圧[EPAP]≧10cmH2O,吸気気道陽圧[IPAP]≧20cmH2O)も含まれていたが,過度の前負荷抑制により心拍出量が低下し,交感神経活性が亢進したとも言われていたため,ADVENT-HF試験ではASVの設定をAuto EPAP(4~15cmH2O),PS(0~15cmH2O),IPAP≦20cmH2O,Auto modeとし,CSAだけでなく,OSAも対象に入れている.

SERVE-HF試験はHFrEF患者のみを対象にしていたが,HEpEF(Heart Failure with preserved Ejection Fraction)患者も対象にしたASVの効果を検証する試験として,CAT-HF試験27がある.対象はAHI≧15の21歳以上のADHF患者で,216症例が登録された.ASV介入群(ASV+OMT)と観察群(OMTのみ)に無作為に割り付けられ,一次エンドポイントは,6ヶ月時点での死亡,心血管疾患による入院,6分間歩行の変化率とした.フォローアップ期間は6ヶ月間であったが,SERVE-HF試験の結果を受けて,126例が早期に登録中止となった.6ヶ月間でのAHIはASV群で有意に低下を認めたが,主要項目評価での有意差はなかった.治療とEFとの間に交互作用はなかったが,事前に設定したサブグループ解析では,HFpEFへのポジティブな効果が示唆され,ASVがHFpEF患者の予後改善につながる可能性を示唆している.

ASVやCPAP治療をしていく上では,治療へのアドヒアランスがしばしば問題となっている.実際,SERVE-HF試験で十分な結果を得られなかった原因の一つとして,アドヒアランスの問題点も考えられた.CPAPの使用時間(4-5時間前後)がCPAPの効果の分かれ目であることを示唆する報告が多く,OSAの心筋梗塞や脳卒中28,高血圧29の新規発症はCPAPを4時間以上使用した群では有意に抑制されていた.心不全に関してもCPAPの使用時間を中央値4.9時間で分けると,CPAP治療群で再入院が有意に抑制されていた30.これらの結果を踏まえると,アドヒアランス向上をしていく上で,患者への教育が非常に重要であると考えられる.CPAPからのダウンロードデータ(CPAPの使用日数,使用時間,残存AHI,リークの程度など)を実際に見せながら説明することは,患者へのフィードバックと動機付けになりモチベーションの向上につながる.さらに問題の把握ができ,トラブル対処のヒントにもなる.最新の装置は患者の機器から自動的にクラウドへ情報が集まり,遠隔でデータ管理ができるようになっている.受診間隔の延長によって患者の負担が軽減されることや,CPAPのアドヒアランスデータの把握が容易になることが期待される.

SERVE-HF試験等の結果を受けて,日本循環器学会,日本心不全学会は「心不全症例におけるASV適正使用に関するステートメント」を公表した.ステートメント第2報では,(1)CPAPを優先的に使用すること (2)SERVE-HF 試験の被験者と同じ状態の患者への ASVの導入・継続は禁忌ではないが,慎重を期する (3)HFpEF(LVEF>45%)の患者にはASVの導入・継続を制限する必要はないが,導入・継続後の経過を慎重に観察する必要がある (4)高度なうっ血に対するASV導入例において,導入後6ヶ月を経過した時点でASVからの離脱やASV以外の治療への変更可能か再検討を要する とされている.また,2017年に改訂された急性・慢性心不心不全ガイドライン31でもCSA合併HFpEF患者のASV使用はclass IIaであったが,CSA合併HFrEF患者への使用はclass IIbとなり,心不全安定後もCSA治療での漫然とした継続使用はclassIIIとなった.

また,CSAに対する新たなアプローチとして,横隔神経刺激療法(Phrenic Nerve Stimulation: PNS)も注目されている.片側の横隔神経を経静脈リードにより刺激することでAHIが約50-80%低下し,生活の質や眠気の自覚症状も改善したと報告されているが32,33,34,35,陽圧呼吸療法と異なり,心拍出に与える影響が少ないと考えられるため,今後CSA-HF患者の有効な治療の選択肢となり得るのではないかと期待されている.

おわりに

CSAは心不全に高頻度に合併する.CSA-HF患者においてCPAPを使用すると,短期的にはLVEFが改善しCSAが改善する可能性があるが,長期予後改善効果は明らかではない.ASVは,SERVE-HF試験の結果を受けて,HErEF患者での使用に関しては慎重になるべきだが,一方でHEpEF患者では低心拍出のリスクも少なく,治療の選択肢の一つとなりうる.このように陽圧呼吸療法は,薬物療法と違って,個々の患者における心不全やSASの状態を厳重に観察しつつ,慎重に使用することが重要である.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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