日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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総説
肺高血圧症患者の肺移植前後の現状と課題
天尾 理恵安樂 真樹佐藤 雅昭波多野 将牧 尚孝根本 真理子遠藤 美代子中島 淳篠田 裕介芳賀 信彦
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2021 年 30 巻 1 号 p. 65-70

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要旨

当院は2015年4月より肺移植術を開始し,2018年5月現在,20名に移植術を実施している.これまで理学療法士(PT)は臓器移植患者へのリハビリテーション介入を行ってきた.肺移植候補患者にもPTが介入しており,術前より呼吸機能,身体機能,QOLなどの評価を実施している.

当院では肺高血圧症(PH)外来が開設されている背景もあり,移植登録患者の約2割の患者の原疾患がPHであることが特徴の一つである.他の疾患患者と比較し,術前後のリハビリテーションの介入・進行は一様ではない印象がある.PH患者の治療は,使用可能な薬剤が増加したことで予後は改善傾向にあるが,移植を検討する重症PH患者のリハビリテーションについては明確な指標がないのが現状であり,当院でも症例に応じて対応している.

本稿では,これまで経験したPH肺移植候補患者への介入の実際,身体機能の特徴やADL,QOLの状況をまとめて報告する.

緒言

肺高血圧症(Pulmonary Hypertension: PH)は難治性疾患であるが,近年,治療薬の進歩や治療法の確立により予後は劇的に改善している1.一方で,病状が進行性に悪化し,最大限の薬物治療を行なっても重症化を阻止できない症例に対する根本的治療は,肺移植しかない現状である.本邦の肺移植実施数は年間約60件と漸増傾向にあるが2,移植待機期間は800日を超える状況であり3,肺移植術に向けた長期移植待機期間中の身体機能の維持が重要となる.

本稿では,PH患者のリハビリテーションの現状,および当院での肺移植の現状とPH移植登録候補患者の実際について紹介する.

PH患者のリハビリテーション

1) PH臨床分類と治療

PHの疾患分類は,2013年のWHO主催第5回肺高血圧症ワールド・シンポジウムで提示された再改訂版肺高血圧症臨床分類(ニース分類)が広く用いられており,本邦の肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)にも盛り込まれている4,5表1).第1群の肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension: PAH)は内科的治療,第4群の慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension: CTEPH)は内科的治療や外科的・経カテーテル的治療が主な治療とされている.一方,第1群の肺静脈閉塞性疾患および/または肺毛細血管腫症や,第2群の左心性心疾患に伴う肺高血圧症,第3群の肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症ではPH治療薬の効果や安全性は確立していない現状である.このように臨床分類によってもPH患者の治療方法は異なり,同様に予後も様々である.よって,あらゆる内科的治療に反応しない,また,外科的治療でも十分な改善が得られない患者を含め,WHO肺高血圧症機能分類4)III-IV度の重症患者の根本的治療は肺移植となる.

表1 肺高血圧症臨床分類(肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版))
第1群.肺動脈性肺高血圧症(PAH)
1)特発性肺動脈性肺高血圧症(idiopathic PAH: IPAH)
2)遺伝性肺動脈性肺高血圧症(heritable PAH: HPAH)
 1.BMPR2
 2.ALK1,endoglin,SMAD9,CAV1
 3.不明
3)薬物・毒物誘発性肺動脈性肺高血圧症
4)各種疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症
(associatedPAH: APAH)
 1.結合組織病
 2.エイズウイルス感染症
 3.門脈肺高血圧
 4.先天性短絡性疾患
 5.住血吸虫症
第2群.左心性心疾患に伴う肺高血圧症
1)左室収縮不全
2)左室拡張不全
3)弁膜疾患
4)先天性/後天性の左心流入路/流出路閉塞
第3群.肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症
1)慢性閉塞性肺疾患
2)間質性肺疾患
3)拘束性と閉塞性の混合障害を伴う他の肺疾患
4)睡眠呼吸障害
5)肺胞低換気障害
6)高所における慢性暴露
7)発育障害
第4群.慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)
第1’群.肺静脈閉塞性疾患(PVOD)および/または肺毛細血管腫症(PCH)
第1”群.新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)
第5群.詳細不明な多因子のメカニズムに伴う肺高血圧症
1)血液疾患(慢性溶血性貧血,骨髄増殖性疾患,脾摘出)
2)全身性疾患(サルコイドーシス,肺ランゲルハンス細胞組織球症,リンパ脈管筋腫症,神経線維腫症,血管炎)
3)代謝性疾患(糖原病,ゴーシェ病,甲状腺疾患)
4)その他(腫瘍塞栓,線維性縦隔炎,慢性腎不全)区域性肺高血圧

2) リハビリテーションの実際

PH患者は肺循環の予備能がすでに破綻しており,運動時の心拍出量増加によって肺動脈圧が急激に上昇する.その結果,右心負荷が増加し心拍出量が確保できず,末梢組織への酸素供給が不足するため運動耐容能が低下し,病状が進行し右心負荷が増大すると,経過とともにADL能力の低下をまねく6,7.よって,PH患者の運動療法では,循環・呼吸の両側面に十分配慮した上で原疾患の悪化が起こらないようリスク管理を行い,実施する必要がある.

PH患者のリハビリテーションは治療の進歩とともに発展しており,運動療法により効果が得られるとの報告が散見される6,8,9,10.Grüningら8は,膠原病や先天性心疾患に関連したPAH,CTEPHにおけるコホート研究で,膠原病性PAH,CTEPH患者ではトレーニング後に6分間歩行距離(6 minutes walking distance: 6MWD)やQOL,生存率の改善がみられたとしている.また,種々の病因要素をもつPAH患者を対象とした研究でも運動トレーニングの有効性が認められたが,重症患者では急性気道感染による症状の悪化や失神を呈しており,PAHのリハビリテーションプログラムは注意深く管理して行うべきだとしている8.肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)4ではIPAH/HPAHの一般的対応に関する推奨とエビデンスレベルの中で,薬物治療により安定状態にある中等症以下の肺高血圧症に対して経験の豊富な施設において監視下で実施する運動療法は,推奨クラスIIb,エビデンスレベルBの推奨度とされている.重症度が高い患者ほど過負荷による症状増悪や合併症を引き起こすリスクは高く,薬物療法により循環動態が安定していれば運動療法を考慮してもよいが,バイタルサインの監視のもと過度にならないよう慎重に実施するべきである.PH患者リハビリテーションの中止基準を表2に示した11.WHO肺高血圧症機能分類I-II度の比較的軽症な患者に対しては,示した基準で概ね安全にリハビリテーションを実施することが可能と思われるが,WHO肺高血圧症機能分類III-IV度の重症度が高い患者には,一概に適応できないことを念頭におく必要がある.

表2 PH患者の運動中止基準
自覚症状①開始前の倦怠感
②実施中のBorg15(きつい)以上の呼吸困難
③胸痛
他覚的所見実施中,ふらつき・チアノーゼ
心拍数①開始前 ≧110bpm
②実施中 ≧120bpm
血圧①開始前 収縮期血圧≦80mmHg
②実施中 10mmHg以上の低下
SpO2①開始前 ≦94%
②実施中 ≦85%
不整脈上室性および心室性不整脈の出現,有意な増加
合併症浮腫増悪,心不全悪化,肺胞出血,筋肉痛

(文献10より一部改変)

このように,重症患者の運動指標は明らかではなく,国内では特に肺移植を待機する重症PH患者のリハビリテーションの可否や活動性について,治療医によって見解は様々である.原疾患の悪化を防ぐためにADLの制限が課せられることも少なくない.運動療法に伴い,症状の増悪をきたすことはリハビリテーションの目的とは相対する結果であり,最も避けなければならないが,本邦重症PH患者における運動療法の知見はほとんどない.今後,移植施設を中心としたPH治療施設において,指標の作成につながる知見の蓄積が必要であり,肺移植待機患者が移植手術を乗り越えられる体力の維持と,術後リハビリテーションに取り組める状態を維持できることが目標となる.重症患者ほどリハビリテーションは一様に進めることは困難であり,患者の状態,運動療法に伴う変化を確認しつつ,オーダーメイドでプログラムを作成することが求められる.移植施設は限られており,登録施設で全登録患者の術前のリハビリテーションを行うことは難しい現状である.重症PH患者にとっては過負荷が状態の悪化を招きうることから,紹介元病院やPH専門医が勤務する施設で,PH疾患を理解した理学療法士による心臓リハビリテーションの継続が望まれる.

当院肺移植の現状

1) 移植および登録評価実績

当院は2015年に肺移植実施施設として認定された.肺移植術は2021年7月末現在,86名に実施しており,8名のPH患者が移植に至っている.理学療法士は移植前(移植登録評価入院時),また,移植術後6・12・24ヶ月に,身体機能,QOLなどの評価を全患者に行なっている(表3).2018年12月現在,129人の患者に肺移植登録評価を行っており,うち31名がPH患者である.

表3 肺移植(登録)患者評価項目 (東京大学医学部附属病院)
身体機能筋力:膝伸展筋力,握力,5回反復起立時間
6分間歩行距離
バランス:Functional reach test,片脚立位時間
ADL:長崎大学呼吸器日常生活活動評価表
(The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire: NRADL)
呼吸・嚥下機能Eating Assessment Tool-10(EAT-10)
最長呼気持続時間
QOL健康関連QOL:SF-36

2) 移植前登録評価患者の実際

2018年12月末までの当院PH移植前登録評価患者は,WHO肺高血圧症機能分類II度が26名,III度が5名,全例が2剤以上のPH治療薬を用いた治療を実施しているが,平均肺動脈圧(平均±SD)は 55.2±14.9 mmHgと高値であった.31名中2名は原疾患の悪化で当院にて入院加療を行なったため,リハビリテーションを実施したが,その他の患者に関しては移植前登録評価入院時の運動指導後,外来でのリハビリテーションは実施できていない状況である.

a) 心肺機能に関与する因子の検討(表45:未公開データ)

2015年2月-2017年10月までに当院で移植前登録評価入院をし,身体機能・ADL能力評価が可能であったPH患者15名に対し,6MWDと筋力(膝関節伸展筋力,握力,5回反復起立時間),バランス能力(Functional Reach Test(FRT),片脚立位保持時間),PH重症度指標(平均肺動脈圧(mPAP)),PH治療(非経口プロスタノイド投与量(PGI2)),酸素投与量の関連を検討した.単変量解析の結果,膝伸展筋力(p=0.0350),握力(p=0.0153),FRT(p=0.0207)が6MWDと有意な関連を認めた.

6MWDはベースラインにおいて血行動態指標と密接な関連があり,多くの臨床試験において主要エンドポイントとして用いられているが,Savareseら12は22の臨床試験を用いたメタ解析で,治療による6MWDの変化が臨床イベントを予測できていなかったと報告している.本検討でもPH重症度判定項目であるmPAPと6MWDとの有意な関連は認められず,筋力・バランスといった身体機能が関連因子として抽出されたことから,重症PH患者は治療によりmPAP値が改善できても,身体機能を維持できなければ運動耐容能は改善できない可能性があることが示唆された.

表4 対象者背景
平均±SD
性別 男:女5:10
年齢(歳)27±10
原疾患特発性12
膠原病性2
遺伝性1
WHO肺高血圧症機能分類II度2
III度3
BMI19.6±2.1
6分間歩行距離(m)466.7±109.7
平均肺動脈圧(mmHg)53.5±12.6
非経口プロスタノイド投与量(ng/kg/min)107.8±75.7
酸素投与量(L)2.1±0.5
膝伸展筋力 (Nm/kg)1.2±0.4
握力(kg)23.1±7.9
5回反復起立時間(秒)9.7±2.7
Functional Reach Test(cm)32.1±7.5
片脚立位時間(秒)51.4±17.1

表5 結果:6分間歩行距離と身体機能・肺高血圧症重傷度の関連
rP値
平均肺動脈圧(mmHg)0.130.6341
非経口プロスタノイド投与量(ng/kg/min)-0.250.3628
酸素投与量(L)0.090.7453
膝伸展筋力 (Nm/kg)0.550.0350
握力(kg)0.610.0153
5回反復起立時間(秒)-0.090.7376
Functional Reach Test(cm)0.590.0207
片脚立位時間(秒)0.240.3998

b) QOLと疾患重症度の関連(表4678:非公開データ)

2015年2月-2017年10月までに当院で移植前登録評価入院をし,身体機能・ADL能力評価が可能であったPH患者15名に対し,移植前登録評価入院時のQOL(健康関連QOL:SF-36v2® 13)とPH重症度指標(mPAP,6MWD),およびPGI2投与量,ADL(長崎大学呼吸器日常生活活動評価表(The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire:以下,NRADL))との関連を検討した.QOLのうち国民標準値を上回ったのは下位項目8項目中2項目,3コンポーネントサマリースコアでは1項目のみであり,双方ともに身体的側面の項目で低い傾向にあった(図1a,b).単変量解析でmPAPと有意な関連因子として抽出されたのは,日常役割機能(身体)(p=0.0166),日常役割機能(精神)(p=0.0391),役割/社会的側面のQOL(p=0.0135)だった(表6).PGI2投与量と有意な関連因子として抽出されたのは,体の痛み(p=0.0358)だった(表7).ADLと有意な関連因子として抽出されたのは,身体機能(p=0.0002),全体的健康感(p=0.0418),身体的側面のQOL(p=0.0106)であった(表8).6MWDとの関連はなかった.

図1

QOLスコア(SF-36v2®)平均値

表6 結果:平均肺動脈圧とQOLの関連
rP値
下位尺度身体機能-0.160.5362
日常役割機能(身体)-0.560.0166
体の痛み0.130.6047
全体的健康感-0.400.1003
活力-0.440.0664
社会生活機能-0.420.0865
日常役割機能(精神)-0.490.0391
心の健康-0.340.1742
3コンポーネント
サマリースコア
身体的側面のQOL0.150.5503
役割/社会的側面のQOL-0.570.0135
精神的側面のQOL-0.250.3171

表7 結果:非経口プロスタノイド投与量とQOLの関連
rP値
下位尺度身体機能-0.220.3819
日常役割機能(身体)-0.170.5020
体の痛み-0.500.0358
全体的健康感-0.080.7551
活力-0.100.7068
社会生活機能-0.100.7027
日常役割機能(精神)-0.290.2511
心の健康-0.340.1740
3コンポーネント
サマリースコア
身体的側面のQOL-0.190.4387
役割/社会的側面のQOL-0.170.4937
精神的側面のQOL-0.210.4062

表8 結果:ADLスコアとQOLの関連
rP値
下位尺度身体機能0.760.0002
日常役割機能(身体)0.170.5119
体の痛み0.190.4412
全体的健康感0.480.0418
活力0.070.7710
社会生活機能0.250.3165
日常役割機能(精神)0.250.3088
心の健康0.220.3880
3コンポーネント
サマリースコア
身体的側面のQOL0.590.0106
役割/社会的側面のQOL0.130.6015
精神的側面のQOL0.110.6729

血行動態の重症度が高い,すなわちmPAPが高値であると日常役割機能(身体・精神),役割/社会的側面のQOLが低く,PGI2高用量投与に伴う体の痛みがQOL低下の要因であるという結果であり,今後,PHの重症度に応じた社会的役割の適正化を医療チームでサポートしていくこと,疼痛管理を中心に十分な副作用対策が重要であると考える.また,身体的側面のQOLと6MWDは相関を認めず,ADLが身体機能および身体的側面のQOLとの相関を認めた.この結果から,身体機能が保たれているという自覚のある患者のADLは維持できている可能性が考えられる.6MWDだけでは心身の健康度を測ることは困難であるが,実生活におけるADL能力と合わせて心肺機能の評価結果を総合的に検証していくことが,QOL維持に必要であることが示唆された.

Mathaiら14はIPAH,CTD-PH 87名のQOLと予後との関連を調査し,身体的側面のQOL高値群で有意に6MWDが長く,予後が良いと報告している.この研究対象者で多剤併用療法を実施していた患者は全体の1割程度であり,高容量の多剤併用療法を実施している当院の対象患者と治療背景が大きく異なっている.先行研究の解析結果をあてはめると,当院の移植登録評価患者の予後は良好と予測されるが,長期待機が強いられる肺移植の現状を背景とした本邦の多剤・多量の併用療法の現状を踏まえ,独自の患者サポート体制の構築が必要である.

3) 当院における肺移植後リハビリテーションの取り組み

PAH患者は術後,右心不全の解除に伴い,右心から左心への循環血液量が増加することで,二次的な左心不全を呈する可能性があるため,術後は呼吸管理と並行して循環の管理が重要となる.同様にリハビリテーションも十分に循環動態へ配慮して実施する必要があり,特に後負荷の上昇による左心不全増悪には注意が必要である.離床に伴い後負荷の過度な上昇を認める患者に対しては,緩徐に運動負荷をあげ,離床を進めるよう配慮している.2018年12月末までに当院で移植に到達した3名のPH患者は,全例,術後補助循環治療が行われ,離床は術後7-23日,歩行は術後24-38日に開始した.当院では呼吸・循環へ配慮して安全・効果的に急性期のリハビリテーションを進行できるよう,安静度確認表を作成し運用している.ICU滞在期間中は毎日,患者の状態に合わせリハビリテーション実施可能なステップ(全11ステップ:リハビリテーションのステップは坐位6段階,立位2段階,歩行3段階と詳細に区分しており,緩徐に運動負荷を上げるよう設定)を担当医師が判断し,呼吸・循環の各評価項目の実施基準内で進められているかをリハビリテーション前後,実施中に評価する.評価表により可視化することで,理学療法士が不在の時にも安全にリハビリテーションが実施できること,また,継時的にリハビリテーションの経過・内容を把握することが可能であり,有効に運用できている.3名とも歩行までリハビリテーションが進行できた後は順調に運動量を増加でき,ADLは全自立しNRADLは術前よりも向上,1日5,000歩程度の体力を獲得し,術後3ヶ月以内に退院に至っている.3名と少ない症例数ではあるが,歩行を開始した術後1ヶ月程度で呼吸・循環動態は安定傾向にあり,積極的なリハビリテーションの実施が可能であった.また,術後3ヶ月程度で日常生活に支障のない体力が獲得できたが,退院時,1名は移植前登録評価入院時の下肢筋力には到達しておらず,運動継続の必要性が示唆された.

まとめ

長期待機を強いられる本邦の肺移植待機PH患者では,身体機能維持を目的としたリハビリテーションを継続することが重要である.しかし,重症PH患者においてはリハビリテーション実施可否の指標は明確でなく,患者の状態に応じた対応が必要である.移植待機PH患者は治療継続による原病増悪の防止に加え,筋力維持が運動耐容能の維持には重要であり,ADL能力の維持がQOL維持につながる可能性が示唆された.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

波多野 将;寄付講座(日本新薬,持田製薬,アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン)

文献
 
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