2023 年 32 巻 1 号 p. 40-44
近年,集中治療領域において,早期離床加算の新設やエキスパートコンセンサスの策定,PADISガイドラインの発表等の影響を受けて,早期離床の実施が注目されている.その中でも,挿管・人工呼吸患者に対する歩行練習は,歩行能力の改善や基本的な日常生活動作(activities of daily living: ADL)再獲得に寄与する可能性があると言われている.一方で,安全面や教育システム不足,マンパワー不足を始めとする環境面の問題もあり,その実施率は十分に高くない現状もある.加えて,本邦における早期離床の対象は高齢・低ADL患者が多くを占めるため,海外の歩行練習を含む早期離床に関する報告をそのまま適応することも難しい背景を有する.本稿では,挿管・人工呼吸患者に対する歩行練習の現状と課題を確認した上で,歩行練習を実施しないという立場から歩行練習が抱える問題を提示し,代替的な運動介入方法の可能性や今後の展望について概説する.