挿管・人工呼吸管理中における早期離床は活発に行われているが,歩行練習に限定した効果は明らかではなく,安全性への懸念や医療者側・患者側の様々な障壁により実施できていないことも多い.しかし,挿管中の歩行練習は安全に実施可能であり,障壁に対する対策を行えば実現可能性は高い.また,集中治療室在室中の動作能力は自宅退院の関連因子であることが報告され,離床以外の付加的なリハビリテーションの効果が明らかになっていないことから,歩行を含めた離床を基本とすることが重要であると考えられる.歩行練習は動作能力の獲得だけでなく活動能力低下に対する不安の解消,達成感の獲得による現治療に対するモチベーションの維持・向上など,精神心理面へのメリットは大きく,家族ケアの一助となる.挿管・人工呼吸管理中の歩行練習は,様々な障壁や不明点はあるものの同時に多くのメリットも存在するため,実施を推奨したい.