日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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原著
肺癌手術患者における入院期間中の運動耐容能改善は術後1ヶ月の運動耐容能に影響する
木戸 孝史 奥野 将太白土 健吾川満 謙太大神 汰一小須田 シオン樋口 卓哉三宅 彩音安田 学山下 智弘
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2024 年 32 巻 3 号 p. 342-347

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要旨

【目的】肺癌手術患者における入院期間中の運動耐容能改善が,術後1ヶ月の運動耐容能に影響を与えるか検証した.

【方法】対象は,非小細胞肺癌に対して肺葉切除術を施行した105例.入院期間中の6分間歩行距離(以下,6MWD)の変化量(退院前 6MWD-術前 6MWD:以下,入院中Δ6MWD)が,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無に影響を与えるか,多重ロジスティック回帰分析を実施した.また,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の可否に関する入院中Δ6MWDのROC曲線を描写した.

【結果】入院中Δ6MWDは,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無に影響を与える独立因子であり,カットオフ値は-17 mであった.

【結語】肺癌手術患者における入院期間中の運動耐容能改善は,術後1ヶ月での術前運動耐容能への回復に影響を与えることが示唆された.また,退院前 6MWDが術前 6MWDから-17 m以内に改善することで,術後1ヶ月に術前 6MWDへの回復を予測する可能性がある.

緒言

非小細胞肺癌は,臨床病期I~II期では外科手術が標準治療である1.非小細胞肺癌に対する外科手術は,非外科手術患者と比較して生存率の改善に貢献している2.その一方で,術後に身体機能が低下する3,4,5,6,7ことが知られている.身体機能の中でも特に運動耐容能は,術後から半年経過後も低下を認める4,5,8,9,10.運動耐容能は,非小細胞肺癌患者の長期生存率に強く影響を与える独立因子であり11,術後のさらなる低下は生活の質(quality of life:以下,QOL)の低下と関連している12.術後1ヶ月までに運動耐容能の改善が乏しい場合,中長期まで運動耐容能の低下が遷延化する可能性がある13とされているため,生命予後やQOLの早期改善には,運動耐容能を早期に改善させる必要がある.

肺癌術後早期の運動耐容能には,術前運動耐容能14や術前肺機能10,15,術後合併症,胸腔ドレーン留置期間15などが影響を与えると報告されているが,これらは術後の理学療法介入では修正が困難な因子である.癌患者の運動耐容能評価には6分間歩行距離(six-minute walk distance:以下,6MWD)が用いられ16,肺癌術後4日目には術前の約7割まで低下を認める5.術後の運動耐容能低下を最低限に留めるには,入院期間中の理学療法介入が有効であり9,17,可及的に運動耐容能を改善させることが術後リハビリテーションの目的のひとつである18.しかし,入院期間中である術後早期から退院までの運動耐容能の改善が,退院後の運動耐容能に影響を与えるか明らかにされていない.

肺癌手術患者において,入院期間中である術前と退院までの運動耐容能の変化が,術後1ヶ月での術前運動耐容能への回復の有無に影響を与えるのか,また,術後1ヶ月での術前運動耐容能への回復の可否を予測する退院前運動耐容能のカットオフ値はどの程度を示すのか.我々はこの2つの臨床的疑問に答えるため,肺癌手術患者に対する後方視コホート研究を企図した.

対象と方法

1. 対象

対象の適格基準は2019年4月から2022年6月の期間に,当院呼吸器外科で非小細胞肺癌に対して肺葉切除術を施行した連続症例とした.除外基準は,1)肺癌病期分類IV,2)術後に他疾患の加療を要した,3)術後の人工呼吸器離脱に期間を要した,4)6分間歩行試験(six-minute walk test:以下,6MWT)の測定が困難であった,またはデータの欠損があった症例とした.本研究はヘルシンキ宣言に基づいた研究であり,対象者の保護に十分注意し,実施にあたり飯塚病院倫理委員会の承認(承認番号:23049)を得て行った.

2. 要因とアウトカム

本研究の要因とアウトカムには,癌患者において運動耐容能の評価に有効であるとされている 6MWT16を用いた.6MWTは米国胸部学会が推奨している方法19により術前,退院前,術後1ヶ月の3時点で実施し,6MWDを測定した.

要因は,入院期間中における 6MWDの変化量とし,退院前 6MWDが術前 6MWDからどの程度変化したかを検証するため,退院前 6MWDから術前 6MWDを引いた変数(以下,入院中Δ6MWD)を作成した.アウトカムは,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無とし,術後1ヶ月 6MWDが術前 6MWD以上の場合を回復群,術前 6MWD未満の場合を非回復群に群分けした.

3. その他の調査項目

その他の調査項目は,診療録やDPCデータより後方視的に収集した.基本情報は,年齢,性別,身長,体重とした.医学的情報は,肺活量,%肺活量,1秒量,1秒率,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:以下,COPD)の診断有無,チャールソン併存疾患指数(charlson comorbidity index:以下,CCI),肺癌病期分類,術前の血清アルブミン(albumin:以下,Alb)とした.手術因子や術後経過に関する因子は,術式,切除部位,出血量,麻酔時間,胸腔ドレーン留置期間,術後合併症,在院日数とした.収集した情報から術後合併症の評価にClavien-Dindo分類20を引用し,合併症の加療を要したII以上を合併症有,加療を要さなかったII未満を合併症無と分類した.対象者の栄養評価のため,体格指数21(body mass index:以下,BMI)は体重(kg)/身長(m)2,geriatric nutritional risk index22(以下,GNRI)は14.89×Alb(g/dl)+41.7×体重(kg)/標準体重(kg)の計算式を用いて算出した.術後1ヶ月 6MWDが術前 6MWDからどの程度変化したかを検証するため,術後1ヶ月 6MWDから術前 6MWDを引いた変数(以下,術後1ヶ月Δ6MWD)を作成した.

4. 理学療法の内容

周術期の理学療法は,当院のクリニカルパスに導入されているリハビリテーションプロトコルに沿って実施された.手術当日までに術前評価や術後に向けたオリエンテーション,呼吸練習,排痰練習,除痛指導,起居動作練習などを実施した.術後は手術翌日よりリスク管理の下,呼吸練習や排痰練習,除痛指導を行い,端坐位や起立練習などの基本動作練習から開始した.全身状態が良好であり歩行が可能であった場合,1日目に 30 m,2日目に 300 mを目標とした術後2日間のプロトコルに沿って,1日2回の頻度で歩行練習を実施した.術後3日目から退院前日まではリハビリ室へ移動し,機器を用いた筋力増強運動や有酸素運動,日常生活や社会環境に合わせた動作練習,生活指導など1日40~60分間行った.運動療法は,カルボーネン法による60~80%の運動強度に合わせた目標心拍数,または修正Borgスケールの2~4を目標とした,運動負荷量を設定した.

5. 統計解析

データ表記に関して,連続変数は正規性の有無を確認し,正規性がある場合を平均値±標準偏差,正規性が無い場合を中央値[四分位範囲],カテゴリー変数は対象者数(%)で示した.統計解析は,まず回復群と非回復群の2群間で対象者の各調査項目を比較した.2群間の比較に,連続変数は正規性がある場合を対応のないt検定,正規性が無い場合をMann-Whitney U検定,カテゴリー変数はχ2検定またはFisherの正確確率検定を用いて実施した.多変量解析には,多重ロジスティック回帰分析を用いて実施した.目的変数は術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無,説明変数は先行研究を参考に年齢,性別,術前 6MWD14,胸腔ドレーン留置期間15,23,入院中Δ6MWDとした.その後,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の可否に関する入院中Δ6MWDのReceiver Operatorating Characteristic curve(以下,ROC曲線)を描写し,感度と特異度の和が最大になる点でカットオフ値,Area Under the Curve(以下,AUC)を算出した.すべての統計解析は,R commanderの修正版であるEZR24を用いて実施した.有意水準は5%とした.

結果

1. 対象者の背景

対象者の特性を表1に示す.研究期間内に適格基準を満たした症例は237名であった.そのうち,肺癌病期分類IVの2名,術後に他疾患の加療を要した4名,術後の人工呼吸器離脱に期間を要した2名,6MWTの測定が困難であった,およびデータの欠損があった124名を除いた105名を解析対象とした.年齢の中央値は71.0歳[68.0,76.0],男性は57名(54.3%),回復群は47名(44.8%)であった.アウトカムの2群間では,回復群は年齢が低く(p=0.016),出血量が少なく(p=0.032),胸腔ドレーン留置期間が短かった(p=0.036).

表1 対象者の特性

FactorGroup全体
n=105
回復群
n=47
非回復群
n=58
p値
基本属性
年齢,歳71.0[68.0, 76.0]69.0[63.0, 74.0]72.0[69.3, 76.0]0.016*
性別57(54.3)23(48.9)34(58.6)0.34
BMI,kg/m2低体重10(9.5)4(8.5)6(10.3)0.76
普通体重61(58.1)26(55.3)35(60.3)
肥満34(32.4)17(36.2)17(29.3)
GNRIリスク無82(78.1)41(87.2)41(70.7)0.075
軽度14(13.3)4(8.5)10(17.2)
中等度5(4.8)0(0.0)5(8.6)
重度4(3.8)2(4.3)2(3.4)
CCI≧211(10.5)3(6.4)8(13.8)0.34
COPD診断8(7.6)3(6.4)5(8.6)0.73
肺癌病期分類I62(58.1)31(66.0)31(53.4)0.076
II30(28.6)14(29.8)16(27.6)
III13(12.4)2(4.3)11(19.0)
肺活量,L3.01±0.793.02±0.743.00±0.830.87
%肺活量,%99.7±16.5101.0±16.798.7±16.40.48
1秒量,L2.04[1.60, 2.56]2.09[1.73, 2.59]1.95[1.57, 2.54]0.40
1秒率,%71.8[66.9, 77.4]72.0[68.1, 78.6]71.37[65.2, 76.1]0.127
手術因子
術式開胸19(18.1)6(12.8)13(22.4)0.31
胸腔鏡86(81.9)41(87.2)45(77.6)
切除部位左上葉21(20.0)8(17.0)13(22.4)0.88
左下葉14(13.3)7(14.9)7(12.1)
右上葉36(34.3)17(36.2)19(32.8)
右中葉7(6.7)4(8.5)3(5.2)
右下葉27(25.7)11(23.4)16(27.6)
出血量,ml60.0[30.0, 148.0]50.0[20.0, 126.0]82.5[35.0, 186.3]0.032*
麻酔時間,分301.0[258.0, 355.0]293.0[250.5, 334.0]307.5[264.0, 358.0]0.086
術後経過に関する因子
胸腔ドレーン留置期間,日1.0[1.0, 3.0]1.0[1.0, 2.5]2.0[1.0, 4.0]0.036*
Clavien-Dindo分類該当無し87(82.9)41(87.2)46(79.3)0.30
I4(3.8)0(0.0)4(6.9)
II3(2.9)1(2.1)2(3.4)
IIIa10(9.5)4(8.5)6(10.3)
IIIb1(1.0)1(2.1)0(0.0)
合併症14(13.3)6(12.8)8(13.8)1.00
在院日数,日11.0[8.0, 14.0]10.0[8.0, 12.5]11.5[9.0, 15.0]0.073

n(%),中央値[25-75%].

*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001.

BMI: body mass index(体格指数),GNRI: Geriatric Nutritional Risk Index,CCI: Charlson Comorbidity Index,COPD: chronic obstructive pulmonary disease(慢性閉塞性肺疾患), Clavien-Dindo分類:術後有害事象および重症度分類,6MWD: six-minute walk distance(6分間歩行距離).

対象者の運動耐容能を表2に示す.回復群は術前 6MWDが低値であり(p=0.006),術後1ヶ月 6MWD(p=0.028),入院中Δ6MWD(p<0.001)が高値であった.

表2 対象者の運動耐容能

6MWD全体回復群非回復群p値
n=105n=47n=58
術前 6MWD,m439.6±80.4415.7±85.6458.9±80.00.006**
退院前 6MWD,m401.3±83.7413.6±88.4391.4±79.00.170
術後1ヶ月 6MWD,m427.6±82.5447.1±83.6411.8±78.60.028*
入院中Δ6MWD,m-38.2±59.9-2.1±44.6-67.6±54.7<0.001***
術後1ヶ月Δ6MWD,m-12.0±55.731.3±27.4-47.2±47.4<0.001***

平均値±標準偏差.

*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001.

6MWD: six-minute walk distance(6分間歩行距離).

2. 術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無と入院中Δ6MWDの関連

多重ロジスティック回帰分析の結果を表3に示す.入院中Δ6MWDは,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無と独立して関連していた(オッズ比:1.03,95%信頼区間:1.01-1.04,p<0.001).

表3 術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無に関する多重ロジスティック回帰分析

オッズ比95%信頼区間p値
上限下限
年齢0.860.790.94<0.001***
性別(男)0.430.141.320.140
術前6MWD0.990.980.990.019*
胸腔ドレーン留置期間0.820.631.070.141
入院中Δ6MWD1.031.011.04<0.001***

*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001.

6MWD: six-minute walk distance(6分間歩行距離),入院中Δ6MWD:退院前6MWD-術前6MWD.

3. 術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の可否を予測する入院中Δ6MWDのカットオフ値

ROC曲線を描写した結果を図1に示す.術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の可否を予測する入院中Δ6MWDの最適なカットオフ値は,-17 m(感度:91.4%,特異度:70.2%,AUC:0.83)であった.

図1 術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の可否に関する入院中Δ6MWDのROC曲線

Sensitivity:感度,specificity:特異度.

考察

我々は,肺癌手術患者において,入院期間中の術前から退院までの 6MWDの変化が,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無に影響を与えるか検証した.その結果,2つの知見が得られた.第1に,入院中Δ6MWDは,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無に影響を与えた.第2に,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の可否を予測する入院中Δ6MWDのカットオフ値は-17 mであった.

1. 術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無と入院中Δ6MWDの関連

入院中Δ6MWDは,術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の有無に影響を与えた.Burtinら25は,1年以内に肺癌手術を受けた患者において,術後の下肢筋力が同時点の運動耐容能への独立因子であったと報告している.本研究では,術後早期である入院期間中においても,先行研究と同様,身体機能の改善が運動耐容能に重要であることを示した.肺癌手術患者は,健常成人と比較して身体活動性が低下する26とされ,退院後の運動耐容能と身体活動性の間には相関関係がある4,6としている.そのため,入院期間中に運動耐容能の改善が不十分であった場合,入院前の身体活動性を維持出来ず,さらに運動耐容能を低下させる恐れがある.それに対し,肺癌術後の入院期間中に理学療法介入することで,術後早期の運動耐容能低下を最低限に留め9,17,身体活動性の改善に有効である4,5と報告されている.つまり,入院期間中に可及的な運動耐容能の改善に努めることで,退院後の身体活動性を向上させ,術後早期に術前運動耐容能への回復を支援する可能性がある.

2. 術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の可否を予測する入院中Δ6MWDのカットオフ値

術後1ヶ月での術前 6MWDへの回復の可否を予測する入院中Δ6MWDのカットオフ値は-17 mであった.Oikawaら15は,術前と術後7日目のΔ6MWDが-45 mであったと報告した.本研究全体の入院中Δ6MWDは-38.2 mであり,先行研究と大きな差異がなかった.そのため,本研究の対象は母集団から逸脱した集団ではなく,今回算出されたカットオフ値は肺癌手術患者の一般化に適用可能な値であると考える.先行研究では,肺癌やCOPD患者における 6MWDのminimal clinically important differenceを検証するため,アンカー法を用いて 6MWDのカットオフ値を算出している27,28.Grangerら27は,化学療法や放射線治療を施行する肺癌患者において,身体機能悪化を予測する治療開始から10週経過時の 6MWDのカットオフ値は,治療前から-42 mであり,AUCは0.66であったと報告した.また,Hollandら28は,外来呼吸リハビリテーションを施行するCOPD患者において,歩行能力改善を予測する介入開始から7週経過時の 6MWDのカットオフ値は,介入前から24.5 mであり,AUCが0.83であったと報告した.治療方法や対象が異なるため一概に比較できないものの,身体機能を予測する 6MWDのカットオフ値を検証した点は,本研究と類似している.本研究で描写したROC曲線のAUCは0.83であり,先行研究と比較して予測能が同等から軽度高い結果であった.また,AUCが0.8から0.89の間に分布していることは良好な予測能である29とされ,算出されたカットオフ値は臨床的意義のある有用性の高い報告であると考える.今回,術後早期かつ簡便に評価可能である入院中Δ6MWDを用いてカットオフ値を算出したことや,運動療法により修正可能な因子に着目したことは,本研究において強調すべき点である.

3. 本研究の限界と意義

本研究の限界は,第1に単施設による後方視的研究でありサンプルサイズが小さいため,交絡因子の調整が不十分である可能性や対象者の背景因子が回復群,または非回復群のどちらかに偏りがある可能性がある.本研究の多変量解析に投入した説明変数は,先行研究で報告されている因子や多重共線性を考慮して選択することで,可能な限り交絡因子の調整に努めた.第2に本研究は前向きな研究ではないため,非回復群の中には様々な要因により,入院期間中の運動耐容能改善を阻害した可能性がある.在院日数が短縮傾向にある肺癌手術では,入院期間中の可及的な運動耐容能改善のため,理学療法プログラムを再考することが重要な課題である.

本研究は,肺癌手術患者の入院期間中である術前と退院までの運動耐容能の変化が,術後1ヶ月での術前運動耐容能への回復の有無に影響を与えるか検証した最初の論文である.今回,術後1ヶ月以内に術前以上の運動耐容能が必要である場合,入院期間中に運動耐容能を改善させる重要性を示した.また,術後1ヶ月に術前運動耐容能への回復を予測する退院前の指標を提示できたのは,退院後の運動耐容能改善に向けた運動指導や患者教育,外来リハビリテーションなどを検討する重要な指標になり,医療従事者だけでなく患者自身にとっても有益な情報になり得る.今後は,入院期間中の運動耐容能改善が術後1ヶ月以降の中長期的な運動耐容能に影響を与えるのか,また,入院期間中の運動耐容能改善に影響を与える要因がなにか検証する必要がある.

4. 結論

肺癌手術患者における入院期間中の運動耐容能改善は,術後1ヶ月での術前運動耐容能への回復に影響を与えることが示唆された.また,退院前 6MWDが術前 6MWDから-17 m以内に改善することで,術後1ヶ月に術前 6MWDへの回復を予測する可能性がある.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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