日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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シンポジウム
喘息コントロールの評価…ACTの視点から
平松 哲夫伊藤 光
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2025 年 35 巻 1 号 p. 25-27

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要旨

喘息治療は,個人個人の特徴を如何に的確に捉え,メリハリをつけてより高いレベルに持っていく時代になった.その中で,より正確な評価が必要とされており,ACT(Asthma Control Test:喘息コントロールテスト)はその中心にあるものの一つではあるが,それだけでは完璧ではなく,多面的な評価がより正確で無駄のない治療へ導き,強いてはそれが喘息をコントロールする時代から,「Remission」を目指せる時代になった.まだまだ薬剤の中止が可能な完全な寛解への道は遠いと思われるが,「Total control」ではなく,「Remission」という言葉を自信を持って「寛解」と使用できるようになるために,また治療可能なTraitsを個別に評価する時代だからこそ,問診や聴診から始まり,スパイロメトリーやピークフローメーターによる変動性気流制限の確認,FeNO(呼気中一酸化窒素)や末梢好酸球数による気道炎症の確認,強制オシロメトリー法による呼吸抵抗の異常などを多面的かつ総合的なアプローチが必要だと考える.

緒言

喘息が気道炎症と定義されてから既に30年が経つ.しかし,この一般的に知られた疾患にもかかわらず,疾患の定義は具体的な数値などを欠いており,また炎症を直接測定する方法にも限界がある.そのため,日常診療においては,どのように評価し,どのように治療し,どこまで進めるべきかについて悩むことが少なくない.現在,ステップワイズでの治療ガイドラインが一定の成果を上げており,その中で「Treatable Traits」という古くて新しい考え方が導入され,治療の個別のターゲットが明確化されている.これからは,単に症状のコントロールを追求するのではなく,より進んだ「Remission」を目指す時代がやってきた.そのため,喘息の評価を再評価することは非常に重要である.

ACTによる喘息コントロールの評価

喘息予防・管理ガイドライン2021では,喘息診断・管理の指標としてスパイロメトリー,PEF(ピークフロー),喘息日誌,ACQ(Asthma Control Questionnaire)やACTなどの質問表,喀痰中好酸球比率,気道過敏性,FeNO(呼気中一酸化窒素),末梢血好酸球数などが示されている1.ACTは米国のQuality Metric社が開発した質問票で,喘息コントロールの状態を患者自身が簡便に評価できる2.症状が3項目,発作治療薬使用と総合評価が各1項目であり,「日常生活への影響」,「息切れ」,「夜間症状」,「発作治療薬の使用頻度」,「喘息コントロール状態の自己評価」の5つの簡単な質問に対して最近4週間のコントロール状態を患者自身が回答するツールである.ACTスコアは25点満点で,その合計点に応じて,「完全(25点):喘息は完全な状態(complete control),「良好(24~20点):良好な状態(well control)」,「不良(20点未満):コントロールされていない状態(poor control)」の3段階に判別する(図1).

図1 喘息コントロールテスト(ACT)

ACTスコアは専門医による評価との間に高い相関が認められ,ACTスコアの「MCID(minimal clinically important difference)」は「3点」であり,治療介入などにより3点以上増加した場合には臨床的に有効と判断する.ACTスコアは%FEV1(%1秒量)やFeNOと有意に相関すし,閉塞性換気障害および気道炎症の検出において特異度は高いが感度が低いため,呼吸機能検査やFeNO検査を併用することが推奨されている3

ACTと他の評価項目との関連性

ACTは臨床診療だけでなく臨床研究でも広く使用されている.ACTに関する大規模なオンラインデータベースの検討から,74のうち69の論文の中でACTの改善が疾患の改善に関連していることが示されている.ACTの改善は肺機能や喘息関連QOL(quality of life:生活の質)だけでなく,補助薬の使用や睡眠の質などにも関連している4.ただし,全てのケースに適用できるものではない.ACTが良好な結果を示していても,肺機能に問題があるなどの症例に臨床現場ではしばしば遭遇する.

喘息診療実践ガイドライン(PGAM)では,喘息治療のフローチャートにコントロールの評価はACTで行うことが明記されている.そして,PGAM2023から,喘息患者の治療目標として「臨床的寛解」の解説が加えられ,臨床的寛解の基準として「ACT 23点以上(1年間)」が示されている(表1).臨床的寛解が達成できない場合は,治療を再検討することは当然であるが,臨床的寛解を達成できた場合でも,次の目標として呼吸機能を評価しFEV1(1秒量)が予測値の80%以上,PEFの日内変動が自己最良値の20%以内を目標とすることが示されている.臨床的寛解が得られても,呼吸機能を正常化することができない症例も存在するため,FEV1が予測値の80%未満の場合は,治療を再検討する余地があり,特に長期管理の状況は,喘息症状,増悪,経口ステロイド薬の使用,SABA(short-acting beta2 agonists:短時間作用型β2 刺激薬)の使用頻度,呼吸機能,2型炎症に関わるバイオマーカー(末梢血好酸球数<150 cells/μl,FeNO<25 ppbなど),QOLなどによって多面的に評価する必要がある3

表1 臨床的寛解の基準(喘息診療実践ガイドライン2023)

項目基準
1 ACT23点以上(1年間)
2 増悪*なし(1年間)
3 定期薬としての経口ステロイド薬なし(1年間)
*:  増悪とは喘息症状によって次のいずれかに該当した場合とする

①経口ステロイド薬あるいは全身性ステロイド薬を投与した場合

②救急受診した場合

③入院した場合

まとめ

喘息治療は,個人個人の特徴を如何に的確に捉え,メリハリをつけてより高いレベルに持っていく時代になった.その中で,より正確な評価が必要とされており,ACTはその中心にあるものの一つではあるが,それだけでは完璧ではなく,多面的な評価がより正確で無駄のない治療へ導き,強いてはそれが喘息をコントロールする時代から,「Remission」を目指せる時代になった.そこには,生物学的製剤やLAMA(long-acting muscarinic antagonists:長時間作用性抗コリン薬)の使用法も含め,より早く,見落とさず,また,治療過多にならないことが重要であると思われる.それが「Remission」を寛解と訳しても違和感のない時代に導くものと考える.加えるべき補う手段としては日常的に行われているスパイロメトリーだけではなく,日々の変化や日内変動を捉えることができるPEF,比較的新しくまた簡易に測定可能となったFeNO,また強制オシレメトリー法による呼吸抵抗の測定などの利用が必要であると思われる.

おわりに

まだまだ薬剤の中止が可能な完全な寛解への道は遠いと思われるが,「Total control」ではなく,「Remission」という言葉を自信を持って「寛解」と使用できるようになるために,また治療可能なTraitsを個別に評価する時代だからこそ,問診や聴診から始まり,スパイロメトリーやピークフローメーターによる変動性気流制限の確認,FeNOや末梢好酸球数による気道炎症の確認,強制オシロメトリー法による呼吸抵抗の異常などを多面的かつ総合的なアプローチが必要だと考える.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

平松哲夫;講演料(グラクソスミスクライン,ノバルティスファーマ,アストラゼネカ)

文献
 
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