1998 年 8 巻 2 号 p. 118-122
COPDを中心とする慢性肺疾患の急性増悪における心不全の意義と循環動態を明らかにし治療につき検討した.右心不全が増悪原因の4.7~8.3%を占め,肺高血圧例では正常圧例に比べ増悪を起こす頻度が高いことより,右心負荷が強い例ほど急性増悪に陥りやすいと考えられた.急性増悪(軽症)を起こしたCOPD 13例の検討では,増悪時は低酸素性肺血管収縮(HPV)により肺動脈圧が上昇し,圧負荷・容量負荷により右室収縮能が低下した.左室収縮能は障害されず,心拍数が増加し,心拍出量が増えることで酸素運搬が維持されたが,末梢組織の低酸素状態はより悪化した.治療は,酸素投与による低酸素血症の改善が最も重要であり,利尿剤,テオフィリン製剤などを適宜使用する必要があると考えられた.循環動態の経過観察には心エコー図法が有用であった.