日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
Print ISSN : 1881-7319
ISSN-L : 1881-7319
原著
安静時PaO2 60 Torr以上で在宅酸素療法(HOT)が導入された症例の臨床像の検討
鈴木 勉長岡 鉄太郎高橋 英気檀原 高福地 義之助
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 8 巻 3 号 p. 281-285

詳細
抄録

労作時・睡眠時のSaO2の低下,呼吸困難増悪などが準呼吸不全患者に対する酸素療法の適応として検討されている.当科において,室内気吸入下・安静時PaO2 60 Torr以上で在宅酸素療法(HOT)が導入された症例のHOT開始時の臨床像について検討した.<br>(対象と方法)1985年4月から1998年3月の13年間に,当科でHOTを実施した237例(男:女=165:72,年齢66.2±13.0歳)を対象とした.<br>HOT開始時の室内吸入下・安静時のPaO2 60 Torr以上の症例数,基礎疾患,HOT導入の理由についてretrospectiveに検討した.<br>(結果)PaO2 60 Torr以上でHOT導入された症例は59例(25%)であった.疾患別に該当症例をみると,間質性肺炎がHOT実施全53例中19例(36%),肺気腫が33例中18例(55%),肺結核後遺症が46例中6例(13%),肺癌が43例中6例(14%),DPBが10例中4例(40%),その他の疾患51例中6例(12%)で,PaO2 60 Torr以上でHOT導入がされていた.<br>HOT導入理由(重複あり):労作時低酸素血症が34例,睡眠時低酸素血症が16例,肺性心もしくは肺高血圧症(CP)が24例,呼吸困難が22例,その他4例であった.疾患別では〈間質性肺炎〉労作時低酸素血症が16例,睡眠時低酸素血症が3例,CPが7例であった.〈肺気腫〉労作時低酸素血症が10例,睡眠時低酸素血症が6例,CPが11例,労作時・睡眠時低酸素血症の11例のうち,6例でCPをすでに生じていた.〈肺結核後遺症〉労作時低酸素血症が3例,睡眠時低酸素血症が3例,CPが3例で,労作時・睡眠時低酸素血症の5例のうち,3例でCPをすでに生じていた.呼吸困難度からみると,間質性肺炎,肺気腫症,肺結核後遺症いずれでも,軽度の呼吸困難の段階(H-J Ⅱ or Ⅲ度)で約半数に,すでに肺性心・肺高血圧症を合併していた.<br>(結論)患者のQOLの改善のほかに,肺気腫・肺結核後遺症でHOTの臨床的意義として明らかになっている,肺性心の予防・進行の防止が予後の改善に寄与することから考えると,これらの疾患では,安静時PaO2 60 Torr以上の症例でも労作時・睡眠時低酸素血症,右心負荷のチェックをしたうえで早期のHOT導入を検討すると良いと考えられた.

著者関連情報
© 1999 一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
前の記事
feedback
Top