日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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8 巻, 3 号
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特別講演
  • 木田 厚瑞
    原稿種別: 特別講演
    1999 年 8 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    高齢者の気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患(COPD)は病態の増悪とともに患者のQOLが低下し,また多額の医療費を必要とする.介護保険の導入下ではケアが重視されるあまり,医療が軽視されていくことが強く懸念されている.高齢者のケアを充実させるためには,まず医療レベルの向上が不可欠である.本稿では高齢者の気管支喘息,COPDについて病態の特徴,outcome studyの問題点,さらに治療,管理という立場から地域における医療連携の必要性,について現在の問題点を論じた.

シンポジウム2
原著
  • 藤田 悦生, 長坂 行雄, 波津 龍平, 南部 康孝, 福岡 正博, 濱田 傑, 芝野 勝一
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 231-234
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    閉塞型睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome, SAS)が疑われた症例において簡易型睡眠無呼吸診断装置(eden trace)による診断を行い,nasal CPAP,下顎前進口腔スプリント(mandibular advancement splint, MAS)を導入して,その効果を比較した.対象は,1997年8月から,1998年8月まで,周囲からの無呼吸や,いびきなどを指摘され当科を受診しSASが疑われた21名(男性17名,女性4名)で,平均年齢±SDは51±15.8歳であった.平均BMI 26±4.3kg/m2(平均±SD)であった.治療前のapnea hypopnea index (AHI),(平均±SD)は40±21.4/hourでCPAP使用後に10±8.4/hour, MAS使用後で16±19.1/hourとともに有意に減少した(P<0.0005, P<0.005). MASはnasal CPAPと比較し効果は同等かやや劣るが継続性,コンプライアンスの点でより良い効果をあげた症例を認めた.

  • ―ADLレベルとの比較から―
    大瀬 寛高, 伊藤 直榮, 斎藤 武文, 長谷川 鎮雄
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 235-238
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    脳血管障害症例に施行した呼吸機能検査結果とADLレベルとの関連について検討した.%肺活量はADLレベルと正の相関を示した.ADLレベルと比較して%肺活量の低下が著しい場合には拘束性肺疾患の存在を考える必要があり,一方,1秒率の低下は脳血管障害症例においても閉塞性肺疾患の存在診断に有用と考えられた.脳梗塞,脳出血の疾患群での比較から呼吸機能は疾患の種類よりADLレベルで規定される部分が大きいと考えられた.

  • ―12症例を対象として―
    岩崎 恵子, 石本 範子, 中島 ひとみ, 江川 初美, 伊藤 博子, 佐伯 輝子, 廣瀬 隆士, 岸川 禮子
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 239-242
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    NIPPV(BiPAP)を装着した慢性呼吸不全患者12名の看護について検討した.<br>装着後1時間以内に低酸素血症をきたす患者が多く,原因に対する早期の対応とモニタリングの必要性を認めた.また,装着中の息苦しさやマスクによるトラブル(発赤,痛み,目の乾き)などの身体的苦痛や,いつまで装着するのかなどの精神的苦痛など看護上の問題点があり,それらの対策が必要である.

  • ―とくに気胸について―
    細川 芳文, 安部 幹雄, 堀江 孝至
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 243-246
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    1994~1997年の3年間に,急性増悪をきたして当院に入院した慢性閉塞性肺疾患患者(COPD)108例の入院の契機となった病態を調べた.気道感染と心不全によるものが圧倒的に多かったが,気胸によって入院となったものも11例にみられた.このうち肺気腫の3例は気胸がきっかけとなって死にいたっており,COPD,とくに肺気腫患者が気胸を併発した際には積極的な対応が望ましいと考えられた.

  • ―QOLの観点から―
    辻 和美, 北 麻実子, 石本 陽子, 坂本 佳代子, 田平 一行, 村井 博, 倉岡 敏彦
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 247-251
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    当院ではHOT患者のQOL向上を目的に,平成2年以来,年1回の旅行を実施している.今回はHOT患者を対象にQOLの現状調査を行い,旅行の効果について,身体・精神・社会・心理の4つの側面から検討し以下の結果を得た.①身体面では差はなかったが,精神・心理・社会面およびQOL全体において旅行参加群が有意に高かった.②HOT患者にとって旅行参加は当面のひとつの目標となり,情動活動に改善をもたらすことが推測された.

  • 石川 朗
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 252-257
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    HOT施行者154名に対し,ADLと住環境に関するアンケート調査を実施し,医学的所見とあわせて検討した.その結果,1)呼吸困難感は,入浴,階段昇降において重度で,入浴動作では髪や身体を洗う場合が強く,2)住環境に関しては,階段などの構造によってADLが制限されている場合があった.今後は,HOT施行者のADL能力を一層向上させるために,適切な住宅改造などによる住環境整備も積極的に導入すべきと思われた.

  • 後藤 葉子, 上月 正博, 渡辺 美穂子, 黒澤 一, 飛田 渉, 三井 一浩, 黒川 良望, 佐藤 徳太郎
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 258-264
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    慢性肺気腫患者の肺機能,栄養状態,運動機能,在宅ADL能力の関連性と,これらの身体的因子がQOLにいかに関わるかをsickness impact profile(SIP)を用い検討した.各因子間で有意な相関がみられ,またSIPスコアは各身体的因子とよく相関したことから,慢性肺気腫患者のQOLには身体的因子が複雑に関与しており,QOLを向上させるには栄養を含めた総合的なアプローチの必要性が示唆された.

  • ―Finkの危機モデルを用いての検討―
    合澤 亜矢子, 小野田 一枝, 岡村 樹, 太田 智裕
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    在宅酸素療法(HOT)継続が困難な特発性肺線維症患者に対し,Finkの危機モデルにそってアセスメントを行った.そして,HOTを継続させるための訪問看護婦の役割を検討した.その結果,防衛的退行の段階から承認の段階の間に十分な関わりをもつことで,適応の段階へ導ける可能性が高くなるということがわかった.それは,酸素吸入流量にかかわらず,急性増悪がなければHOTの継続が可能となりうることにつながり,効果的なアプローチの一方法と考えられる.また,患者同様,介護者(キーパーソン)へも看護介入していくことが,訪問看護婦の役割として大切であると考えられた.

  • 谷 邦彦, 仲田 裕行, 田口 真規子, 森山 慶一, 皆木 良治
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    在宅酸素療法(HOT)患者はHOT歴が長くなるほど,生活の質(QOL)の低下がみられ,介護者も高齢化し,介護疲れをきたし,家庭での介護だけでは,支えていくことが困難になりつつある.その解決のひとつの方法として老人保健施設(老健)の入所があるが,HOT患者に十分な門戸が開放されているとはいえない.老健入所の際の問題点と快適な老健入所ができるように,老健とHOT患者および家族・介護者にそれぞれアンケート調査を行った.老健施設の利用を実現した過程を通じて,酸素業者の立場からみた高齢化社会におけるHOT患者の問題点を考察した.

  • 大平 徹郎, 村松 芳幸, 真島 一郎, 佐藤 誠, 鈴木 栄一, 荒川 正昭, 下条 文武
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    在宅人工呼吸療法(主として非侵襲的陽圧換気療法)を行う慢性呼吸不全患者のQOLと,担当医による評価を検討した.アンケート調査の結果,治療によるQOLの改善は回答患者の約90%に認められたが,担当医によるQOL評価と患者の自己評価の間に有意な相関はなかった.Short Form-36で「身体機能」の尺度得点が低い患者のQOLを,医師は過大もしくは過小評価しており,両者のQOL評価が解離する一因と推測された.

  • 鈴木 勉, 長岡 鉄太郎, 高橋 英気, 檀原 高, 福地 義之助
    原稿種別: 原著
    1999 年 8 巻 3 号 p. 281-285
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー

    労作時・睡眠時のSaO2の低下,呼吸困難増悪などが準呼吸不全患者に対する酸素療法の適応として検討されている.当科において,室内気吸入下・安静時PaO2 60 Torr以上で在宅酸素療法(HOT)が導入された症例のHOT開始時の臨床像について検討した.<br>(対象と方法)1985年4月から1998年3月の13年間に,当科でHOTを実施した237例(男:女=165:72,年齢66.2±13.0歳)を対象とした.<br>HOT開始時の室内吸入下・安静時のPaO2 60 Torr以上の症例数,基礎疾患,HOT導入の理由についてretrospectiveに検討した.<br>(結果)PaO2 60 Torr以上でHOT導入された症例は59例(25%)であった.疾患別に該当症例をみると,間質性肺炎がHOT実施全53例中19例(36%),肺気腫が33例中18例(55%),肺結核後遺症が46例中6例(13%),肺癌が43例中6例(14%),DPBが10例中4例(40%),その他の疾患51例中6例(12%)で,PaO2 60 Torr以上でHOT導入がされていた.<br>HOT導入理由(重複あり):労作時低酸素血症が34例,睡眠時低酸素血症が16例,肺性心もしくは肺高血圧症(CP)が24例,呼吸困難が22例,その他4例であった.疾患別では〈間質性肺炎〉労作時低酸素血症が16例,睡眠時低酸素血症が3例,CPが7例であった.〈肺気腫〉労作時低酸素血症が10例,睡眠時低酸素血症が6例,CPが11例,労作時・睡眠時低酸素血症の11例のうち,6例でCPをすでに生じていた.〈肺結核後遺症〉労作時低酸素血症が3例,睡眠時低酸素血症が3例,CPが3例で,労作時・睡眠時低酸素血症の5例のうち,3例でCPをすでに生じていた.呼吸困難度からみると,間質性肺炎,肺気腫症,肺結核後遺症いずれでも,軽度の呼吸困難の段階(H-J Ⅱ or Ⅲ度)で約半数に,すでに肺性心・肺高血圧症を合併していた.<br>(結論)患者のQOLの改善のほかに,肺気腫・肺結核後遺症でHOTの臨床的意義として明らかになっている,肺性心の予防・進行の防止が予後の改善に寄与することから考えると,これらの疾患では,安静時PaO2 60 Torr以上の症例でも労作時・睡眠時低酸素血症,右心負荷のチェックをしたうえで早期のHOT導入を検討すると良いと考えられた.

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