抄録
オーストラリアでは、主力産業である一次産業特に農業分野の実用化研究開発を促進するため、研究開発公社制度が設けられている。研究開発公社は農産物ごとに設立される法廷の研究開発促進期間で、オーストラリアの農業技術開発政策の中核として定着している。同制度は、研究開発の需要者(研究開発成果の利用者)の視点に立った研究開発に主眼をおいた制度であるほか、(1)研究費用の強制的課金方式、(2)国立研究機関の研究受託機能及び公的助成金の公的機関への還流、(3)農作物別の研究開発のセンター的機能等が我が国の制度とは異なった特徴を有する。本研究では、同制度の現状と我が国と比較しつつ明らかにするとともに、これらの特徴ごとに同制度を支えるオーストラリアの経済的・社会的背景の分析も行った。