抄録
本稿では,わが国の主要液晶ディスプレイパネルメーカー20社に焦点を当て,研究開発における競合他社,製造装置・部品材料メーカー,米国メーカーからの知識スピルオーバー効果を分析した。本稿で得られた結論は,以下の通りとなる。多くの先行研究とは異なり,競合メーカーの特許出願が増加するほど,パネルメーカーの研究開発生産性が低下するという結果を得た。過度な競争によるマイナスの効果が知識スピルオーバー効果を上回っている可能性を示唆している。他方で,液晶ディスプレイを製造していない国内の製造装置・部品材料メーカー,米国メーカーの液晶関連特許の増加は,パネルメーカーの生産性を上昇させていることが明らかとなった。これは,研究開発段階での関連産業や米国メーカーからの知識スピルオーバーが重要であることを示しているといえよう。