抄録
タイは,海外からの直接投資による産業化を進めるという発展戦略をとっている。1950年代よりBoard of Investmentが設置され,国内外の企業の投資を誘発する税制を導入してきた。多国籍企業の研究開発のグローバル化が進む中,企業の研究開発から発生する技術移転やスピルオーバーは,タイの技術力の向上にとって重要なプロセスになっている。また,こうした技術移転やスピルオーバーによる技術のノウハウを如何に自国の技術力向上に結び付けるかは,ホスト国のオブゾープション(吸収)能力によると考えられている。本論文は,タイの直接投資牽引型産業化戦略を検証し,その効果についてはまだ明確に定まってはないものの,ひとつの有意義な事例研究として他の発展途上国の参考になることを期待している。