研究 技術 計画
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規制緩和によるエネルギー産業の研究開発構造の変化 : マルコフ過程を用いた動学的解析による可視化
森本 智史児玉 文雄鈴木 潤
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2009 年 23 巻 4 号 p. 383-392

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抄録

マーケットルールの大幅な変更となる規制緩和は,企業の研究開発活動に影響を及ぼすと推察されるが,その関係について述べた研究は少ない。本稿では,エネルギー分野を取り上げ,規制緩和が電力・ガス企業の研究開発活動に与えた影響を分析する。企業の研究開発活動の構造変化は研究開発ルーティーンの変化として定式化され,研究開発活動がマルコフ過程に基づくとすれば,ルーティーンは推移確率行列で定量化され,その変化は極限確率分布の変化で可視化することが可能である。そこで研究開発活動の代替変数と見られる研究開発費と出願特許数について,規制緩和前後および電力会社とガス会社に分類した上で,極限確率分布を用いてそのルーティーン変化の比較分析を行った。その結果,規制緩和後は電力,ガス共に研究開発費に減少傾向が見られたが,特許についてはガスの方が減退傾向が顕著であることが示された。また特許のIPC分析により,電力会社は規制緩和後も技術の多様化を図る一方,ガス会社は集約傾向にあることが分かった。これらの観測結果から,電力とガスの研究開発ルーティーンに規制緩和の影響が異なって表れていることを明らかにした。

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2009 研究イノベーション学会
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