研究 技術 計画
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社会的課題の解決に向けたイノベーションの創出 : ステークホルダー連携と社会実験の分析(<特集>研究開発における学際性)
鎗目 雅トレンチャー グレゴリー
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2014 年 29 巻 2_3 号 p. 118-131

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抄録

社会的な課題の解決には,科学技術,経済,政治などの様々な要素が複雑に絡み合った問題の構造を学際的な観点から正確し,イノベーションを創出する必要がある。これまでの産学官連携は,比較的限られたアクター間でネットワークを形成し,主に特定の産業における技術的な開発を目的としていた。それに対して,サステイナビリティなどの社会的課題に向けたイノベーションの創出においては,必要となる知識が非常に多様で,関連するステークホルダーがより広範に社会に存在する。したがって,様々なステークホルダーとの連携を通じて,関連する多様な知識を統合的な活用し,社会実験を実施していくことが効果的である。先進的な事例として,スイス連邦工科大学チューリッヒ校による2000ワット社会バーゼル・パイロット・リージョンのケースを取り上げ,大学を中心とするステークホルダーとのプラットフォーム形成と社会実験を通じたイノベーションの創出の可能性を分析した。科学的知見に基づいた将来のビジョンの提案・共有,ステークホルダーとのプラットフォームの形成,明確で具体的な目標の設定,大学の研究者と産業の実務家との協働,幅広いステークホルダーの積極的な参加,社会実験を通じた新しい技術とシステムの開発,意思決定者へのフィードバック,制度設計への効果的な反映,社会における正統性の獲得と普及などが重要な要素として考えられる。

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2014 研究イノベーション学会
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