研究 技術 計画
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Print ISSN : 0914-7020
特集 科学技術・イノベーション政策におけるEBPM
科学技術イノベーション政策における《適切な問い》の設定に向けて
吉澤 剛田原 敬一郎安藤 二香
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2024 年 38 巻 4 号 p. 445-459

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抄録

政策と科学とが「共進化」する取り組みとして,科学技術イノベーション政策(STI政策)に限らず海外事例において目立つのは,政府の政策課題や組織学習に応えうるARI(研究関心領域,Areas of Research Interest)やラーニングアジェンダの作成である。本稿では議題設定や政策形成に資するためにどのような政策や研究の問いを設定すればよいかについて英米の事例を紹介し,政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター(SciREXセンター)と文部科学省における試行的実践を取り上げて,日本における新たなEBPMの可能性について展望する。SciREXセンターの「STI政策における研究と政策形成の共進化の体制・方法の在り方の検討」(方法論プロジェクト)では,「共進化実現プログラム」第3フェーズ(2023~2025年度)におけるプログラム設計の参考とするため,2022年度にARIを試行的に実践した。また筆者らは,この経験と知見を基に,研究現場を所管する文部科学省として中長期的に考えるべき政策上の問いを検討するためのワークショップを,文部科学省と協力して企画・開催した。両実践は,現行の組織的・制度的な枠内で取り扱うのに《ちょうど良い》政策課題や研究課題を見出すことを第一義的な目的としつつも,それらの枠組みを超えたより本質的な課題にアプローチし,既存のEBPMの限界を越えるための処方箋ともなりうる可能性が示唆された。

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2023 研究イノベーション学会
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