2021 年 77 巻 2 号 p. I_877-I_882
我が国における河川洪水流量はこれまで浮子法により計測されてきたが,近年では画像解析による表面流速分布を利用する手法が注目されて始めている.STIVがその代表的な手法であるが,表面流速分布から流量を推定する際には,それを鉛直平均流速に換算する表面流速係数αを用いなければならない.αの値に関しては標準値として0.85が使われることが多いが,これは一様な河道流れで鉛直流速分布を仮定して得られた値である.しかしながら,実河川においては浮子観測の第1,第2断面でも横断河床形状が同じであることはなく,途中に砂州などが発達していたら河床勾配も局所的に変化せざるを得ない.従来の開水路研究はいわゆる等流状態を想定したものが大半であったが,不等流状態における流速分布の縦断変化に関しては十分な知見がないのが現状である.そこで,本研究では可視化実験と数値解析により,河床の途中に緩やかなマウンドがある流れにおいて表面流速係数の縦断変化に関する検討を行った.その結果,表面流速係数はマウンド形状に対して非対称に変化し,マウンドの下流側区間では負の加速度の影響により大きく減少することを明らかにした.また,数値解析においても同様の特性が確認された.