2024 年 39 巻 1 号 p. 17-25
「研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン」において,戦略的設備整備・運用計画(新しい設備マスタープラン)が提言された。この計画策定にあたっては,大学の経営戦略や財源別の分析,中長期の視点を入れることなどが求められている。
従来の設備マスタープランは主に国への概算要求用の資料としての意味合いが強く,計画としての実効性に課題があった。また,研究設備整備のための予算の枠組みは研究現場のボトムアップが多く大学主導での予算管理が十分機能していないこと,大学間連携や共同利用・共同研究拠点などの研究設備の更新の枠組みがない,などの課題があった。一方,以前文部科学省の部会において,産学官で連携しつつ中長期で研究基盤の整備を行うことの検討の必要性も指摘されており,本稿において,研究基盤戦略と産学連携の関係性についても検討を行った。
戦略的な設備計画を策定するためには,ボトムアップ型の予算の仕組みから,国や大学主導での設備整備という考え方に変えていく必要がある。そのためには各大学での研究戦略に基づく設備整備の方針やエビデンスの構築が前提となり,国と大学で共同して新たな設備整備の戦略を構築することが求められている。