2024 年 39 巻 3 号 p. 295-307
ソーシャル・データサイエンスは,社会科学とデータサイエンスの融合により生まれた新興の学際的研究領域である。本論文は,ソーシャル・データサイエンスの学術的・社会的意義と発展可能性を,科学技術政策の視点から多角的に考察する。まず,計量書誌学と未来洞察を,ソーシャル・データサイエンスの源流として位置づけ,科学技術と社会の関係性の理解における役割を明らかにする。次に,責任ある研究・イノベーション(RRI)の概念を導入し,ソーシャル・データサイエンスがRRIの実現に果たすべき役割を論じる。さらに,ソーシャル・データサイエンスの発展可能性と社会課題解決への貢献の道筋を示しつつ,直面する倫理的・法的・技術的課題に言及する。これらの議論を通じ,ソーシャル・データサイエンスが学術と社会の協働を促進し,エビデンスに基づく社会課題解決に寄与する重要な学問領域であることを明らかにする。ソーシャル・データサイエンスの更なる発展が,持続可能な社会の実現に資することを展望する。