2025 年 40 巻 2 号 p. 166-190
わが国は医療等情報の利活用を推進するために医療健康分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律が施行されている。しかし,現行の認定事業者から匿名加工医療情報を研究者に提供するサービス形態では,個人情報の保護の観点からの加工が研究を遂行することを困難にするケースに対応できない可能性があること,他分野の情報とのリンケージに関する実績が少ないため,発展的な研究に寄与し難いのではないかという課題認識があった。そこで,わが国が模索している,仮名加工医療情報及び計算機資源を利用者に提供する制度と実装に,比較的早い時期から取り組んでいるスコットランドの状況を,文献調査とインタビュー調査で明らかにした。スコットランドでは,英国国家統計局(Office for National Statistics: ONS)が開発し,行政記録データの利活用の整備において展開された5つの安全模範(Five Safes Model)を発展させ,Trusted Research Environment(TRE)下で,行政記録データや医療健康データ等とのリンケージ,研究者へのTREリモートアクセスの提供,研究者への研究倫理・情報セキュリティに関する研修,TRE利用の資格認証などの運用を確立していた。一般データ保護規則(GDPR)下での公益性が認められる研究のサポートのありかたは,わが国における医療等情報の利活用を推進する施策の検討において参考になると思われる。