2025 年 40 巻 2 号 p. 208-227
ディープテックスタートアップの中心である大学発スタートアップの成長には,創業時からそのビジネスの核となる優れた研究成果を有する研究者の積極的な関与が欠かせない。本研究では,日本国内の大学発スタートアップのデータとして経済産業省が管理する「大学発ベンチャーデータベース」を利用し,これらのスタートアップに関与する研究者の背景情報(論文および科研費のデータ)と資金調達額の関係性を分析した。ここから,機械学習手法を用いて日本の大学発スタートアップの成長に寄与する研究者の特徴を評価するモデルの開発を目指した。本研究ではスタートアップ各社の資金調達額を目的変数,各社に関与する研究者の背景情報を説明変数として設定し,データを2つの群に分類する複数のケーススタディを通じて,特徴量重要度を算出可能な機械学習アルゴリズムを用いた解釈性の高い2値分類モデルを構築した。これらのモデルは,研究者の背景情報を基に大学発スタートアップの成長を予測する上で一定の精度を達成した。また,モデルを分析することで,一定の基準値を超えた論文評価や科研費の獲得している研究者が大学発スタートアップの成長に貢献していることを確認した。