研究 技術 計画
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特集 科学技術・イノベーション政策科学の学際的アプローチ:より良いアジェンダ・セッティングのために
ユニコーン企業の創出をイノベーション政策の目標とすべきか?
吉田 公亮吉田 晃宗牧 兼充
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2025 年 40 巻 3-4 号 p. 305-324

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抄録

ユニコーン企業創出はスタートアップの成功事例として,イノベーション政策の政策目標にされるようになった。一方で,日米中の3カ国のユニコーン企業の評価額に対する調達額の割合を比較すると,平均して米国22%,中国26%であるのに対し,日本は8%である。そこで,本稿では,日本の高評価額のスタートアップの詳細を分析した。具体的には,各シリーズにおいて,投資家に占める各種投資家属性の内訳が,評価額の見積りにどのような影響を与えているかを評価した。事業会社と金融機関が多く含まれるほど,調達額に対する評価額の膨張を抑制する資金調達となっている。一方,投資経験の乏しい金融機関が多くなるほど,調達額に対して評価額が膨らむ。一方で,経営資源の豊富な海外ベンチャー・キャピタル(VC)は,評価額の膨張を抑制する出資をしている。これらの結果に基づくと,スタートアップ評価額は過大に評価されている恐れがある。スタートアップの企業価値の過大評価は,VCとスタートアップとの間の資本配分だけではなく,より広い範囲に影響を与えうる。ユニコーン企業のような,未上場で大きく成長するスタートアップの存在が重要であることは言うまでもない。しかし,評価額のみを基準として政策目標とすることは,危険である。

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2025 研究イノベーション学会
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