2014 年 39 巻 6 号 p. 559-566
目的:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する経皮的肺動脈バルーン拡張術(BPA)の治療効果判定に有用な心エコー図検査指標を明らかにすること.
対象と方法:2010年1月から2012年2月までに当院でBPAを行ったCTEPH患者28名を対象に,右心カテーテル指標の平均肺動脈圧(mPAP),肺血管抵抗(PVR)と心エコー図検査各種指標とを後ろ向きに比較検討した.
結果:BPAによりmPAP,PVRはそれぞれ有意に改善した. (mPAP治療前43±11 mmHg,治療後31±7 mmHg(p<0.01),PVR治療前908±367 dyne·sec/cm5,治療後480±174 dyne·sec/cm5(p<0.01))それに伴い,心エコー図検査指標である右室自由壁三尖弁輪収縮期運動速度,RVIMP,右室/左室面積比,右房/左房面積比,Eccentricity indexは有意に改善したが,右室収縮能指標として広く用いられている三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)は改善を認めなかった.(TAPSE治療前18.5±4.7 cm,治療後18.3±3.5 cm(N.S.))治療後,右心カテーテル指標の変化を最も鋭敏に反映していた因子はEccentricity indexであった.
結論:本検討において,数多くある心エコー図検査評価指標の中でBPA治療効果判定にはEccentricity indexが有用であった.