目的:大動脈弁口面積(AVA)を計測する際,左室流出路径は重要な因子であるが,その計測部位や時相は施設により異なっている.今回我々は左室流出路径の計測方法の違いによるAVAの差と大動脈弁狭窄症(AS)の重症度評価への影響を検討した.
方法:対象は以下に述べるBの方法でAVAが2.0 cm
2以下の200例とした(男109例,年齢79±8歳).左室流出路径の計測部位をA:拡張末期で大動脈弁輪部より5 mm程度離れた位置,B:収縮早期で大動脈弁輪部より5 mm程度離れた位置,C:収縮早期で大動脈弁輪部直下,の3通りで計測し,連続の式からAVAを算出した.計測可能であった144例についてはD: Planimetry法でも弁口面積を計測した.A~Dの方法で得られた弁口面積を多群間比較した.また,B, C, D間でASの重症度評価への影響を調べた.
結果:AVAの平均値±SDはそれぞれ,A: 1.25±0.42 cm
2, B: 1.26±0.41 cm
2, C: 1.40±0.48 cm
2, D(144例):1.54±0.50 cm
2であった.4群間の比較ではAとB, CとDに有意差は認められなかった.BはDに比べて平均値で18%小さく,CはDより10%小さかったが有意差は認められなかった.重症度評価への影響では,BはDに比べて有意に重症例が増加し,軽症例が減少した.
結論:連続の式によるAVAは左室流出路径の計測部位によって差があり,重症度評価にも影響する.その原因は左室流出路の形状にあり,心室中隔基部が左室流出路に張り出している症例で差が大きくなる.連続の式によるAVAは過小評価される傾向にあるため,それを是正するためには弁輪部直下で計測した方が良いと考えられた.
抄録全体を表示